爆誕!ステ極振り魔法少女いっきまーすミ☆ その29
シル【左、三本固まってる木の真ん中の根元】
シル【通路このまま正面、右に小さめの岩がある辺り】
シル【前方右上、二本目の太い枝の葉っぱの間に隠されてる】
魔法のバイザーを装着して、スキャンしながら森の中を進む。
これ便利! ゴーレムいなくて大丈夫とか超便利!
発見したトラップはヒースが剣で、またはヒースの魔法で壊していった。
それにしても結構な量の罠が仕掛けられてる。明らかに自然の構造物じゃないし、巧妙にカモフラージュされている。
このトラヴィジョンを使ってないとあたしじゃ気付けない。ダメージ系のトラップだったら一発で死んでしまう可能性があるから、トラヴィジョン無しではこんな森は怖くて入れないよ。
これもブーストモンスターの仕業だろうか。
無数のトラップを無傷でクリアし、抜けた先は広く拓けた空間だった。
結局ここに来るまでモンスターに一匹も出会わなかった。
あれー? この森の中でレベルアップを期待したのにとんだ期待はずれ。
拓けた空間にあったのは水辺。森の中の泉の周りに大集落が出来てる。
太い樹の影から様子をうかがう。トラヴィジョンを使ったまま目を凝らすと、視界がグィンとズームアップされた。何この多機能!!
ほとりに建てられたログハウスを背の小さな人間型のモンスターが出入りしてる。ゴブリンみたいな風貌だ。
ブーストモンスターってこいつら? ポップが出た。
”アグリードワーフ”
ん、ゴブリンじゃなくて、ドワーフなのか。器用に色んなものを作りそうだな。
確かにこの森の中はアナログだけど精巧な罠だらけだった。そうか、この連中が作ってきたんだな。ってことはコイツらがブーストモンスターだ。気を付けないと。
ヒー【かなりの数だ・・・。アグリードワーフみたいだから個体は大した強さじゃないけど、この数は問題だな・・・】
シル【ヒース、あのモンスター知ってるの?】
ヒー【・・・まあ、昔よく見た事があるから。基本は臆病な魔物だよ】
そっか、旅をしてたんだからいろんなところに生息してるのを目撃したんだろう。
大集落を作ってるし、一定以上の知性がありそう。
攻撃手段も飛び道具をはじめ色々持ってそうだなぁ。一挙殲滅が理想的だ。
ズームをかけてもトラヴィジョンの探索効果は変わりないようで、全域を見渡して罠が設置されていない事を確認した。トラヴィジョンの役目終了っ!
シル【よーし、それじゃああたしの魔法で一気にのしちゃうわ!】
ヒー【ちょっと待って。話せば分かる事も多いから、ただ通過させてもらえないか交渉してみたら・・・】
シル【え?でもこの先のリッケンベートはこの辺りのモンスターに破壊されちゃったって言うでしょ?危険なモンスターじゃん】
ヒー【・・・一応、試してみよう。ダメだった時は、倒すよ】
”倒す”とは言ったけど、少しだけ言いよどむような感じがあった。
あたしを置いてヒースが森の中から身を出して、アグリードワーフの集落に近づいて行った。
罠は一切ないから大丈夫。注意するのは集団のアグリードワーフだけ。
近づいてくるヒースに気付いた連中がじっと睨みつけて緊張した様子を見せ始めた。
ヒースは両手を上に挙げて敵意がない事をアピールしてる。あ、危なくない?
ヒー【こんにちは、あなた達に危害を加えるつもりはないから、このまま通してもらえませんか?】
聞く耳を持たないと言わんばかりに武装したアグリードワーフ達が飛び出してきた!
ちょっと! どこが話の分かる相手なのよ!
シル【ヒース、離れて!】
ライトニングチェーン!
あたしの右手から一筋の雷が走る。
先頭のアグリードワーフに命中するとそこから次のドワーフに向かって雷が走る。
鎖で繋がるかのように群れ全体にダメージを与える。手付けに最適な魔法だ。
あたしの魔法の射程範囲内に居る奴らは全員撃たれて黒こげになった。ざっと二十体。
よし! 一発でいける! さすがマインドが高くなるとチムメンから白い目で見られるようになる悪名高い魔法の一つ!
だけどどんどん出てくる。一体どれだけ居るんだ?!
困った事に黒こげになったヤツにも当たり判定があるようで、それが避雷針の働きをしてライトニングチェーンが上手く全体に広がらない。微妙にピンチ!
貫通力のある氷柱を飛ばすアイシクルシュートや、横に広い範囲を切り裂くエアスラッシャーに切り替えた。これならオートロックオン関係ないから扱いやすい!
ヒースも苦渋の色を浮かべて、魔法の範囲の外から攻撃してくるアグリードワーフを迎撃していった。
あたし達の実力からしたら全然大したものじゃないけれど、確かに数が半端じゃない。
前線を倒しても奥のログハウスの中から武装を整えたヤツがどんどん出てくる。キリがない!
もしかしてログハウス壊さないと無限に出てくるって事はないよな? 一応試してみよう。
ファイヤーボールとか火属性だと森林火災になりそうなので、クリスタルドラゴンの鱗にも傷をつけたチャージ・ロックストライクを撃つ。
砕け散って崩れたログハウスの丸太を押し退けて、怒りの形相のアグリードワーフが出てきた。武装は中途半端だ。どうやらログハウスは装備を整える場所なだけで出現と関係ないっぽい。
とにかくわらわらと現れる敵を、力の続く限りばったばったと倒し続けた。
やっと殲滅。泉の周りは死屍累々。ログハウスから出てくるのもいない。
戦闘途中で三回レベルがアップした。確かにブーストモンスターは経験値が美味い。
だけど代わりに完全にこの集落は死滅した。
これまでもたくさんモンスターを倒してきたけど、絶滅させたのは初めてだ。後味はあまりよくない。
ヒー【何で・・・臆病な魔物だったのに、何でこんな風に・・・】
剣を鞘に収めたヒースが悲しそうな声で呟く。
ヒースの後ろからそっと、腰のあたりに腕を回して抱きしめた。
大丈夫。ヒースは悪くない。言葉でいうよりもきっとこの方が伝わるはず。
シル【”邪眼王”のせいで理性を失ってるんだよ。倒さないとあたし達が危なかったよ】
理性を失ってる? あたしが言った事だけど、違うと思う。
明らかにあたし達を見てから態度が変わった。
泉のほとりで生活していたアグリードワーフは、見た目はいかつくて怖かったけどとても穏やかに見えた。
それが明確な意志をもってあたし達に襲いかかってきたんだ。逃げる事もせず。
人間を殺せ、ただその一点に支配されて。
これが”邪眼王”の仕業? 大人しいモンスターですら変えてしまう強烈な悪意。
このルファラには何があったと言うんだろう。
現在不定期連載中です。ご迷惑おかけしております・・・




