爆誕!ステ極振り魔法少女いっきまーすミ☆ その45
はじめて行った王城からやっと帰ってこれた。すっかり遅くなってしまった。褒賞をもらえるだけかと思ってたけど、それだけじゃなかったからしかたない。
ヒー【これからも大変だね、シルフィー】
シル【そだねー。・・・って言うかヒース、あの後一人で急に呼び出されて何だったの?】
ヒー【いや・・・人違いって言うか、勘違いと言うか・・・】
シル【王様に間違えられるってよっぽどだよ?王様直属の護衛騎士さんの中にも変な顔してた人居たし】
ヒー【そう?何だったんだろうね】
これは何か隠してるな。女の勘。でも前、いつか話してくれるって言ってたし、慌てて聞かなくたって良いかな。これからも一緒だし、ヒースはヒースだし。
シル【ま、とにかく。明日ホジキン師匠のとこ行ってみよ。アレが完成するまでは出発できないしね】
ヒー【うん。そろそろだと思うけどね】
あ、ヒースちょっと嬉しそう。そうだよね、五年間ずっと一緒に旅していた剣がもう少しで戻ってくるんだから。
あーそれにしてもくたびれた! やっぱ緊張しちゃうよ、ああ言う場!
シル【ちょっと疲れたから先横になっちゃうねー。今日はカンベン!】
ヒー【はいはい。僕は向こうで片付けや整理しておくから。お休みなさい】
ランプのシェードを下し、ベッドにダイブしてうつ伏せになる。軽い疲労感はあるけど、眠気が来るのはもう少し先そうだ。
ぼんやりと今日あった事を思い出してみる。
積年の障害、バルバロファングを倒して王国王都に帰還した二日後。あたし達の部屋でのんびりしていたら、団長さんが訪れた。団長さんから報告を受けた国王が、あたし達を今回の討伐の功労者としてお城に招待したいとの事。
こう言うイベントをちゃんとこなしていけば何かのフラグが立つ可能性が高い! ご褒美をもらえるかも?!
よこしまな下心を抱いて、ラドクリフ団長の後ろをほいほいついて行った。
遠くから見ていた分には何とも思わなかったけど、荘厳なたたずまいのお城を目の前にすると若干圧倒されてしまった。何だろう、モスクと西洋のお城を合体させたような感じ? 白い壁と先端に黄金を品よくあしらった外見は立派過ぎて萎縮してしまう。
中は中で調度品は見るからに高級そうだし、床は全面赤絨毯。うおおおお……
中庭の植え込みはきっちり整えられて、上から見ると紋章のようになってる。
噴水はあるわ、彫刻はあるわ、全身鎧に身を包んだ衛兵さんがいるわ……。もう立派じゃないところを探す方が難しいわ!!
謁見の間に通されると、すでに豪華絢爛な玉座に腰かけた国王さまが待っていた。
きらびやかでも下品さの一切ないローブと金に輝く王冠は典型的な王様のイメージそのものだ。
フォ【国王フォードランである。賢者シルフィー、剣士ヒースよ。長きにわたる魔族の脅威を討ち滅ぼした此度の働き、まことに大義であった。邪眼王の危機以来全土を脅かされる我が国において最大の・・・・・・】
うおおおお…… 王様のお言葉が長く仰々しいところまでテンプレ通り……だと……
かいつまんじゃうと、騎士団が苦戦を強いられ続けてきたモンスターを一掃した圧倒的威力の魔法を見込んで、魔王を倒し魔界との戦争を終わらせるために協力してほしいってことだった。
請けてくれるなら今回の討伐報酬も含めて望みの物と、今後の資金供与を約束してくれるそうだ。
ヒースと相談したいからと言って一度下がらせてもらった。
魔王の討伐、か。一気に大事になったなぁ。モンスターのはびこる魔界の王様なんだから相当強いんだろうな。どんな相手なのか戦ってみたい気持ちが強い。まあZFもソロ撃破してるし? 今さら怖気づくような事でもないって感じではある。
だけどルファラだとHPゼロになったら死んじゃうって言うし、一切のミスが許されないって思うと身が竦む。さすがに今でもZFを初見でノーダメで倒すなんて考えられないし。
迷っているうちに到着していた控え室として通してくれた部屋も超ゴージャス。国王さまのお城ともなると隙がないなぁ。
あ、部屋の隅で青い半透明のがぽよんぽよんしてる。何かのヒントがもらえるかもしれない。
――魔界とは魔族、魔物の本拠地です。この大陸の北部と東部に広がります。魔王によって代々高度に統治されています。――
――当代の魔王”ラファーガ”は歴代魔王最強と言われています。かつて二人の勇者を退け、邪眼王を倒し勢力を拡大させており、人間界は危機にさらされています。――
――魔王軍はもとより膨大な魔力の塊とも言える魔王の力は非常に強力で、魔王を倒さなくてはこの戦いを終わらせることはできないと予測されています。魔王を倒し、世界に平穏を取り戻しましょう!――
もしかしてあたしがルファラにいるのはこのため?
ここに来るまで何度も聞かされたブーストモンスター出現の元凶”邪眼王”も倒してるって言うし、魔王ラファーガが間違いなくルファラのラスボスだ。
ルファラに来て一番初めに見たインフォメーションジェムによればクリアしないとログアウトできないし、戦う運命は避けられない。
シル【ねえ。この話受けようと思ってるけど、ヒースはどう?】
ヒー【・・・そうだね。僕はシルフィーがいいって言うなら反対はないよ。お金の事なんて王国がスポンサーになってくれるなんて助かるよね】
シル【ホントホント!・・・でも、ひとつだけお願いしないと、て思ってるんだ。それを聞いても、ヒースは賛成してくれる?】
それはあたしとヒースの二人だけの遊撃隊を組ませてほしいこと。
バルバロファングを倒した後、負傷した騎士さん達をその場で治療してたくさん感謝された。あたしは攻撃力だけでなく高度な治癒魔法も使えるから、前回みたいに大人数で任務に当たった時の攻守の要になれる。だけど被害をゼロにはできない。
あの戦いで騎士さん達のなかでキュアールが効かなかった、つまりは戦闘終了の時点で亡くなっていた人は七人。助けられた人の方がずっと多かったけど、とても心が痛んだ。
回復に徹していられたら違う結果もあっただろうけど、敵が強力すぎてそうもいかなかった。団長さんや回復した騎士さんはあたしのおかげで多くの仲間が生還できたとフォローしてくれたけど、最初からあたしが積極的に攻撃魔法使っていけたら被害はほとんど出なかったのに、と思うと悔やんでも悔やみきれない。
だから、本拠地にあたし達だけで乗り込んで敵の頭を倒してしまった方が被害も少なくできる。
さらに失礼覚悟で言えば、あたしが一人で気兼ねなく暴れていた方が敵にとって脅威になるはずだ。
ヒー【優しいね。一番辛い役回りだよ】
シル【なんのなんの。前からこんなことしてたから。気心の知れた仲間とワイワイとね。・・・ヒース、それでも良い?】
ヒー【僕の思いは変わらないよ。シルフィーがどこに行ったって君を守るのが僕の役目だし、望みなんだから】
初見で最強の魔王に勝てるかと言われると不安要素の方がずっと強い。
だけどあたしの弱い所を補ってくれるヒースとならきっと勝てる!
そうしてもう一度国王様の前に呼ばれ、返答した。
魔王討伐依頼を請ける事。ただし魔界には二人で乗り込む事を条件として。
厳しい旅になるだろうけど、出来る限りのサポートをしてくれると約束していただいた。
フォ【二人の勇者シルフィー、ヒースよ。そなた達の助力、心から感謝する。ルファラの加護があらん事を!】
勇者、だなんてなぁ……。そんな大層な扱い受けるとかえって居心地悪いや。PFOUじゃみんなが勇者みたいなもんだったし。
あたしはあたし。ヒースはヒース。誰かに役目を与えられるためにここに居るわけじゃない。
だけどこうして巡り合ったのは何かの運命なんだろうな。
ベッドの上で転がったまま窓の外を見る。
出発はもうしばらくあと。準備をしっかり整えよう。
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