爆誕!ステ極振り魔法少女いっきまーすミ☆ その32
夜が明けて、あたし達はトリンダーさんに色々と尋ねた。
新しい剣が欲しい事。また、出来る事ならこの壊れた剣を直したい事。
あたしが使えるような装備がないかどうか(出来れば防御と体力サポートを優先で)。
モンスターのパーツを加工できる人を知ってるか。
トリ【そうだな・・・腕のいい職人はみんな王国へと引き取られていったよ。ここはもう見ての通りの廃墟だからな。それこそこうなる前は非常に腕利きの連中が揃ってたんだが。アグリードワーフもいたしな】
シル【え?】
ヒー【なんですって?森のアグリードワーフ、ですか・・・?】
トリ【ああ。うん?なんだ、お前達ワツヒの森の連中を知ってるのか?】
シル【いや、まあ、この街を襲ったモンスターがそれだって聞いてて・・・】
トリ【ああ、そうか。そうだな。そりゃあ噂も立つか。コウスケが・・・昔そう言う変わった男が居たんだが、そいつが仲介してな。腕のいい奴らだった。武器の量産を担い、道具の修理なんかもお手の物だった。邪眼王のせいでおかしくなって以来、疎遠になってしまった。いや、疎遠なだけならいいな。手酷くやられたよ】
そうか、だから森に馬車が余裕で通れるくらいの道があったんだ。
モンスターと共生していたなんてすごいな。せっかくいい関係だったのに何があったんだろう。
トリ【アイツらの作った武具は量産だったわりにかなり質が良くてな。この街を警備してた人間はみんなそれを使ってたよ。おかげで職人たちは自分の世界に没頭できて、どんどん良質の物を作っていったんだが・・・数の暴力に勝てなかったよ。良質の装備を量産して、武装した魔物が一気に襲いかかってきたら、どんな業物を持っていたって敵うわけがない。多勢に無勢さ】
トリンダーさんはあたし達の目を見ず、遠い目で窓の外の景色をぼんやりと眺めながら言った。
トリ【教会の神聖魔法も追いつかなくてな。暴走したグレートホーンが結界をぶち抜いて侵入して、もうルファラ教の司祭達も這う這うの体で逃げるしかなかった。教会が撤退し、防衛組織が消滅するまで襲撃は治まらなかった。
もう誰も魔物の侵攻を止める事が出来なくて、滅んでしまったと言うわけさ。
俺達みたいな生き残りで、この街を見捨てられなかったわずかな連中だけが細々とここを再生しようとしているんだが・・・うまく行かないもんだな】
きっと地獄絵図だったんだろう。トリンダーさんの声を聞いてるだけで辛かった日々だったことを強く感じる。
トリ【ああ、すまん。剣、だったな。さすがに俺は取り扱ってないよ。よかったら教会跡地や商店街跡を回ると良い。まだ残ってるアイテムがあるかもしれないからな。まあ・・・残っていれば、だが・・・】
トリンダーさんに勧められて、あたし達は街をめぐる事にした。
幸い酷い飢饉でもないし、トリンダーさんが物資を工面して来てくれるから、困窮した街の人が人間を襲う事はまずないだろうって言っていた。
それでも安全のために一緒に行動しようってヒースが言ってくれたけど何だか気まずくて、ちょっと一人で歩かせてほしいって申し出た。
ヒースも昨日あんなショックを受けていたし、一人で思いたい事もあるんじゃないかな。お互いちょっと一人で居て、心の整理をつけさせようね。
廃墟や遺跡を歩くのって少し緊張する。ムゥトやアクース(PFOU NXのステージ)にはたくさんそう言うところがあって、迷路みたいになった石壁の角から急にモンスターが出てくるとかよくあった。トラップだってあったし、そう言うところはゴーレムに先頭に立ってもらって、後ろからキョドりながら着いて行くのが魔法使いの基本スタイル。
まあここは曲がりなりにも人の住む街だからさすがにトラップはないだろう。
そもそも襲われたとしても魔法で返り討ちなんだけど。一応殺傷しないように攻撃力の無い、麻痺や感電の特殊効果のみの魔法を使っておこう。それに防御魔法かけて、無頼漢が死角から不意に接近してきた時も自動で攻撃するようにしておけば大丈夫。さすがに不意打ちしてくるような輩に手加減なんてしてられない。
そんな風に警戒してたけど、トリンダーさんが言ってたように何か危険な事があるわけでもなく、年端もいかない女の子一人(中身は三十路前)でうろついても大丈夫だった。
マップ見ながら行き着いた先は、周りの建物の中でもひときわ大きく、そしてひときわ激しく破壊されて無残な姿を晒している建物。ここがあたしの目的地。
ここが教会かぁ。色んな付加属性、特殊効果があるアイテムが眠ってそう。良いのが見つかるといいな。
たしかにすごい破壊のされ方をしてるけど、まだ無事な所も随分残ってる。
無事な棟に入ってみた。アパートみたいだ。もしかしてお坊さんや尼さんの寄宿舎かな。避難の時に置いていった個人用装備品が残されてるかもしれない。
部屋を順々に回って、閉められたタンスや引き出しを開けて見ていく。ただの泥棒だなぁ。
PFOU2で散々家探ししてアイテムを発見してきた時は罪悪感の一つも湧かなかったけど、VRになったNXで実際にこれをやった時、すごく後ろめたい思いをしたのを覚えてる。
だって後ろじゃ生活してるNPCが普通に行動してるんだよ?! 取られていく事に何の抵抗も示さないけど、めっちゃ気まずかった!
でも恐ろしい事に人間は慣れるんだよなぁ・・・。いつの日かVRと現実の区別がつかない廃人ゲーマーが出やしないか心配だ。
次、次と見ていくけれど使えそうなアイテムは全然なかった。うーん、流石にとっさの時にでも持ち運べる物くらいしか置いてなかったんだろうな。
何部屋も見て回って疲れてきた。この部屋を最後にして、次は別の棟に行こうかな。
ふーっと一つ大きく息を吐いて、ベッドの向かいにある観音開きの戸をぱかっと開けた。
シル【え・・・】
クローゼットの中におかしなものが入ってる。それを見たあたしは絶句した。
なんだこれ……。
シル【セーラー服・・・?】
ここまでで出会った人の中で、こんな服を着ていた人は一人としていなかった。
それだけじゃない。あたし、この服に物凄く見覚えがある。
あたしの通ってた高校の制服だ……!
ウソでしょ? 何でこんな物があるの?
見てはいけない物を見たような気がして慌ててクローゼットを閉める。
治まらない動悸を一生懸命沈めながら、吸い寄せられるように窓際にある机の方へ行く。すっかり乾いて何も入っていない花瓶が置かれてた。
引き出しを開けてみると、この星に来てから一度も見た事のない馴染みのある材質の物が出てきた。
シル【手帳・・・】
透明なソフトタイプのブックカバーに包まれた表紙はアルファベット表記だ。何だ、何だ一体この部屋……っ!
あたしが今居るこの星は地球じゃない、VRじゃない。
なのにどうして地球の物があるの……?!
激しく混乱しながら手帳を開いた。そこにはとても懐かしい文字がたくさん踊っている。
読める…… 読める……!
ポップ無しに、普通に読める。日本語だ!
一緒に貼られているシールはどう見てもプリクラだ。え? 何なの一体これ!!
最後の日付は今から十四年前。
何? 十四年前にルファラに来てた女の子がいるの?
名前は……”萩本 亜弥花”……?
このルファラ、すごくいびつで嫌な雰囲気がし始めた。
あたしは一体、何に巻き込まれているの……?
際限なく大きくなる不安があたしを飲み込んでいくのを感じていた。
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