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新世界の神に俺はなる!  作者: レイモンド
第三部
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憑依!S系教育男子出陣! その26

 俺とエシャリが、本陣の中に建てられた物見やぐらの上から全体を見渡す。

 まさしく猪突猛進にて人間の軍の防御網を突き破り、本陣深くに切り込んできた獣人達がエイプビートルや人間の兵士、僧兵、騎士と刃を交えている。

 混戦の様相を呈している中、俺は積極的に視線を交わして侵入者達を支配し、戦力に変えていった。


 鋼の打ち鳴らされる混戦の中、特に目をひく者がいた。

 明らかに他の獣人達よりも体が大きく、エイプビートルが複数飛びかかってきても臆することなく切り払っていた。間違いなくこれが敵の将だ。

 勇猛果敢ないくさばたらきに見違えたが、あれは俺の初陣で敗走した白髪の巨大な猪頭の魔将軍だ。見覚えはあるが、名前は何と言ったか。

 以前は確か巨大なメイスを持っていたが、今回は斧と槍を合せたような武器を手にしている。確か地球ではハルバードと言ったか。武器はどの世界でも似通ってくるようだ。

 強固な鎧に破壊力に特化した武器。

 獰猛を露わにしたかのようなその存在は、並大抵の戦士ではいくらかかっても勝負にならないだろう。騎士でも討ち取るまでに多くの犠牲が必要だろう。これは俺達で仕留めなくてはならない。


「念のためだ。エシャリ、やれるか?」

「は、はい!」


 魔将軍が次の獲物に襲いかかろうとした時、目の前に土壁が現れた。突然視界を奪われ僅かに動揺したが、すぐにその壁を打ち壊して先に進む。


「すごいパワーだな。もう少しやってくれ」

「はい!」


 繰り返し土壁で行く手を塞いだが、そのすべてを苦も無く破壊していく。侵攻を阻む防御壁と思っての事だろう。

 十数枚に渡るエシャリの魔法壁を破壊したところで、俺は魔将軍の前に姿を現した。

 俺の顔を見た魔将軍は狂気に満ちた笑顔を浮かべ、俺を指さし叫んだ。


「ぬう、貴様! 儂に恥をかかせた人間だな! 会いたかったぞ!」

「ふん、俺はどうでも良いんだがな。悪いが今日がお前の命日だ」

「ほざけ! 貴様のようなひょろ長いだけの棒切れなんぞ物の数ではないわ!」


 頭を低くし、俺に向かって突進を仕掛けてくる。しかし俺に簡単に避けられただけでなく、大したスピードも出ていない。


「むうううっ?! 動きが鈍い、何だ、これは!」

「ここに来るまでに土壁があったろ。あれだよ。力任せのパワー馬鹿は簡単に罠にはまる。残念だったな」


 ヤツの着込んだ鎧にエシャリが作った土壁の一部がまとわりつき、関節部分に入り込んでいる。本来の動きはもうできない。


「貴様…… 人間風情が舐めた真似を! だが貴様ごときでは儂の体を傷つける事などできんわ!」

「ああ。だろうな。だから、今日は別の者に任せる事にするよ」


 魔将軍に背を向けてその場から立ち去る。

 俺の後ろにはいつの間にか、闇を塗りつけたかのような暗黒のローブを纏った者が立っていた。

 深く被ったフードを下し露わにしたその者の顔を見て、魔将軍の目は見開かれ、表情は恐怖に似た色で歪んでいった。


「ワ、ワンダーレグス?! 馬鹿な、何故呪霊王が!」


 絶叫とも言えるその声に、この戦いに参じていた者達の視線がこちらに集中した。


「人間共、貴様ら正気か?!」


 その姿から放たれる絶対的な畏怖。

 生者は死から逃れられないと言う真理。

 恐慌状態に陥った魔物の軍勢など物の数ではない。

 すでに俺の支配に置かれた元同志と戦っていた獣人も、不可避の運命をその身に現した呪霊王を前に、剣を捨てて逃げ出し始めていた。


「退くな、貴様ら! ここで食い止めねば魔界に再び滅びの波が押し寄せるぞ!」


 将軍の声に耳も貸さず、必死にこの場から逃げ去っていく。

 戦闘狂のエイプビートル達も俺が何故あのような命令を出したのか理解したようで、一切こちらに近づいて来ようとしない。


「おのれ、このような屈辱を一度ならず二度までも……! この儂は退かぬぞ!」


 降伏の意志を見せない敵将軍。その漢気は見事だが、勝負になるはずが無い。

 ランクSSの超上級魔族。それがこの呪霊王ワンダーレグス。こいつの敵は初めから、魔族の長たる魔王ただ一人。


「カカカッ 忠義者よのう。そこそこの年寄りのようじゃが、儂はお主の事など知らんな」

「過去の遺物、亡霊が! すでに時代は貴様を欲してはおらぬ!」

「かもしれぬなぁ。じゃが、儂にも今一度夢を見る権利があっても良くはないか?」

「だまれ! 思慮深き魔王様に放逐された理由を忘れたか! 貴様は我らにとって毒でしかない!」

「ならばこの毒ですべてを変えてくれるわい」


 だぶだぶと濁った液のような物が、宙に浮いたワンダーレグスの足元から滴っていく。じゅうじゅうと音を立てて地面が傷み始め、ワンダーレグスの周りが瞬く間に毒沼と化した。


「こ…… この悪魔がぁぁああ!」

「クカカカカッ! 魔族に悪魔? ならばお主は何だと言うんじゃ。儂は儂の体に流れる魔力を魔法に変えておるだけじゃ。ただ生きておるだけで罵られるとは、やはりこの世界は変えねばならんのう」


 ワンダーレグスがそのまま毒の沼にどぷりと沈む。するとそのその沼から濁った水柱が立ち昇り、形を変えていった。それはまるで大きな蛇。

 鎌首をもたげたそれが口を開き、目にも止まらぬ速度で白髪頭の猪に襲いかかって飲み込んだ。

 濁っているが、そのうわばみの中で白髪頭の猪がもがいているのがうっすらと見る。手にしたハルバードごと飲み込まれており、だんだんとそのハルバードがオレンジ色の光を出し始めている。

 突如蛇の体が輪切りにされ、地面に落ちた体の断面から、飲み込まれた魔将軍が這い出してきた。魔力を込めた一撃で飲み込んだ蛇を体内から破壊したのだろう。しかし脱出する事ができたが、無事ではなかった。

 体の表面から白い湯気を立て、両腕で何かを振り払うような仕草をしながらふらふらと歩き回っている。鎧が変色し、一部溶解していく。むき出しの頭部の被毛がみるみる溶け、皮膚がただれ、骨が見え始めていた。その範囲は時間とともに広がっていく。おそらく鎧の中も同じ事が起きているはずだ。


「ぐぉっ…… おぉぉぉおおおおおっ! おお…… お おぉ ぉ ……」

「ひ、ひぃぃいいいいいい!」


 とうとう魔将軍は膝を折り、うつ伏せに倒れた。生きながらにして腐り落ち、断末魔をあげて果てていく姿を見て、残っていた魔物、人間達は皆一様に悲鳴を上げていた。

 壮絶だ。すさまじい力だ。

 脅威であるはずのランクSなど取るに足らない、素晴らしい力!


 俺は確かに恐ろしい物を蘇らせたかもしれない。だが俺の力はそれを制御する事が出来る。

 見ろ、この圧倒的な暴力を!

 上級魔族と言えど赤子の手をひねるかのように容易く散っていく。

 これならば魔王を倒し、新しい世界を作ることが出来る!


「クカカカカカカッ! 畏れよ、ひかえよ! 魔界に呪霊王が帰ってきた! 新しい世界を貴様らに見せてやるためにのう!」


 崩れ落ちた毒蛇の中から再び姿を現したワンダーレグスが声を上げる。

 ああ、その通り。俺が世界を変えるために、お前の力が必要だ。

 



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