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新世界の神に俺はなる!  作者: レイモンド
第三部
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憑依!S系教育男子出陣! その19

 



 ルファラ教の最高責任者であるモーゼス教皇からの要請を受け、魔王軍との戦争に参入した。


 エシャリのとんでもない提案は保留とし、まずは常に魔王軍の侵攻に曝されている西南部の平定に乗り出した。


 この世界は一つの大陸と、その他大小の島状の陸地からなっている。

 魔界はこの巨大な大陸を人間界と二分して存在している。

 大雑把に大陸の北部および西部が魔界であり、他の部分が人間界だ。

 魔界との境界線の中央には霊峰ユリーミフが存在する世界の屋根と呼ばれる山脈が走っている。

 ここを越える事は魔族も困難なようで、人間との衝突は基本的に大陸北東部および西南部の平地で起こっていた。


 大陸においてはもともと人間界よりも魔界の方が領域が広い。

 その昔魔界と人間界が敵対していなかった頃、互いに厄介な隣人と言った関係にあったらしい。

 そのため魔界にも適応した人間の集落があったと言うが、現在確かな事は不明だ。おそらくこのような情勢になってしまった以上滅ぼされてしまっているだろう。


 過去にも何度か大陸の覇権を握らんとする魔王の野望の為に戦乱が起きた。

 一番被害が大きかったのが五百年前の魔王の時。

 その時はどこからともなく勇者が現れ、魔王を倒して姿を消したそうだ。

 それ以降は魔界と人間界は微妙な関係を保ちながらもかつてのように平和に時が過ぎていった。


 しかし今回の魔王はその平和を破り、再び大陸覇権を目論みだした。

 その魔王は過去最強と言われるほどの力を振るい、これまで二度勇者が討伐に赴いたが返り討ちにしてしまったという。そのうちの一人が”アミカ”だ。

 しかも最初に討伐に向かった歴代最強の光の騎士”ヒューイ”の妻および家族はさらわれ、消息は不明。おそらく命を賭して魔王を一時的に封印した事への報復のため処刑されてしまったのだろう。


 そんな冷酷な魔王に影響されているのか、魔物達は各地で残虐非道の限りを尽くし、人間界の被害は甚大になっている。

 一刻も早く魔王を倒し、勢力を広げる悪魔を消し去らなくてはいけない。これが人間側の大儀だ。


「ルファラ教は、人々の幸福な生活を守る為にあります。人々の幸福を妨げる、害する事はしてはならず、互いに助け合う事こそが善。そして信心深く祈りを捧げる者にはルファラ様からの恩恵が授けられ、自らだけでなく他者をも幸福に導く事ができるのです。

 人々の幸福を脅かす魔物、魔族は敵対者として忌み嫌われています。

 かつては魔界からの干渉が少なかったので警戒するに留まっていましたが、この度の戦乱でわかりました。魔物、魔族は徹底して滅ぼさなくてはなりません! それがこの聖戦の意義なのです!」


 教皇が熱弁を振っていたのを思い出した。

 コラン司教の時もそうだったが、ルファラ教徒は位階が上がるほどに熱血になるのだろうか。


「コウスケ様、大丈夫ですか?」


 苦笑を浮かべていた俺を見てエシャリが心配そうに尋ねてきた。


「いや、問題ない。エシャリの方こそ大丈夫か?」

「はい! まだまだ魔界まで距離がありますから平気です。それに私も強くなりましたし、魔素の影響も受けなくなっていると思いますよ!」


 以前アミカと魔界に足を踏み入れた時、中央に行くに従って強くなっていく魔素にあてられ、途中でリタイアしたと言っていた事を思い出した。

 それが彼女にとって今も強いトラウマとなっている。

 ともにここまで来たのに、帰る事が出来たのはエシャリだけ。

 当時の彼女に何かできたはずがないのだが、夜に寝言でうなされている事が今もある。


「いや、それもだが。俺の出した課題はクリアできたのか?」

「はい! 土系魔法は詠唱しなくても使えますよ! 効果も段違いです!」


 そう言って左手をぱっと払うような仕草をした。

 瞬時に足元の地面がそそり立ち、大きな壁になった。えいっ と声をかけるとその壁がそのまま前に進んでいった。

 遠く離れていった土壁に向かってさらに掛け声をかけると、ばんっと砕けて周りに広がり砂煙によって視界が妨げられた。いや、それだけではない。散った砂礫がその周りに生えていた木の幹に鎧のようにまとわりついた。


「あ、最後のは私独自で編み出した魔法です。防御を上げるんじゃなくて、相手の自由を奪って行動力を落とすんですよー」

「ほぉ」


 つい感嘆の息が漏れてしまった。いかん、不覚だ。

 それを聞いていたのかエシャリはさっきより少し表情を明るくしたように見える。


「まあ、支援魔法はそこそこ良いんじゃないか? 攻撃の火力が足りないようだと前線では話にならんな」

「はい。もっと頑張りますね!」


 両手に拳を握り、フンス、と鼻息荒く笑顔で答えた。慌てて取り繕ったがむしろ一層彼女を喜ばせてしまったらしい。

 エシャリは牙の民の族長から学び、それを基礎に修練を重ね、確実に物にしている。本当に能力のある娘だ。

 エシャリと出会えた事は俺にとって何物にも替えがたい宝だと断言できる。



 さあ、もう少しで人間界の防衛線に到着だ。

 成り行きで参加することになったとは言え、新しい世界を作るための前哨戦を勝利で華々しく飾ってみせよう。






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