セト
天才と変人は紙一重だと、シエは今日思い知った。
「あの、近いです。それと見上げるの疲れて来ました」
「ハハハハ、お前ちまいな。」
「ちまくありません、これでも150はありますから!見下したような目で見下ろさないでください」
「ハハハハ、笑わせる。見下したようなではなく、俺は常日頃人を見下しているぞ。」
「…はい…」
彼は、変人だ。うん、そうだ。
「…で、お前は俺に何のようだ?」
「あ、そうでした。僕は、シエ、シエ・アルバニエです。」
「シエか、でお前は男か?」
そこですか、シエはそう言う。
確かにシエは、黒の短パンにぶかぶかの服を着て、黒のこれまたぶかぶかの上着。手は大きすぎて上着の中に常日頃ある。髪は肩辺りで見ようによればぶかぶかの服を着た髪が長めの少年に見えかねない。
「僕は女ですけど?」
「そうか、初等部か?」
「……ちまいからって、初等部じゃないです!因みにあなたと同い年です!」
「ハハハハ。ちまいと、認めたな」
シエは目を見開き、不覚と心で叫ぶ。
「…み、認めてなんか…」
「まぁ、いい。俺はセトだ。姓はない、セト様と呼ぶがいい」
「…セト、と呼びます。僕のことはシエと呼んでください」
「ふむ、シエ。で、用は」
様を付けよ、と言うが無視してやると本題に促した。
「ああ、これからパートナーとしてお願いします」
「パートナー、だと?」
「ええ、学院側の決定でもありますし」
最後の選択はあったが、シエは決めた。彼とパートナーとなることを。
「ハハハハ、天才の俺にパートナーか。笑わせる」
「僕の為にも、お願いです」
「ふむ、ならば一つだ」
「何でしょうか、セト様」
とりあえず、ノせておこうと様を付けるシエ。それに、満足そうに頷いてセトは笑う。
「ハハハハ、俺は最強だからな、とりあえず俺に平伏すがいい!」
なんでー!!
「わかりましたよぅ」
しぶしぶひれ伏したシエに彼は見下ろしながら高笑いをする。
「いい景色だな、シエ」
「もう、僕はなんで床とお友達になっているのかさっぱりです」
****
2人が出会ったのは数10分前のことだ。
学院側の提案に、しばしというか数秒考えてYESと答えたシエはセトの特徴を思い出しながら知らないことを訊ねてまわった。彼は有名人であったためにすぐに情報が集まった。噂などに疎い彼女が有名人のことを聞き回ることに違和感を感じていた友人たちはシエの言葉をきいて協力してくれた。
なにせ、卒業も、その前に進級にまで関わるのだ友人たちは見捨ておけなかったのだろう。その広いネットワークによって得た情報は、
結婚相手として優良物件だと友人の中でも一番可愛い子がいっていた。
卒業後彼は、王宮にてお抱え護衛として王家から常々スカウトされているとか。あと、顔がいい。イケメンであるらしい。
銀色の髪は、サラサラでシエより若干短いくらい。珍しい瞳の色、右目は金色で左目が紫色のつまりオッドアイ。いつもダボっとしたフード付きのローブを着ていてスラリと長い足黒のショートブーツ、ヒールは無しを履いていて身長は190センチ。シエと40センチも違うね!って楽しそうにいうからデコピンをお見舞いした。
成績は学院トップ。学年じゃなくて?と訪ねたが、学院ともう一度言われた。顔よくて成績もいいとか、たしかにいい物件だ。
なにより、やっぱりgiftがすごいらしい。
『創作』っていうgiftらしいよ、と友人がいっていた。創作、どんなgiftだろう。天才セトと呼ばれるだけのことはあるのだろうとシエは思った。
そうして、よく出没するという場所に行くとそこには噂通りの人がそこにはいた。
「セト、さんですか?」
「お前、ちまいな。」
訊ねた僕に対して彼は、ちまいと返した。
「………セトさんですよね?」
「おお、肘おきにちょうどいい」
「…………」
その後、ジッと見下ろされじりじりと逃げ場を失い冒頭の近いですに戻るのだった。
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