爆誕!ステ極振り魔法少女いっきまーすミ☆ その33
どうやって戻ってきたんだっけ。気が付いたらヒースと分かれた大通りに出て来ていた。
ちょうど店だったと思われる建物の中からヒースが出てきて、あたしに気付いてこっちに歩いてきた。
ヒー【あれ?シルフィー、どうしたの?】
シル【怖い・・・怖いよ・・・。何が起きてるの?どうしてあたし、ルファラに送られたの?いったい何が・・・?】
ヒー【ね、ねえ、大丈夫ホントに】
シル【ヒース・・・ヒース、ヒース・・・っ!あたしワケわかんないよ・・・!】
ヒー【何があったんだ?何を見たんだ?シルフィー、大丈夫だから。僕が居るから・・・!】
ヒースに会って話しかけられた途端、あたしの中で肥大化し続けていた不安が一気に破裂してしまった。
急に涙が出てきて、それを止められない。体の震えがさらに大きくなる。
力が抜けて、あたしの両肩に手を当てていたヒースに寄りかかるようにしなだれかかってしまった。
目の前が暗くなって、そこから先は覚えていない。
…… ……
…… ……
気が付いたらベッドの上だった。
ヒースにもたれかかったところまでは覚えてるから、どうやら彼がここまで運んでくれたらしい。もうすっかり日が暮れて夜のとばりが降りている。
瞼がなんか熱くて腫れぼったい感じがする。気を失ってる間も泣いてたのか?
まだ少しすっきりしてなくて体が重い。体力が低いせいか消耗が早く、また回復が遅いらしい。タイガーパレオが外されて椅子のところに掛けられてる。これも原因かな。こんなんであたし、本当に大丈夫なのか……?
ヒー【・・・大丈夫かい、シルフィー】
隣からヒースの声が聞こえてきた。すっごく心が落ち着いてくる……。
良かった、一人じゃなくて。自分の情けないほど低い体力と予測できない運命を感じて、また不安が襲い始めていたところだったから。
シル【うん・・・少し、落ち着いた】
ヒー【そう。良かった】
本当に心配してくれていたようで、ヒースはようやく大きく安堵の息を吐いた。その時ふと気が付いた。
シル【手・・・握ってくれてたんだ】
ヒー【あ!いやこれは!】
慌てて離して、立ち上がって後ろに下がってしまった。
せっかく嬉しかったのに……。もう、分かってないなあ。
ヒー【と、時々うなされてたり、最初すごく取り乱してる様だったから・・・。ごめん、勝手なことして・・・】
シル【ううん、嬉しかったよ。謝らなくていいから・・・】
純情すぎるよ、ヒース。もうそれはあたしにとって迷惑どころか、一周回って高得点にしかならないから!
若い時は大人の余裕のある男の方がいいなとか思ってたけど、もう今じゃこっちの方にキュンキュン来ます。
心はすっかり落ち着いたけど、体がまだ微妙に重たいから横になったまま、隣に戻ってきた彼の目を見て話しかけた。
シル【ねぇ、ヒース?】
ヒー【なに?】
シル【ありがと。ずっと付いててくれたんだね。・・・その、あのね、あたし・・・】
ヒー【気にしなくて良いよ。僕がそうしたいだけなんだから】
シル【え?えっと、あたし・・・】
ヒー【ねぇ、シルフィー?】
シル【はい】
あたしが何か言おうとする度、絶妙なタイミングでかぶせてくる。これまでこんな事なかったよ?
あたしの言葉を遮ったのに微妙にもごもごと歯切れの悪い感じになって、なかなか次の言葉が出てこない。まあ良いか。せっかくヒースから何かを話してくれようとしてるんだから、待ってみよう。
ヒー【そんな事、これからも気にしないで。・・・僕は、君の事が、す、す、好き・・・なんだ。だから、僕が何をしてもそれは僕がそうしたいからで、シルフィーには何の落ち度もないし、気にしなくていいんだよ】
ああ……っ! もう、何!? 今何て言ったの?! もう一回聞きたい! ね、お願い!
すごく嬉しい! こんな風に言ってもらった事ってなかったかもしれない!
このぐるぐる頭が回るような感じ、さっきまでのとは全然違います!
シル【あたしもね、ヒースの事が好き・・・!大好きです!】
がばっと起き上がって、正面からヒースに抱きついた。
彼はぐらついたりする事なく、あたしの小柄な体をしっかりと抱きとめてくれた。そのまま首に腕を回してヒースの頬に自分の頬を寄せるようにして、体を離れないように密着させる。
大丈夫。このルファラで何が起きていて、あたしに何をさせようとしているのかなんて想像もつかないけれど、ヒースが居てくれれば大丈夫。
あたしはどうなったって頑張る。彼のために何があったって耐えてみせる!
ヒー【シルフィーの方が僕よりもずっと強いけど、僕は君の事を何があっても守ってみせるよ。だから何があっても、シルフィーは悔やんだり悩んだりしないで。背負いすぎて泣かないで。君の笑ってるところが、僕は一番好きなんだ】
わかった。わかりました。
あたしはこれからもずっと、これまでよりもヒースの傍にいます。
貴方があたしの支えになってくれるなら、あたしは貴方のために力を捧げます。
だからこの、あたしを知らないこの世界での、たった一つのあたしの居場所でいてください。
また気付かないうちに涙が頬を伝っていた。
さっきまでとは全然違う、嬉しさがあふれてきたものだ。
ヒースの首に回していた腕をほどいて、目に溜まった涙をそっと指で拭きとった。
至近距離で見つめ合う。そして当たり前のように二人の唇を重ね合わせた。
……
……
朝日と鳥のさえずりとともに目が覚めた。
隣を見ると同じベッドの上で穏やかに寝息を立てているヒース。
い、生きてるよね……?
びっくりした。
本当に逝きかけた。やばい、こんな命がけとは。
してる最中、ちらっと見た左腕のブレスレッドから表示されたHPバーがガリガリ削れていくのを見て血の気が引いたけど、そんな危機意識はすぐ上書きされちゃって忘却の彼方へ。
息が上がって、どんどん目の前真っ赤になって、動けなくなってはじめて死を意識した。
キュアール(注:回復魔法)使う暇もなし!
腹上(?)死とか笑いごとにならない。体力ステ、マジ重要! どうして上げてこなかったぁぁああああ!!
イくってのが文字通り過ぎてシャレにならん。違う意味でスリル満点。頭を抱えてしまう。
今もHPバー見てみたけど、全快になってない。コトは慎重にいたさなくてはダメって証拠だなぁ……。
この体、大変不自由です!
現在不定期更新中です。申し訳ありません……