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新世界の神に俺はなる!  作者: レイモンド
第一部
8/102

転生!物理最強勇者誕生! その8

 魔族の軍団の数はおびただしかった。

 見るもの見るものすべてが醜く、おぞましい。

 ゲームで見るゴブリン、オークと言った亜人をはじめ、巨大な芋虫やワーム、ゲジゲジのような蟲類、足の生えた魚類、体表が腐り落ちそうにでろでろとした何なのか分からない存在もいた。


 そう言ったもので群れをなしているのは大抵がランクC程度で多少戦闘に心得がある者であれば問題ない。

 しかし巨大になったり、通常の物と色調が異なり、群れを作らず行動しているものはロードと呼ばれランクが一つ、または二つ上がり危険度が増す。


 しかし俺にとってはそんな程度、何も変わっていないのと同じだ。

 言ってみればハイハイをしている赤ん坊か、つかまり立ちができる赤ん坊か位の違いでしかない。


「ギシュっ、ギシュルルルフルルぅフっ」

「で、出だ! にんげんのひがるきしだああっ!」


 俺の姿を見て尻尾を巻いて逃げていく。


「ひ、ひいいいいいいいい! お、お、お、おたすけ!」


 俺に背を向けて逃げていたはずなのにいつの間にか俺に向かって走ってきている事に気付いた魔物共は、無様な、聞くにたえない悲鳴をあげた。

 閃光系魔法を極めた俺から逃れられると思うな!


「セイントレイン!」


 上空から光の矢が無数に降り注ぐ。

 魔物共の悲鳴が響き渡ったが、静かになるのはそれほど時間はかからなかった。



 俺は魔族が支配する領域、「魔界」に向かっている。その道すがらに蔓延はびこる魔物の軍団をことごとく殲滅していった。

 一人で軍団を壊滅させていく俺の噂は、俺が魔界に向かっている速度よりも速く広がり、いつしか「光の騎士」、「光の勇者」と呼ばれていた。


 人類の希望の光。魔を討ち払う光。


 世界が求める救世主に、俺はなってみせる!



「ここから先に通すわけにはいかんな。死んでもらおう」


 無数のトゲを付けた漆黒の鎧を纏った大柄な魔族が立ちはだかった。


 豹のようにしなやかで長い尾と、身の丈程もあろうかと言う大剣。


 こいつは!

 騎士団の一個師団と十人の王家直属近衛騎士をまとめて壊滅させた上級魔族の特徴と一致している!


「魔王様より拝領した魔族の軍団にこれ以上犠牲を出させるわけにはいかん。魔戦将軍ワグホーンが相手になろう」


 この魔族から放たれる闘気が桁違いだ。ランクはS以上で間違いない。


「シィっ!!」


 尾まで覆った鎧が空気を鋭く切り裂いて俺に迫る。

 すさまじい速度だった。

 竜神剛斬剣フィグムンドを抜くことができず、鞘のまま受け止めるしかなった。

 ゴキャッと砕ける音がしたが、その瞬間にワグホーンと名乗った魔族が素早く飛び退き距離をとった。


「ふむ…… たいした業物だ」


 尾に纏った鎧に深く新しい切れ込みが入っていた。

 砕けた鞘の隙間からフィグムンドの刃が覗き見えている。


 ただ当たっただけだと言うのにこの切れ味。

 俺の愛剣の威力もさることながら、その刃に触れ切り飛ばされる前に尾を引き戻したこの魔族の実力は確かだ。

 単純に力に任せて攻めるだけの相手ならすでに尾を無くす大怪我を負っていただろう。


 これは今までに見た相手のなかで間違いなく最強。

 ランクは間違いなくSSだ。


「人間の騎士よ、貴様の名を聞いておこう」

「俺の名はヒューイ。魔王を倒し、人々に光を届ける男だ」

「ふん、くだらんヒロイズムは命を縮めるぞ。この俺と刃を交えればそれは避けられんがな。行くぞ!」


 身の丈程もある剣を軽々と振り回す!

 まるで軟らかくなったバターでも切るかのように次々と大岩を斬り、しなやかで素早い尾が鞭のように襲いかかってくる。

 しかし戦闘態勢に入っている俺に見切れない程ではなかった。


「やるな! 以前戦った騎士達の中にはこれほどの者はいなかったぞ! だが!!」


 攻撃の手を全く休めることなく魔法を放ってきた!


「スパイラルウィンド!」


 俺を中心につむじ風が発生する。それと同時にワグホーンは飛び退いた。


「ふはははは! 突風の壁だ! 逃げ場はない! そして!」


 ヤツの台詞の後、バシュッと何か発射される音がした。


「このまま俺の剣の錆にしてくれよう!」


 風の向こうにうっすらと見えていたヤツの影が無くなった。

 剣の錆に、と言うことは斬撃を仕掛けてくるだろう。しかし周りは壁で囲まれている。

 ならば狙っているのは!

 バッと上を見る。

 竜巻の中心からは空が見える。その空に一点闇の塊が一直線に迫っていた。

 俺は高速移動でその場を離れ、直撃をかわした。

 俺は今では詠唱や溜めなしに高速移動を意のままに使えるようになっている。そう簡単に捉えられるはずがない。


「ほう! よく知っているな! だが!」


 少しずつ竜巻が小さくなり始めた。


「このように逃げ場が無くなっていけばどうかな?」


 甲冑に隠されているヤツの表情は分からないが、おそらく勝利を疑っていないだろう。

……ヤツの鎧の様子が変わっている。頭部以外のトゲがなくなってつるりとしている


「気がついたか? 逃げ場がないと言う本当の意味はこれだ!」


 そばに転がっていた、さっきヤツが切り裂いた岩の一部を尾で弾き飛ばした。

 風の壁に飲み込まれると同時に粉々になり、塵も残さず消えていった。


「俺の一部をなかに解き放った。言わば風のミキサーよ! 全方位からの防御不能の我が一撃を受けるがいい!」


 そう言い放ち、再び跳躍して竜巻の中から出ていった。

 少しずつ壁が迫ってくる。

 ヤツの姿は見えない。

 いつどのタイミングで仕掛けてくるか分からない。

 俺はフィグムンドを壁に向けて水平に構えた。


「ライトキャノン!」


 激しい閃光とともに竜巻に穴が開いたが、一瞬で塞がった。


「無駄だ無駄だ。俺の魔力が尽きぬ限り消えはせん。俺が居眠りしたところでお前を飲み込む結末に変わりはない!」


 その間も渦は小さくなっていく。

 竜巻を消せないのなら俺は一瞬に賭ける。


「ははははは!」


 ヤツの高笑いが聞こえた。

 渦の直径はすでに二メートルない。間違いなく来る!

 上空からのヤツの攻撃を避ければミキサーに飛び込むことになる。もし受け止めたとしても足を止められた状態では第二、第三撃を回避できない。


 それなら取る道は一つ!


「ライトキャノン!」


 再度壁に向かって魔法を撃ち、直後壁に向かって高速移動した!

 頭を守り、光が竜巻を貫いた穴に飛び込む。飛び込んだところからたちどころに塞がっていく。

 風に取り込まれたヤツの鎧の一部が襲いかかってきた! だが俺の纏う鎧がそれを弾き返す。おかげでかすり傷程度で突破できた。


 後ろから爆発が起こったかのような衝撃が襲った。

 竜巻はかき消え、クレーターが出来ている。その中心には大剣が突き立っていた。

 甲冑に隠されうかがい知れないが、それでも驚愕の色は隠せていない。


 ヤツが攻撃に転じる前に高速移動で接近し斬りつけた。アースドラゴンを思わせる強固な鎧はなかなか破壊できない。

 エンチャントスラッシュでも少しずつしか剥がせそうになかった。


 俺は高速移動を止めない。

 そのまま攻撃を続けた。大技ではかわされる。素早く隙なく攻めこまなくてはいけない。

 騎士必殺のエンチャントスラッシュは一撃ごとに魔法をかけ直さなくてはいけないが、今の俺は一度かければ威力にもよるが最高十五回まで連続攻撃することが出来る。

 俺の力が上がっているだけでなく、効率よく魔法を纏うことが出来るフィグムンドのおかげだ。

 ヤツの鎧は少しずつ剥がされ、その奥の生身が見えてきた。

 その体はあまり人間と変わりない。

 筋肉で引き締まった、鍛え抜かれた体だ。

 ただし首筋、肘から手にかけて、足の外側、脇腹を鱗が覆い、二の腕、足の内側、尾は猫のような毛で包まれていた。


「俺の姿を…… 魔王様以外の者が見る事は、許さん!」


 これまで以上の速度とパワーで飛びかかってきた!

 岩を砕き、地面を抉り、手足を振るのと同時に烈風が襲ってきた。

 高速移動を止めたらすぐさまヤツの餌食になってしまう。

 常に足を動かし攻撃の手を休めない。

 その場に留まることはないが、ヤツの猛攻が時々俺に命中する。だがアースドラゴンの鎧が遮った。

 しかしこちらも相手の攻撃の波が激しすぎるためどうしても有効にダメージを与えられない。



「ハァ、ハァ…… おのれ…… 」


 鎧を削られた時にすでに大きくダメージを負っているせいか、少しずつ技にキレが無くなり大振りになっていく。

 その隙を見逃すほど俺も甘くない!

 鉄拳をかわし、背中から心臓めがけてフィグムンドを突き立てた。

 ザシュッと音を立て、胸骨を突き抜け血を吸った切っ先がヤツの体の向こうに見える。


「魔王様、申し訳…… ありません……」


……最後の最後まで忠心を忘れなかったこいつは、魔族だが本物の騎士だった。

 もしも敵同士でなければ心強い味方になっていたはずだ。


 このような争いを生むことになった魔王と言う存在を俺は許さない。







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