爆誕!ステ極振り魔法少女いっきまーすミ☆ その22
一瞬、初対面のあたしを警戒するそぶりを見せた帯剣した男性。
剣士系で一人旅してきたんなら、こんな丸腰のかよわい女子がいきなり攻撃するわけないって分かってるはず。単純に誰こいつ、って反応だろう。
あたしの顔は見ずに、店長さんに話しかけた。
ヒー【店長、こんなところで何を?ヒールエールが欲しいんだけど、まだあります?】
グー【ああ、このお嬢さんが良い品を仕入れてくれてね。ヒールエールだったな、用意してくるよ。ヒース、すまんが運ぶのを手伝ってくれないか?あ、それとシルフィーさん、お代を渡したいから店内で待っててくれるかい?】
そう言って店長はヒースと呼んだ好青年とヴォルガゼルの角の入ったBOXを運んで行って、一人店の奥へと消えていった。
うーん、これは巧く誘導されたか? 若干人見知りっぽいこのヒースって言う男……の子?とあたしを店内で二人っきりにして、何かしらコミュニケーションさせるつもりだ。元々そうさせたそうだったからなぁ。
今の状況、後は若い二人に……ってヤツに近い。完璧お見合い状態だよ!
ヒースは第一印象通り全然喋らない。でも無口で落ち着いているって言うより、そわそわしてる風。
女の子慣れしてないのかな? 見た感じ子供の頃からすごく可愛かっただろうから、年上年下関係なしにモテてそうなんだけどな。
あたしは至極普通の、緊張してない表情を保つ。時々ヒースの方に目線をやったりして、貴方のこと別に警戒してませんよ、をアピールし続ける。
……
……いや、もうホント全然しゃべんないな。
シル【あの、ヒースさん?】
ヒー【あ、は、はい!そ、その!良い天気ですね!】
シル【え、ああ、そうですね。あのぅ、緊張しすぎじゃないです?】
ヒー【そんな事はな、ないと・・・思いますけど・・・】
わ、これかわいい!
見た感じ十代後半の、中身まだ初々しい男の子。それが赤くなってこっち見れないとか!
これまで自分より年下のアイドルとかに興味全然なかったけど、今になってちょっと分かった気がする!!
この反応は一周回ってすごく新鮮!
ちょっとこの子とパーティー組んでみたい気がむくむくと湧いてきた。
ほっといてもこの子は黙ったまんまだろう。そんで店長さんが戻ってきてさよならだ。勿体ない。
それなら色々聞いてみよう。
シル【ヒースさん一人旅長いんですか?】
ヒー【え、ええ。もう五年になります】
シル【そーなんですねぇ。あれ、今おいくつなんです?】
ヒー【今年で十七になったところです】
シル【えっ 十二歳の時から旅を?】
ヒー【はい】
シル【剣が得意なんですね?】
ヒー【はい】
シル【あたしは魔法が得意なんです。でも本格的に一人旅するのって初めてで】
ヒー【そうなんですか】
こっちの質問への答えしかねえええええ!!!
ヒース緊張しすぎだよ。もうちょっと会話ふくらまそうよ!
このイベント、フラグ立てづらい! あ、店長さん戻ってきた。
グー【ヒース、ありがとう。いくつ入り用だ?】
ヒー【あっ それじゃ十個頼みます】
なんだそのホッとした表情は。あたし怖がられてたの? 話しかけないでって?
グー【それじゃ500メルドだな。一本サービスしとくよ。手伝ってくれた礼さ】
ヒースはお金を支払って言葉少なに店を後にした。しかもこっちをできるだけ見ないように。
えー…… にゃんかショック……
わずかに落ち込むあたしを気遣ってか、店長さんが話しかけてきた。
グー【なあ、シルフィーさん。まだしばらくフミトにいるんだろう?】
シル【ええ。まだ行き先も決めてないですしー】
グー【それじゃあちょこちょこ俺の店に来てくれないか?アンタはなかなか見どころがありそうだから、色々頼みたいんだ。っと、その前に】
店長さんはもう一度奥に行って、大きな袋を持って戻ってきた。
あたしが売った角の代金だ。金貨一枚100メルド。全部で五十枚。あれ? 足りないよ?
グー【とりあえず今日即金で渡せるのはそれだけなんだ。明日残りを渡すから、昼飯食べた後にでも寄ってくれ。それと依頼があったらお願いするよ】
はーい。それじゃあお宿を探すとしましょうか。
金貨袋、結構重いっす。アイテムパックに収納。これなら盗られる心配も無し。残金合計9300メルド。
お金の余裕はかなりあるから、宿賃はケチらずいきましょか。
この町にはギルドが無いから、仕事依頼は個人契約かトルキネの町のように役場でもらうしかない。役場で仕事受注するなんてルファラが初めてだよ。
役場には町に到着して最初に行ってきたけど、今のところ困ってる感じはなさそうだったから依頼が舞い込む期待薄。
それにトルキネでは緊急でキメラタイガー討伐を受けたけど、お役所だけあって本来は色々手続きを踏まないとダメって話だった。色んなルールを守ったり、許可をもらってやる方が当然もめ事は少ないしそのための手続きだけど、個人契約の方が手っ取り早い。
最初のご縁ってのもあるし、やっぱり店長さんのお世話になろう。
次の日、言われたとおりお昼時を少し回ったあたりでお店を尋ねた。
シル【あれ?ヒースさん?】
ヒー【あ、ああ。シルフィー、さん。こんにちは】
お店に行ったらヒースが居た。
ん、もしかして店長こうなるって分かって頼んだか?
現在不定期連載中です。
ご容赦ください・・・