爆誕!ステ極振り魔法少女いっきまーすミ☆ その36
商工会を通して発行してもらった採掘依頼状を携え、ドルトン鉱山にやってきた。
何でもここは特殊な素材、”ジピリダン鉱石”が採れる珍しい鉱山らしい。延ばしたり細工しやすい材質だけど硬度は”ガルニバウム鉱石”や”フェルミン鉱石”ほどじゃないから、耐久力も求められる刀剣類の素材に使われる事はあまりないんだとか。
細工しやすいけど、刀剣以外に使用する金属としても別の物でさらに使いやすい物があるから今ではほとんど使わないんだって。
そのため需要が少なくて採算が取りづらく、常時採掘はしてないそうだ。そういう意味でも、特殊。
そんな鉱石を剣の素材に使うの? ホジキン師匠の考えはあたしにはよくわからない。
普段は閉鎖して盗掘者を警戒しているそうで、少数の警備員さんと作業員さんがいるだけだ。
依頼状を渡して前金を支払うと作業員さん達が道具を用意して準備をし始めた。
坑道入り口の大きな錠前を開けて中に入っていく。
しばらくして悲鳴が聞こえてきた。え? 何? 事故?!
トム【た、助けてくれー!】
作業員さん達が血相を変えて飛び出してきた。
その後ろからムカデのような物が出てきた! 面食らって固まってしまったあたしと違ってヒースは即座に剣を抜いて斬りかかっていた。
バスっと一閃されたムカデみたいな物が地面でビタンビタンともがいてる。真ん中から半分に切断されたって言うのに! これだから虫って怖い! ファイアーボール!
敵性生物が爆散して脅威は去ったと言うのに、逃げ帰ってきた作業員さん達はいまだにパニック状態だ。
トム【な、何とかしてくれ!】
ボブ【坑道の奥に魔物が巣を作り始めてたんだ!チクショウ、いつの間にどこから入り込んだってんだ?!】
ジョ【クソっ!マイクの奴が出てきてねえ!なんてこった!】
嘘でしょ……。あたし達が頼まなかったらこんな事にはならなかったんじゃ……。
彼らは戦闘要員じゃないので仕方ない。せめてあたし達が代わりに害虫を駆除してきてあげよう。もしかしたまだ救助が間に合うかもしれない。
でもかなりたくましい体つきの男勢が、武器にもなる掘削道具を持ってるにも関わらず逃げ帰ってくるんだから相当なことだ。どうやらモンスターは今の一匹だけじゃないようだし、十分に気を付けないと。
作業員のジョンさんによると、坑道は迷路のようになっているけれど、今回の目的地までのルートはカンテラに明かりを入れてきたからそれに従えば迷う事無くたどり着けるそうだ。助かります。
坑道の天井の高さは普通の家の部屋と同じか少し低いくらい。手を伸ばしたヒースが軽く跳んだら指がつく程度。
作業員さん達が明かりを灯しておいてくれていなかったら真っ暗だ。トラヴィジョン使えば日中と多分変わらないんだろうけど。
言われた通りに明かりに従って進んだ坑道の最奥の採掘場は、大きく広い空間が出来上がっていた。天井はちょっと高くなったかな、くらいで大して変わらない。
その大広間の中央あたりで何かがウゾウゾと動いてる。まだ辛うじてカンテラの光が届くあたりだ。
わ! 何だアレ! でっかいアリ?
その周りにはさっき出てきたワームみたいのが何匹もいる。
ポップが入り乱れてるけど、どうやら二種類。ワームの方が”ラーバティス”、でっかいアリが”アンティス”。
こんな暗闇で生息してるくらいだから、多分人間よりもずっと感覚が優れていて、明るさに関係なく素早く動けるに違いない。しかもアリやワームだったら天井関係なしに移動してくるだろう。地形的に向こうが圧倒的有利だ。
大広間の入り口にいるあたし達に気付いて、ラーバティスが向かってきた。
一匹ならまだしも、ウネウネした集団とか気持ち悪い! さっきファイアーボールで一発だったけど、こんな閉塞空間で火炎系なんて使ったら瞬く間に酸欠だ。喰らえアイシクルシュート!
たくさんの氷柱が飛びかかってきたワームを撃墜する。それを掻い潜ってきたヤツはヒースが一刀両断した。氷柱が刺さったラーバティスは、そこから一気に冷却されて動かなくなった。
やっぱり一匹一匹は大したことないぞ!
奥のでかいヤツがボスだ!
ラーバティスをさっさと全部やっつけ、あたし達が襲いかかってくるのを察知したアンティスが、さらに奥の方に下がっていって光のない所へ消えてしまった。アンティスのいた辺りにはカプセルみたいなのの残骸がたくさんある。ひょっとして卵? こいつらは親虫と幼虫の関係なのかな?
これ以上奥へ行くと明かりが届かなくて何も見えなくなる。少し戻らないと。
引き返しだした所へ、モンスターが暗闇の中から突然猛スピードで現れて腕を振ってきた。避けた足元の岩盤に長い傷が残る。アリと言うよりカマキリみたいだ!
あたし達を捕えられなかったお化けカマキリは止まる事なく、走り去って闇に溶けていった。
くっそー! 奥の方全然見えない!
ヒースの撃つ閃光魔法が少しだけ闇を照らすけど、照らされた範囲にはお化けカマキリはいない。
彼の魔法は手元から離れてしまうと短時間しか持続しないから、索敵にも限界がある。
魔法使えなくなるけど仕方ない、トラヴィジョン!
あたしの目の前に魔法で出来たバイザーが現れる。
見える…… 見えるぞ! あたし達から距離を取って様子を伺うようにうろうろと歩いている。
意外とこいつ、足音立たないんだな。トラヴィジョン無かったらかなりの強敵だぞ。
一旦トラヴィジョンを解除し、アイテムパックから弓矢を出して装備。
シル【炎の力よ!宿りて盛れ!ファイアソール!】
矢筒に入った矢にまとめて魔法をかける。今のはルファラの火系の基礎魔法! 矢もこんな時のためにエドワーさんの店でたくさん買っておいたもんね! 師匠紹介してくれたお礼も兼ねて!
もう一度トラヴィジョン! 絶えず移動してこちらをうかがうお化けカマキリを確認して矢をつがえた。
あたしの魔力で付いた火は、あたしと魔法をかけられた矢を焼くことなく揺らめいている。一度付与された魔法は、トラヴィジョン使用中でも消滅しないって実証済み。
暗視装置をつけてこの”名手の魔法弓(必中効果)”を装備したあたしはまさにスナイパー! 魔法を直接使えなくってもこの手があるのよ! ルファラの魔法も習得し出したあたしはさらに大きな力を手に入れたのだ!(←大袈裟)
このお化けカマキリめ、受けてみよ!
ビシュッと空を切って矢が進む。
お化けカマキリの外殻に次々と突き刺さった!
よし! このまま燃え尽き……ない!
火が燃え移らないよ!
刺さり具合が浅いのか?!
弓が低威力なせい?!
予想より効果が出なかったことに慌てるあたしを余所に、ヒースが突っ込んでいく。
ヒー【ありがとうシルフィー!】
えっ 何が? ちょっと! 危ないって!
迷う事無く真っ暗闇に潜む敵に向かって走っていく。え、何で分かるの? あ、そうか! 火の付いた矢がたくさん刺さってるからだ!
場所さえわかってしまったら、ヒースの剣の敵じゃなかった。
アンティスはあっという間に武器である鎌を落とされ、胴体はくびれた節のところで切り離された。
シル【け、計算通りね!】
戻ってきたヒースに向かって、さも当然、みたいに振舞ってしまう。
考えてみたら彼に対して、想定外じゃないよ、ひよってませんよ、ってアピールする意味なんてどこにもないんだけど、思わず見栄を張ってしまった。
ヒー【うん、シルフィーがサポートしてくれなかったらもっとずっと苦戦してたよ。ありがとう】
な、なんと言う天使……! も、猛烈に居た堪れない……っ
シル【・・・ごめんなさい、嘘です。偶然上手くいきました】
ヒー【うん。知ってた】
ヒースはあたしの頭にぽんっと手を乗せて優しく微笑んだ。
くっそおおおおおおっ レベルがカンストしても勝てる気がしねええええええ!!!
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