爆誕!ステ極振り魔法少女いっきまーすミ☆ その19
キメラタイガーをやっつけた時の衝撃波で受けたダメージで目の前が真っ赤になっちゃったあたし。だるくてなかなか体を起こせない。
ち、ちょっとマジで勘弁して……。幸い死亡こそしなかったものの、こんな簡単に戦闘不能になってたら話にならないよ。回復魔法キュアールも使えない。マジメにHPエイドが命綱だ。
HPエイド(飲みかけ)を飲むしかないと思ったんだけど、急にすっきりして元通りになった。
同時にあたしの体の周りにキラキラした光の粒が舞って、消えていく。
あ! レベルアップしたのか! LV100からLV101へ!
やっぱりボスは経験値が美味い!
ステータスを確認してみる。
攻撃力 198→202
精神力 7158→7408
命中力 160→162
防御力 133→139
体力 50→51
HP 248→255
マインド以外の上昇、マジでスズメの涙。レベルがあと49アップしたところでどれも知れてる。
こんなのでプレイしてたんだ…… どんだけマゾいんだ……
ってか、前LV101の時マインドこんなに高かったっけ。レベルキャップのミケの攻撃力並だ。
あ、スキルツリー補正が効いてるのか。よかったー。もともとプレイしてた時よりもアドバンテージになってる。これなら他のミッションが難易度ULTでもかなり余裕を持って戦えるぞ。
アル【シルフィーさん、大丈夫か?!】
ツァ【シルフィーさーん!】
お、安全対策課の人達だ。
アル【おお・・・本当に倒してしまうとは・・・】
ツァ【こんな大物・・・近くで見るのは初めてです】
どんなもんだっ 宣言通り倒しましたぞ!
レベルが戻されてるから少し手間取っちゃったけど。
本来のLV150のマインドカンスト状態なら圧勝だったね!
やんややんやと持てはやされて、意気揚々と町へ凱旋。
キメラタイガーの亡骸は明日以降に埋葬などの処理をするそうだ。
疲れたから宿に戻りましょー。
そしてあたしは町を救ったヒーロー(ヒロインじゃないの……?)として最高の待遇をいただきました。宿屋の最上級のお部屋に泊まらせてもらって、明日以降はお食事も上等の物を出してもらえるらしい!
やったね!
豪華ではないけど大きめできれいな部屋に通してもらって、ベッドの上にダイブしてぼふぼふ跳ねる。
ベッド超久しぶりかも!
VRゲーム機で寝る生活が当たり前だったけど、広めのマットレスで転がれるのもたまにはいいなあ。
それにしてもダメ受けたの二回だったけど、二回ともほぼ瀕死。
HPゼロ=死亡なんだからマジで死活問題。
まあ、二回目はHP全快にしてない状態で煽られて転倒したからって事なんだろうけど、余りにも危うい。
もしかして装備が初期装備のせいかな?
レベルアップでもマインド以外の成長が期待薄な以上、装備品のボーナスで強化をはからないとまたすぐ目の前真っ赤になる。最悪転んだだけで死だ。なんとか良品でまとめていかないとなぁ……。
ってそんな事を考えてたらトイレに行きたくなってきた。
生理現象完全再現……?
用を足すためにお手洗いに急ぐ。
……ちゃんと足せた。っつーか、マジ細部まで完全再現されてる。
ルファラに来る前は、シルフィーの下着を取る事はできなかった。
多分年齢制限とか倫理的ないろんな問題でメーカーさんが規制をかけてたんだろう。
でも全部キャストオフ可能になってる。で、あれやこれやもちゃんと付いてる。
葉っぱで皮膚を切れば出血もした。どう言う事?
……いや、もうVRとか思わない方が良い。どう言う訳か分からないけど、ルファラの物はあたし(シルフィー)を含めて全部実体だ。
なら余計、細心の注意を払ってプレイを続けていかないと。ちょっとしたことが本当に命取りだ。
クリアするまではこのまま生活しないといけないんだし、これから少しずつ対策を立てて確実な攻略を目指していこう。
光る石の魔法のランプのシェードを下す。とりあえず、おやすみなさーい。
次の日、朝早くに自然と目が覚めた。
うーん、気持ちの良い朝だ。
……って言うか夢じゃなかった。ルファラのままだ。体はどう見ても少女のまま。
いちお確認しておくか……。
あたしが泊まってる部屋の化粧台の前に行く。
鏡に映ってるのは金髪翠眼のかわいい女の子。
やーん、かわいいっ あたしかわいいっ
両手をほっぺに当ててくるくる回る。ちゃんと鏡に映った女の子もくるくる回る。
はい! ついにあたしは魔法少女になりました!!
あたしが置かれた現状はあたしの理解の範疇を大きく越えておりますが、せっかくなのでこのすてきな状況を最高に楽しませていただく事にします!
町役場が開いたら安全対策課に改めて来てほしいって言われてるから、朝ごはんをいただいたら向かってみよう。
宿が用意してくれた美味しい朝ごはんを食べて身支度を整え、宿のご主人に時間を聞いて町役場に出かける。
町役場に行ったら、安全対策課の人達が町長さんから話があるとの事で役場の応接室に通された。
ちょっと待ってると五十代後半って感じのするちょび髭を生やしたおじさんが入ってきた。多分この人が町長さんだ。
あたしは反射的に椅子から腰を上げてお辞儀して、おじさんがあたしの向かいに座るのを待った。
……ビジネスマナーは一度身に着くと抜けないんだなぁ、とホントに思う。
コジ【この度は本当にありがとうございます。私町長のコジロと申します。もともと魔物魔族の脅威が少なかったこの地域には常駐するハンターや派遣騎士団もおらず、キメラタイガーのつがいはこの町の頭痛の種になっておりました・・・。まさか貴女のような礼節もある可憐なお嬢さんが一晩にしてたった一人で倒してしまうとは、町中誰一人として思いもしなかった事でしょう。この町は主要な産業と言っても農作と織物くらいしかありませんから、南東一帯の農地を諦めなくてはいけなかったこの三年間は本当に財政も苦しく――――】
ちょ、町長の話ながっ! 苦労してきたのは分かるけど、あたしその御力になろうと思ってやったわけじゃないから。ホント通りすがりで成り行き上やっつけただけだし、気にしなくても……って言えたらどんだけ楽か。
くそう、頷きながら結局全部のお話を聞く事になった。完全に職業病だ。
あたしに関係するところを要約するとキメラタイガーを倒した報酬をいただけるって!
その額8000メルド! お宿の代金が一泊400メルドって言ってたから、結構だよね!
しかも呉服屋さんで旦那タイガーの丈夫な革を使ったアイテムを作って、あたしにくれるって!
やったー!
完成するまで数日かかるから、それまでの間は町に滞在して行く事にしよう。
完全に費用を負担してもらうのは申し訳ないから、お仕事の手伝いをしていこう。
この世界の風習や環境に慣れないといけないし。
レベル上げのためにもフリーで狩りに出かけるってのもあり。
何か荒事が起きそうだったら武力介入してもいいね! モンスターの襲撃だったら任せてください!