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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

女神な彼女とヤンデレな王様

作者: 時乃 遙

思いついたままにかいたもので矛盾等があります。また、題名的には軽いのりの

ようなものの感じが伺えますが、中身は一切明るくありませんのでらぶらぶ、い

ちゃいちゃ、相思相愛そういったものがお好みであれば読むのは非推奨です。


暗い話なのでそういったものが苦手な人にもお勧めできません。気分が沈んでし

まうといった効果があるかもしれないので事前にお知らせしておきます。

また、赤子を傷つけるという行為が出てきますのでそういったものに不快感を覚

える方も読まないようご注意ください。後ほどの責任を取りかねますので申し訳ないです。


大丈夫大丈夫、ばっちこーい!ってかたは目に留めていただいて有難うございます。

 どうしてこうなってしまったのだろう……

 目の前にいる自分が代々見守ってきた国の王を見て女神と呼ばれる彼女は小さ

く息を呑んだ。


 「今、なんと?」

 「貴方に可愛い跡取りもできたわ……私はそろそろお暇しようと思うの」


 ベランダに置いたままの自分の持ち物である竪琴はしばらく触れていない。

 彼女の王である彼がそれに触れる事を厭ったからであり、それに触れることで

女神である彼女は奇跡と呼ばれる魔法をいくつも使えたからで、それを王が厭っ

たからである。


 「聞き間違いか?そなたがこの国を去る、そんな風に聞こえたのだが」

 「いいえ、聞き間違いじゃないわ……アレクシス……この国はもう私無しでも

 ちゃんとやっていけるわ」

 「……そうか」


 彼女の言葉にアレクシス、と呼ばれたこの国の王は軽く頷くと目の前の子供用の

寝台で安らかに寝息を立てている息子に視線を落とす。その様子を見て女神は安堵

息を吐く。自分が思っていた事はどうやら杞憂だったようだ……これで心置きなく

ここを去ることが出来る、そう思った矢先、アレクシスがその寝ている息子の小さ

な手に針を刺しているのを見て身を震わせた。


 「何をやってるの!!やめて!!そんな事をしたら……っ」

 「君は僕の元を去らない、そうだろう?……そしたら僕はこの子をどうしてしまう

 か判らない……そう、思わないかい?」

 「何……を、いってるの……?」


 自分の息を呑む声が聞こえて声に出た言葉は震えているのが判る。穏やかに、まる

で傍らで眠る息子に夢物語でも聞かせているような声色で……けれどもアレクシスが

しているのは子供の小さな手の甲に何度も針を刺す事。小さな白い手の甲には血の赤

が浮いていて女神の顔色はますます青くなった。それをみたアレクシスは本当に嬉し

そうに笑みを浮かべる。それはまだ彼が少年時代に見せたそれによく似ていて、王に

なった時には見なかったものでもあった。


 「君が目を離したら僕は何をしてしまうか判らないよ?」

 「……そんな、どうして……」

 「君に、ずっと傍にいて欲しいからだ……傍にいて、僕の命が終わるまでずっとず

っと傍にいて欲しい……いや、傍にいるよね?」

 「そんなの……変だわ」


 もう終わったのだ、この役目を終えたら女神である自分はやっと不老不死から解放

され、ちゃんと人として生まれ変われることが約束されている。彼に、アレクシスに

その話をしたことがあっただろうか?混乱した彼女の頭の中ではその答えを見つけら

れず目の前の光景から逃げてしまいたい気持ちが勝ってしまったのか一歩下がった。


 「君を愛して……」

 「やめてっ!!いわないで!!」


 息子の手の甲を針で刺すのをやめたアレクシスは小さく笑みを浮かべながら女神に

言葉を紡ごうとする。最後まで言わせまいとその言葉を遮るように否定の声を上げる

と頭を振る。幸い小さな赤ん坊は針の痛みを感じないほどに熟睡しているのか起きる

ことなく二人の会話を邪魔しない。


 「……おかしいわ……アレクシス……私は人じゃない……そんなのおかしいわ」 

 「おかしくなんかないよ……ずっと一緒にいるよね?僕の傍からいなくなるとか言

 わないよね?」

 「私の存在が貴方をおかしくするの?……私がいなくなれば、ちゃんと貴方が王様

 でちゃんと治世をするのでしょう?それなら私は……」

 「貴方がいなくなったら……」


 混乱した頭でそれでもちゃんと言葉を選ぼうと詰まりながら声を発する女神の言葉

を今度は王であるアレクシスが遮った。得体の知れない恐怖のような、恐れのような

感情を抱く彼女は立て掛けてあった竪琴を手にする。


 「貴方がいなくなったらこの国は滅ぶ……滅んでしまうよ?この赤子もきっと死ぬ

 ……ああ、君のせいで死んでしまう、かな?」


 まるで悪戯を見つかった子供のような無邪気な笑みに女神はそれこそ顔色を失った。

 どこを間違ってしまったのか、今までずっと同じようにこの国を見守り、時には力

を使い、知恵を使い発展させてきた。歴代の王に感謝されこそすれこんな執着を見せ

られた事のなかった女神はアレクシスから発せられる狂気にも似た感情についていけ

ず震えた手でベランダにあった竪琴を無意識に抱きしめる。


 「やめて……どうしてそんなこというの……私は、貴方の気持ちには応え……っ」

 「女神っ!!」


 手を伸ばそうとしたアレクシスに思わず女神の身体が震え上がった。それは運命の

悪戯だったのか、腕の中に抱いたままの竪琴の弦に指先が触れ澄み渡った一音が辺り

に響いた刹那。一瞬にして女神の身体はベランダを飛び上がり、向けられたアレクシ

スの手が届かない遙か上空へと舞い上がる。


 「……っう、そ……」

 

 眼下に広がるのは小さくなった城と、蒼い空……近くにある海が日の光を反射させ

て煌いているのが見える。先ほどまであった状況とはあまりにも違い、女神は動揺を

隠せずに思わず眼下の城を見た。

 小さくなってしまっているそれはもうどこに窓があるのかも見えず、自分がここに

飛び上がる刹那に見たアレクシスの目に浮かんだ狂気と憎悪と何時も凛々しかった眉

が下がっているのが一瞬見えた。


 「……」


 戻らないといけないだろうか……いや、きっと戻らないと彼が取り返しのつかない

事をするであろう事も想像できた。けれども女神である彼女はもう最後の竪琴の一音

を鳴らしてしまって遙か上空まで来てしまった。戻ることも出来る……今ならばまだ

……けれどのもう一度彼の目の前に立つ勇気がどうしても持てない。小さく聞こえる

赤ん坊のような声は幻聴かそれとも現実か……それすらも彼女には判断できなかった。


 「なんで、どうして……」


 どこで間違ってしまったのか、必死になって考えても答えは出ない。いつか前世で

一緒の世界から来たであろう彼女を女神の力で元の世界に返したときだろうか?それ

とももっと遡らないと駄目なのだろうか……女神が必死に考えても答えに辿り着けそ

うになくただただ声だけが震えた。


 戻るべきか、戻らざるべきか……自分の中で葛藤している間にももしかして彼は先

ほどまで安らかに眠っていた赤子の首を絞めているかもしれない、そう思うと早く戻

らなければ……そう思うのに身体が言うことを聞かない。


 「私には……もう無理だよぉ……っ」


 今までの記憶が走馬灯の様に巡る。女神としてこの世界に呼ばれ、不老不死を得て

ずっとこの国が発展し、安定するのを支えてきた。そうすればいつか自分も元の世界

に戻れて、今度は人としてちゃんと命を全うすることが出来るといわれてきたからだ。

 

 仲良くなった人も全部見送った。歴代の国王もちゃんと傍らで看取ったし、新しい

国王になった人の恋愛相談や、政治にも自分なりに口を出した。この代で終わりだか

ら、と天の声が聞こえたのはずいぶん前で、それを支えにして今日まで頑張ってきた

のだ。それを今代の王がどうして覆すようなことを言葉にしようとし、また引きとめ

ようというのか……


 「もう、許してよう……私頑張ったんだよう……」


 次第に女神の声は嗚咽となって蒼い空に吸い込まれていく。可愛いあの赤子を彼が

本当に殺めるか等考えが及ばない。それほど女神であることにずいぶん疲れてしまっ

た彼女はもう一度城の方を見つめた。『逃げるなんて赦さない』そう言われてい

るような錯覚さえ覚えた今代の王アレクシス・ファーレン・ラサーム王……もう彼の

元に戻る勇気さえ今の自分には持てない。魔法のあるこの世界にいれば逃げたとして

も彼に捕まる事は容易に想像できる。それほど今代の王は魔力にも知力にも政治等の

知識についても歴代で一番だったと女神は思い返す。それと同時に心底底冷えした己

の身体。


――……怖い……


 女神の彼女の心を占めるのはこの感情のみだった。だから空から優しい光が降って来

た時にはもうそれに安堵を覚えて身を任せるしか選択肢はなかった。






 ラサーム暦562年華の月、随分と栄えたこの国は歴代の中でどれをとっても一番であ

った筈の国王の治世は始まりを告げた一年後唐突に終わりを告げる事になる。

 色々な噂が各国を飛び交ったが真相を知るものは誰もいない、国の半分を占めていた

であろう豊かな海も、澄んだ空気も、生命力あふれた大地も一瞬にして生き物も雑草一

本さえも生えない不毛の大地に変わったのだから……――




 

暗いお話ですみませんでした。色々と思うところはあるのですが短編で終わりました。

掘り下げれば色々キャラの魅力(?)も伝わるかもしれませんがとりあえず久しぶりの小説ということでリハビリもかねて仕上げました。

誤字、脱字等ございましたらご指摘いただけると幸いです。



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