爆誕!ステ極振り魔法少女いっきまーすミ☆ その41
オルギ山岳地帯にある村に到着して、一泊した。
この地域をおびやかすモンスターを倒しに来たと言うのに、村人達から全然歓迎されなかった。
さっさと出て行ってほしいと言う空気が流れまくりだ。何なんだろう。各地を旅してきたヒースもこんな雰囲気を感じた村なんて初めてらしい。
ドゥ【私共は望んどらん。どうしてあえて波風を立てに来る】
村長さんが重い口を開いて発した言葉がすごく気にかかる。
騎士団の団長さんが勅命書を見せたから仕方なくあたし達に開放する、と言う事なんだろう。
討伐直前の作戦会議を行い、馬車を村に置いて翌日早朝に山林に入っていった。
険しい山道を長時間徒歩で進んでいく。
マジで勘弁してほしい。タイガーパレオのおかげで体力はブーストされてるけどそれでもヒィヒィだ。
”幾度追い払われようと懲りずに来たか、人の騎士よ”
山の森の中に声が響く。
反響しているためはっきりした位置はわからないけど、一番最初に声が聞こえてきたと思う方角に目を向けた。
そこには大きな岩があって、その上に誰かが座っている。
灰色の服に身を包んだ、遠目にもがっしりした体格の人だ。
……違う、人じゃない! 灰色の服じゃなくて毛皮だ。その顔は犬……と言うより狼? これがこの地域を支配している獣人、バルバロファングだ!
ラド【我らの世界に魔族は要らん!それにどれほどの仲間が貴様らの牙にかかったと思う!】
”我ら「牙の民」は主「サキヤマ コウスケ」の命により、人の戦士と人の神の信奉者を許す事はできん。だが、信仰を捨て敵意を捨てた人を襲う事はせぬ。それは主とその奥方の望み。最後の慈悲だ。剣を捨て山から下りよ”
あ……。確かに思い返してみると、王国から目を付けられるような凶暴なモンスターが居ると言うのに村には何の警備もなく、かと言って人々が苦しい生活を強いられていると言う事は無かった。ひょっとして話せば分かる系?
ラド【くどい!魔族の甘言に貸す耳などない!世の泰平を乱す魔界をのさばらせておいて、一体何の騎士と言うのか!】
”ならば仕方ない。出来ぬと言うのなら覚悟せよ”
団長さんとやり取りしていたバルバロファングが息を吸い込み空に口を向けた。それと同時に他の騎士さんがいきなり魔法を撃つ!
その殺気を感じ取ったバルバロファングは瞬時に横に跳んでかわし、四つ足で地面をつかみ、グルルと短く唸ると魔法を撃ってきた騎士さんに向かって一気に突撃してきた!
騎士さんもヒースみたく魔法を剣に乗せたエンチャントスラッシュを使えるけど、振り抜かれるはずの剣はバルバロファングの牙にキャッチされ抑え込まれていた。
一瞬たじろいだ騎士さんを思いっきりぶん殴って吹き飛ばし、そのまま天に向けて遠吠えした。
山の奥の方からどんどん気配が増えてくる。木々の間、岩の後ろから続々と狼男が姿を現した。
え? え? 結局戦闘になっちゃうの? 頭も良さそうだし、何もしなければ何もしてこないモンスターなんじゃないの?!
でももう考えたり悩んだりしている場合じゃない。明らかにこっちから仕掛けたし、前情報だとバルバロファングの群れはランクSの超危険モンスター! 気を抜いたらやられる!
あたしの攻撃魔法は味方にも当たってしまう(以前ギルドの仕事中に実証された)。しかも威力がハンパないから乱戦混戦に向いていない。
普通はどこにいるか、どれだけいるかも分からない敵を相手にする時は、手付けの意味も込めて範囲全体魔法を使う。だけど今回、一掃するために全体魔法なんて撃とうもんなら惨劇しか待っていない。
使えるのは単体攻撃の魔法のみ。基本は回復と補助魔法を専門に使うけど、両者ともにMP消費が攻撃魔法よりも多めだから乱発は厳禁。一応MPチャージ(MP回復アイテム)はルファラに来た時から一切手つかずでアイテムパックの中に入ってるけど、ぎりぎりまで使わないようにしなければ。
あたしの装備は”魔導師の三角帽”と”輝石の錫杖”。魔法の発動速度優先とMPコスト軽減がメイン。”ミラージュリング”の特殊効果で攻撃回避を狙う。
作戦通り、まずみんなとバルバロファングが入り乱れる前にあらかじめ全員にまとめてマティアをかける。攻撃力上昇よりも、火の加護で寒さから体の動きが鈍るのを防ぐのが目的。
あたしのスキルツリーマックスのマティアはルファラでも効果時間はほぼ変わらず、一発で10分(※1)くらい持つ。もしそれ以上かかる様だったら重ね掛けしていかないといけない。前日の作戦会議で騎士団のみなさんにもあたしの補助魔法について周知してもらい、効果が切れたのを感じた人からあたしのところに戻ってきてもらう事になってる。
バルバロファングが堅かったら防御低下の”デソルブ”、強かったら攻撃低下の”ナーダ”。
特に苦手な環境属性が判ればそれ優先!!
こっちも腹括った。さー、かかってこい!
~補足~
※1:現在ルファラでは個人で携帯するタイプの時計は極めて高価なため王族や大富豪しか所有できませんが、シルフィーさんはメニュー開くと時計(ルファラ時間)が表示されるので計測が可能です。
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