爆誕!ステ極振り魔法少女いっきまーすミ☆ その13
気が付けば光の粒があたしの周りを飛んでる。
それが体を包んで、一気にあたしを運んで行った。
なんかぼーっとして、何があったのかよく分からない。
確か異常があるとかなんとかでPFOU NXを強制終了されて、仕方なしに立ち上がろうとしたら気持ち悪くなって倒れちゃったんだっけ?
それから一体どうなったんだろ。
きらきらと輝いている光の粒子がすごくきれい。
ログインする時とそっくりだ。あ、ひょっとして再起動してまたログインしてるのかな。
なんだ。やっぱり大した事なかったんじゃん。
だんだん遠くの方に青い星が見えてきた。
あ、ムゥトかな。
ヨメイは緑が強いし、アクースは砂漠っぽい。ムゥトとラオルグはよく似てるけど、月が二個あるのがラオルグなんだよね。だからあれはムゥトだな。
わ、わ。全然止まる様子ない。すっごい勢いで大気圏突入!
ちょっと怖い!! うわわわわわあああ!
思わず目を閉じて身体を丸め込んだ姿勢を取っていた。
……そのままじーっとしてたけど、特に強い衝撃があるわけでもなく時間だけが過ぎていった。
おそるおそる目を開けてみると、草原の上でしゃがみこんだ姿勢を取っていた。
な、何だ。何事もなく到着したじゃん。よかったー……。
立ち上がって伸びをしたり首を回したりして体をほぐす。
いやー、それにしてもここはムゥトで良いのかな。こんなフィールドあったような気がするけど、どの辺だ? さくさくと音を立てながら背の高い草をかき分けて進んでいく。
「痛っ! え、痛い?」
葉っぱで足をちょっと切った。血もうっすら滲んでいる。
えっ ナニコレ! VRでここまで再現してあったっけ?
改めてあたしは自分の体を確認してみる。
服…… シルフィーに着せてた初期の服だよね?
手足…… 細い。でも大人のって感じじゃない。
胸…… 明らかにちいさくなってる。体の線全体が細くなってるぞ。
髪は…… 長い金髪だ。
え、じゃあこれってやっぱりシルフィーの体?
シルフィーなのに、って言うかPFOU NXなのに完全に現実と変わらない状態になってるの?
どうなってるのか訳が分からない。
と、とりあえず町へ行かないと。
草をかき分けかき分け進んでいくと、一本の道に出た。
道があるって事はこれに沿って進んで行けばどこかに出るって事だよね。まずは行ってみるしかないか。
進み始めたあたしの目の前に、半透明の球体が飛び出した。
うわっ ……iって書かれてる。これってインフォメーションジェム? あ、なーんだ。やっぱりPFOUか。とりあえず触ってみる。
――惑星ルファラにようこそ。ここは特別ステージです――
え、ルファラ?! ムゥトじゃなくて?
最後にZF倒した後出てきたのってやっぱり見間違いとかじゃなかったんだ! やったね!
――このステージはチャレンジステージです。五感はすべて現実の物として再現されています――
ふむ。痛いのは勘弁だけど、より新鮮なプレイができるかな。楽しみ楽しみ。
――ルファラはゼローム・ファガスによって歪められた時空の先に現れた世界です。ゼローム・ファガスの影響で魔物が凶暴化しています。その脅威にさらされている人々の力になってください――
うおおおおお! すごく勇者っぽい!
少年の心をくすぐるわ! あたしゃ三十路前の女だけど!
――この世界では随時イベントが生じます。町のギルドで請け負ったミッションのほかに緊急ミッションが発生した時などは、このようにインフォメーションジェムが出ますので必ず触れて確認しましょう――
ふむぅ。リアルタイムで情勢が変化するのか。面白そうだな。
――なおクリアまでログアウトする事は出来ません――
マジか! クリア条件ってなんだ?
――これまでと異なり、クリアまでこの世界で生活をしなくてはいけませんので注意してください――
えっ 生活するって、トイレ、食事、睡眠も?
それってVR? え?
――またこのステージはチャレンジモードです。レベルは100からのスタートです。スキルツリーの変更はありませんが、追加もできません――
え?! マジ?! HPまた下がってんの?!
でもスキルツリーはそのままってのは救いかぁ。HP上げときゃ良かったなぁ。
――ルファラではミッション難易度の設定、表示はありません。請け負うミッションによってはULTモードと同等のケースがありますので注意してください――
うげっ でもまあLV100の時には確かマインド6000くらいあったから、いきなり高難度ミッションに当たっても戦えない事はないよな。
――レベルアップすると、これまで割り振ってきた通りにステータスが上昇します。積極的にレベル上げをして、本来の力を取り戻しましょう――
はーい! 了解です!
よーし、また頑張るぞ! レベル上げならお手のもんよ!
――このルファラでは実際にダメージを受けます。HPがゼロになると、現実に死亡を意味しますので細心の注意を払ってプレイしてください――
は?
――以上に注意して、闇に閉ざされつつあるルファラに平和をもたらしましょう。~この世界の運営より~――
いや待て、待て待て待て待て!!
顔面蒼白で呼び止めたけど、インフォメーションジェムは消滅しちゃった。
マジか……? いや、何言ってんの……?
ただのゲームのはずなのに、命のやり取りとかマジ何言っちゃってんの……?
現実なのか空想なのか。
その境界があいまいなまま、世界を救うためのあたしの冒険が始まった。