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新世界の神に俺はなる!  作者: レイモンド
第三部
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憑依!S系教育男子出陣! その30

 魔王と比肩すると言われ、その力の恐ろしさから全世界で忌み嫌われた呪霊王。

 その容貌も相まって、俺の仲間に加わった後その姿を初めて目にした人間達はその恐怖をさらに深めた。


 生きる恐怖の代名詞、ワンダーレグス。


 それがゆらりとたなびかせた黒衣の中から煙が立ち上り、塊となって魔王に襲いかかった。

 それはかなり濃密で、はっきりと髑髏どくろのような形を持っていた。

 魔王はその背中の対の翼で空に飛び上がるのと同時に、髑髏に向けて強く風を起こした。

 しかしそんな風でかき消されたり押し戻されるほど貧弱な物では無い。

 多少外層が歪みはしたが、その程度のダメージを無視して魔王に向かって進んでいく。


 魔王も冷静さを失う事無く、左手に作り出した火球を大きく開いた煙の髑髏の口に向けて放り投げた。

 高熱の火球を飲み込んだ髑髏は内部から一気に蒸発して霧散し、火球はそのままワンダーレグスに向かって行く。

 いつの間にかワンダーレグスの足元に作り出された毒沼から巨大な目の無いワームのような物が大口を開けて飛び出して、火球を取り込み自身を蒸発させるのと同時に消火してしまった。


 両者とも魔法を放つ為に必要な魔力を集中する隙が一切なく、それでいてほぼノーモーションで必殺の威力を持たせた魔法を撃ち込んでいる。

 ランクSSと言うのは手に負えない魔物魔族を指すが、その争いを目の当たりにするとこれは本当に災害としか言えない。

 

「懐かしいわい。過去何度かお主が儂を殺しにやって来た時を思い出すのう」

「何だ? 昔話に花を咲かせるとは随分と余裕ではないか」

「クカカカカッ 小娘じゃった時からお主は真っ直ぐじゃったのう。眩しすぎて見ておれんかったわ」

「ふっ 言うな。我もまだ力に溺れていた頃の話だ。我はお前を本気で殺そうと向かったのに、お前はすでに戦闘の意志は無かったな。気を削がれたのはこっちの方だ」

「丁度隠遁を決めた時に来たお主が悪いわ。何もせぬと誓った矢先に儚く散らしてしまいそうで怖くてなぁ」

「何だ? 呪霊王ともあろうものが随分と繊細な物言いだな」

「クカカカカッ 儂とて魔界の住人よ。魔王の座を狙いはしたが、次世代の光を消す事を良しとはせんわ。それにお主は見込んだ通り、更なる恐るべき力を身に付け魔王となった。どうせなら熟した果実を貪りたくなるものよ!」

「止めておけ。その腹の中から食い破られたくなければな」


 会話の間も両者は魔法の撃ち合いを止めていない。

 怨嗟の響きとともに数多の亡霊をかたどるもやが周囲に広がり、それを封じ込めるように風が壁を作る。風の壁が細くなって竜巻となり、亡霊を引き千切り散らすと同時に雷鳴が轟いて稲妻が落ちた。

 古木を思わせる者の周囲を飛ぶ八個の眼球からバリアが発生して稲妻を打ち消すと、足元の毒沼から大蛇が何匹も現れて空に立つ者にその牙を向ける。

 触れただけですべてを腐らせるその大蛇を、氷で作り上げた巨大な斧を右手一本で振り回して叩き切った。斧の刃が触れたところから瞬時に凍りつき、毒液滴る蛇は氷漬けとなって地面に落ちて粉々に砕け散った。

 魔王が氷斧を大地に向かって投げつける。呪霊王の足元に広がる毒沼に落ちると一瞬で結氷し、それ以上毒が魔界の大地を侵食する事は無くなった。


「死期が近いと言っていた割に力は衰えていないな。だが逆に、昔と変わっておらぬとも言える」

「クカカカカッ 言うのう! 儂は楽しいぞ。お主は以前よりもキレが増しておる」

「ふん、何年前の話だ。成体の今と比べても仕方なかろう」

「そうじゃな。お主は魔王として強く、美しく成長した。枯れるだけの儂とは比較できん。時の流れとは残酷な物よ」


 地面に降りて魔王が翼を畳む。

 両者とも攻撃の手を休め、互いの出方を窺っているようだ。


 この二人の戦いは本当に人間とは別次元の戦いだった。

 一発一発が人間の魔法使い数人がかりで時間をかけて仕込んだ単発仕様の戦術魔法と変わらぬ威力。

 二人の間で巻き起こる破壊の嵐。人の身ではとても介入できない。

 ワンダーレグスを支配する俺と言えど静観するしかない。


「では、お互い過去の遺恨をここらで晴らしておこうかの」

「望むところ。手心を加えるなよ」


 魔王が右手を正面に伸ばす。火、風、土、冷のすべての属性魔法が目の前に現れ、すべてが混じり合って光を放ち始めた。

 ワンダーレグスは両腕を開き、体の正面に魔力を集め始めた。体の周りに立ち込める深い紫色の煙が渦を巻いていく。


 これまで魔力を溜める様子を見せなかった二人が本気になった証拠だ。


「では、いくぞ?」

「ああ。撃ってこい」


 ワンダーレグスから撃たれた呪詛の塊が通った痕は、すべてが塵となっていく。

 かすかに残る放電と呪詛の残渣ざんさは、死霊の群れが行進するのを思わせた。


 これぞすべてに死をもたらす、圧倒的な呪霊王たる力!


 それは魔王が放った光球も例外ではなく、ぶつかり合った瞬間に圧縮されて弾け散った。

 いける! 最大の魔力を込めて撃ち出された魔法とともに魔王を飲み込み、戦いに幕を引け!


 しかしその直後、真っ黒な渦が光球の中から現れ、死の塊を飲み込みだした!


 さらに魔王もその渦の方へ飛び出し、高速で渦へと吸い込まれていく。

 飲み込まれる寸前で突如引力が途絶え、渦は圧縮限界を迎えて爆発が起きた。

 渦があった場所を通過する魔王を、爆発がさらに後押しする!



 弾丸のように撃ち出された魔王自身が、ワンダーレグスの体を枯木のごとく貫いた。



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