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新世界の神に俺はなる!  作者: レイモンド
第三部
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憑依!S系教育男子出陣! その24

 俺の能力を受け、見えない意識の鎖で縛り付けられたワンダーレグスがわずかに浮遊した状態で俺の傍らに控えている。


「ぬかったわ……。邪眼ではなく、貴様の肉体すべてが罠だとは……」


 これまでの魔物魔族と異なり、しぶしぶ俺に従っている感じだ。反抗的な生徒を担当した時の事を思い出す。

 こいつの方が俺よりも遥かに年上なのだが。

 こう言う手合いはなめられてはいけないが、高圧的態度も良くない事がある。対等な関係が必要だ。

 俺はヤツと正面から向き合って、どっかと腰を下して顔を見ながら話し始めた。


「俺はアンタを仲間にしようと思ってここに来たんだ。協力してくれるよな?」

「仲間? ふん、貴様、頭が悪いのか? 儂の事を知っておるならば絶対上がらん選択じゃぞ?」

「ああ、傍に在る物は死に絶える。俺も仲間になんてしたくない。だが、必要なカードだ。俺と来い」

「正直じゃのう。それに儂は年を取り過ぎた。最早朽ちゆくだけの身。どこでその時が来るかも知れん。闘争ばかりじゃった生の残りを静謐せいひつなこの森で過ごしておるのじゃ。断る」


 コイツ、制約が効かないのか?

 他の魔物、魔族と違って危険度が高すぎるため、制約は始めから強度を高くしてある。俺の命令は些細な事でも絶対聞くように。

 だと言うのに頑なに拒否する。制約の苦痛が作動していないのか?


 しかし違和感がある。

 制約がかかっていないのなら支配も出来ていないはず。

 であれば隙をみて俺を殺すか追い払う、または俺と対話せずに立ち去ってしまえば良い。

 しかし実際は、考えられる選択肢のいずれも実行していない。


 つまりワンダーレグスは今、俺の支配下にあり、制約による罰も発動しているにも関わらず命令に抗っているのだ。


 すさまじい精神力! 魔族を統べる魔王に次ぐ実力者と言うのは伊達ではない。

 だが命令に逆らう事が出来ると言う事は序列の上に立つ俺に対して攻撃する選択をできると言う事だ。俺の能力による支配で攻撃能力が失われる事はない。

 魔王に次ぐ実力者としてのプライドがあり、あれほど己の力に自信を持っているのだから、命令に背き反撃する事は十分に考えられる。しかしそれがない。

 できない状態にあると言うことか。

 つまり今、罰に耐えているが、攻撃にまで手を回せないと言う事に他ならない。


 桁違いの暴力ではあるがそうであれば暴発の可能性は低い。俺の能力は十分にセーフティーとして機能している。

 言わば俺以外のネットワークから切り離された核兵器のようなもの。


 このカードは今後の戦力に何としても欲しい!


 耐え難いはずの苦痛にすら耐えるのだから、罰でコイツを動かすことは出来ない。

 ならば報酬だ。これまでに叶わなかった望みへの渇欲をかきたて、それを叶えるサポートを俺がするのだ。

 長年、俺が想像もできないほどの歳月の間、艱難辛苦に耐えてきた永遠の次期魔王。

 それが望むものは、一つ。


「魔王を引きずり下ろし、その座につく千載一遇のチャンスだぞ? それを棒に振るのか?」

「ふん、出来るならとっくにやっておる。挙兵もした。謀略も働かせた。しかしいずれも実らなんだ」

「いや、俺ならできる。お前の可能性を、これまで以上に引き出してやる」

「カカッ! 何を言っておる。戯言を……」

「俺は魔物、魔族を残らず従える。現魔王の力の象徴、魔王軍をすべて奪ってやる。その頂にお前が座れ。そしてお前は俺に従え。そうすれば魔王のすべてをお前に差し出そう」

「ふん、貴様はやはり分かっておらん。あれは小娘の姿をしておるが、一人で全軍を押さえつけられる力を持っておる。その程度で破れるものか」

「ならばお前の力も跳ね上げてやる。俺の力は、魔族を従え魔族を強化する力。お前の野望を今度こそ、俺が叶えてやる!」


 文字通り古木のように枯れ切ったヤツの顔からは表情を読み取ることが難しい。

 熱意が通じているのかどうかも分からない。

 しかし全力で訴えるのみだ。

 来い! 暗黒の剣よ、敗北し呪われたままでいいのか? 闇を切り裂く俺の力になれ!


「だから、俺と共に魔王と戦え! ワンダーレグス!」


 立ち上がり、ヤツの顔に向けて右手を差し出す。

 制約に変更はない。力で支配しようとしていない俺を信用しろ!

 俺がお前に正面からぶつけた全力に応えてこい!


 わずかな時間、沈黙が流れた。


「クックックッ…… カーッカッカッカッカッカッ! 貴様、本当に人間の側か? 狂っておるのう!

 よかろう、よかろう! 儂の残り少ない命の火、貴様にやろう。最期に魔王の首を取り、グワイの巣への連れとしてくれよう! 華々しくて良いのう、カーッカッカッカッカッカッ!」


 干乾びきった口を大きく開いて高らかに響かせる笑い声は、これまで俯き見てこなかった、天の高み向けて投げつけているかのようだった。 


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