表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新世界の神に俺はなる!  作者: レイモンド
第四部
82/102

爆誕!ステ極振り魔法少女いっきまーすミ☆ その30

 



 ブースト・アグリードワーフの集落を殲滅して、またリッケンベートを目指して森を進んでいく。

 この集落から出てる道は一本。しかもそれは目指す方角に伸びているうえに太く、馬車なんかも余裕で通れそうな物だった。

 なんだろう、往来があったって事?

 ここに来るまではけもの道みたいな感じだったのに。


 地図によるとリッケンベートまでは川や山で阻まれて、迂回出来なさそうだったので馬車は入る手前で置いてきた。

 でもここからなら馬車が使えそう。と言う事で引き返して馬を連れて来た。

 馬車自体はサイズの関係でアイテムパックに入らないから、幌以外の部分は置いてくるしかなかった。バラしてパーツにすれば入りそうだったけど、ここで誰が組み立てるの?

 都合のいいことにこの集落に馬が牽ける荷車があったので、それを繋いで使用する事にした。幌が無いから町に着いたら回収してきた幌を付けてもらおう。それまで雨が降ったりしなければ良いなぁ。


 アグリードワーフが作ったトラップは魔法で作動するタイプじゃないから、この森に残された物はまだ生きてる。

 馬車をゆっくり走らせながらあたしがトラヴィジョンを使ってスキャンを続け、トラップ破壊と馬車の護衛をヒースに任せた。

 たまにガサッと音がしたり、木々の奥の方に影が見えたりしたけど、どうも攻撃性のあるモンスターじゃなくてすぐにあたし達から距離を取るように離れていった。鳥の羽みたいな毛をした鹿みたいな馬みたいな生き物だった。

 ヒースがいてくれるって分かってるけど、ドキッとする。あたしには一発KOの危険が常に付きまとってるから勘弁してください。


 進行方向が明るくなってきた。森を抜けるまでもう少し。

 緊張感が緩み始めたのとほぼ同時に、来た道の真逆の方からすごい音が響きだした。

 こっちに向かってるみたいだ。


ヒー【シルフィー、急いで出して!】


 あたしよりもより危険を察したヒースが荷台に飛び乗って指示を出した。

 何が起きてるのか分からないけどトラヴィジョンを使用したまま馬を走らせた。前方にはもうトラップは確認されない。そのままGO!


 森を出たらすぐに大きくて長い柵が眼に入った。

 道は幸い阻まれていない。そのまま柵の向こうに出て、リッケンベートの方角に馬を走らせる。

 森から響く大きなざわめきと轟音は止む事無く、どんどんこっちに迫っていた。

 何なの一体!


 あたしが振り返るのと、森の入り口の木々がへし折れて飛んでくるのはほぼ同時だった。

 幸い木々は森を囲む柵にぶつかりこっちにまで飛んで来はしなかったけど、その奥から物凄く巨大な角が勢いよく現れた。


 なにあれ! 物凄くデカいゴリラみたいな牛?!

 表示されたポップには”グレートホーン”って出てる。なるほど、と言った感じの名前だ。

 森から出たグレートホーンは速度を緩める事無く、むしろ勢いづいてあたし達に向かってダッシュしてきた。

 柵も難なくぶち破って追いかけてくる。この馬よりも速い!


ヒー【ライトスピアー!】


 後ろのヒースが魔法を撃つ。前傾姿勢で角を前面に押し出してつっ込んでくるグレートホーンの頭に命中したけど、バチン!と音を立てて弾かれてしまった。勢いを殺せてもいない。くっそー、それなら!


ヒー【ごめんシルフィー、代って!】


 ヒースもあたしと同じことを考えたようだ。馬を走らせたまま交代。あたしが荷台の上から魔法で撃墜だ!

 迫ってくるグレートホーンに向かって右手を突き出す。すごく揺れてるから狙いが付けにくい。

 こんな時はやっぱりファイアーボール! 信頼度が違います!


……あれ? 魔法が撃てない。あ、トラヴィジョン解除してないままだ!

 新機能はこれだから! 頭で理解してても体が反応するまで時間がかかる!


 急いでトラヴィジョンを解いてもう一回やり直し!

 この間もグレートホーンはどんどんその距離を縮めてきていた。なにくそ、受けてみよ!


 バガァン!と強烈な爆発音とともにこっちにも衝撃波が来た。いかん、距離が近すぎた!

 心配したけど吹っ飛ばされもしなかったし、確認したけどHPも減ってない。タイガーパレオさまさま!

 真正面からファイアーボールを受けたグレートホーンは大きく仰け反ってそのまま倒れた。

 よっしゃー! ルファラに来た時よりもレベルが20以上上がってるから、キメラタイガーに撃った時よりも二倍近く威力が上がってる。これをまともにくらって無事なわけがあろうか!(反語)

 ところがグレートホーンは立ち上がって頭を振ると、またこっちを猛追し始めた。うわ、嘘!


 もう一回撃った。確かに命中して大きく仰け反ったけど、倒れない。マジかよ! 炎に強いとか?!

 今度は道に沿ってずっと続く柵の一部を投げつけてきた。激突しそうなヤツは全部空中で撃ち落としたけど、一つが大きく頭上を越える軌道を取って馬車の前方に墜落した。暴投かと思ったのにそうじゃない!


ヒー【シルフィー、つかまって!】


 ヒースが叫ぶのと馬が驚いて急旋回するのはほぼ同時だった。

 大きく振られて荷台から放り出されたけど、あまり痛くない。気が付くとヒースに抱きとめられていた。

 自分も飛び出して、放り出されたあたしの手を掴んで引き寄せてくれたらしい。


ヒー【シルフィー、無事か?!】

シル【は、はい! くぁwせdrftgyふじこlp】


 何この子かっこいい! ダメです、決定打!

 二つの意味でピヨってるあたしは現在使い物になりません。

 そんなあたしをほっといてヒースが抜剣して走っていく。

 馬車を止めた事でグレートホーンが悠々とこっちに接近して来ていた。


 後足で立ち上がって殴りつけたり、角でしゃくりあげたりして攻撃してくる。

 一発一発がすごい威力で、地面に小さなクレーターが出来たり、大きく抉り取られている。

 ヒースはそれをギリギリのところでかわして剣で攻撃しているけど、かなり頑丈なようで有効にダメージが与えれてないようだ。


 何度もカウンターを続けていたけど、至近距離からの角での攻撃の直後、鈍くて高い音が響いた。

 あたしの近くに何かが飛んできて、地面にザッと刺さった。えっ、ヒースの剣が折れた!?

 欠けておかしな形になった剣を片手で構えて、空いた左手で魔法で光の弾を撃って牽制してるけど、明らかにヒースの方が不利。

 ヒースは腰の辺りには短剣も装備してるけど、どんなに腕が立ったってそんなんじゃこの相手には力不足ってあたしにだって分かる。でも予備の剣なんて無いよ!

 見るからに防御力も高いこのモンスターを、いくらヒースでもまともな武器も無しに倒せるなんて思えない。あたしが魔法で力を貸さないと!


 ピヨってたあたしも今はもうシャキッとしてる! 火に強いなら氷はどうだ! フリーズケイジ!

 冷気が巻き起こって地面から氷で出来たつたがグレートホーンに絡みつき、一気に凍りついていく。

 この魔法は連続ダメージを与えるけど、一発一発が小ダメージで全段当たるのに時間がかかる扱いづらい魔法。しかも発生してるのが地面からだから、発動場所から動かれると効果がでない。でも徐々に氷漬けにして動きを封じる事が出来る特殊効果がある。全段当たれば確実に凍らせられるけど、途中でも低確率で凍る事がある。


 幸いヒースが足止めしてほとんどグレートホーンはその場から離れられない状態だ。

 氷の蔦は確実に太く育ってグレートホーンを縛り付け、びしびしと凍りつく範囲が広くなっていき、動きを確実に止めていく。


 最初に完全に凍りついた左腕めがけてヒースのエンチャントスラッシュが走った。

 凍りついた腕が欠片を散らしながら切断され、ヒースの剣も破片を飛ばしてまた歪な形になった。

 その後、両方から何度も出る欠片に光が当たって、周囲がきらきらと輝いた。


 フリーズケイジが完全に発動し、あちこちが欠けた氷の彫像が出来上がった。

 欠けているが故にバランスを崩し、大きく傾き倒れていく。音を立てて地面に倒れると、バキボキと音を響かせて像が砕けてばらばらになった。

 こっちも馬車を含めて満身創痍だけど、完全勝利!


 ほとんど原型をとどめていない剣を下し、空を見上げたヒースの頬を伝う汗に夕日がきらめいていた。



 

 現在不定期更新中です。申し訳ありません・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ