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新世界の神に俺はなる!  作者: レイモンド
第三部
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憑依!S系調教男子出陣! その15

 


「止まれ、そこな人間よ」


 山中に太い声が走った。

 まだ残る雪がその反響を吸い込むため、音の出所はすぐにわかった。

 そちらを見ると立派な体格の獣が立ち上がって俺を見ていた。


「それ以上踏み入る事は許さぬ。我ら”牙の民”の安息を妨げる者は生きて帰れぬと知るだろう」

「お前がバルバロファングか?」

「それは人間が勝手に付けた名だ。我らは”牙の民”。誇り高き山に住まう狩人の系譜にある者だ」


 灰白色の毛皮、大きな耳、突き出した鼻に裂けた口からのぞき見える大きな牙。

 声の主の姿は絵に描いたような狼男だった。


「そうか。”牙の民”、度々近くの人里を襲うそうだな。誇り高いとは聞いて呆れるぞ」


 俺は狼男に向かって右腕を伸ばし、鼻先に向けて指さした。

 当然狼男の視線は俺の指に集中する。その奥にあるのは俺の瞳だ。

 俺と視線が交錯した瞬間、狼男がびくんと背筋を伸ばすように反応した。

 頭を少し振ってその場から飛び退き、姿勢を低くし俺に向かって牙を剥きはじめた。辺りに獣特有のぐるると喉を鳴らす威嚇音が満ちる。


「貴様、今何をした?」


 なるほど、これは非常に厄介だ。

 距離も関係しているのかもしれないが、目が合ったのに俺の能力が効かなかった。

 しかも俺が何らかの方法で攻撃をしてきた事に気付き、即座に警戒し防御の構えに移るほど判断能力が高い。

 そしていつでも飛びかかれると言わんばかりに放っていた殺気を一瞬で抑え、俺を観察しはじめた。

 これは時間をかけるほどに危ない相手だな。


 ただし最初の反応を見るに、魔族と言っても俺の支配下に置けないわけではなさそうだ。


「さあな。別に何かしたつもりもない。普通にしているだけだが?」

「食えん奴だな」

「ああ、食わせないぜ? お前達に狩られるつもりもないからな」

「……ほざけ。誇り高き”牙の民”、オの一族を甘く見るべきではない」


 鼻先を天に向け、大きく長く遠吠えをした。

 雪が吸い込みきれないほどの音量で、山びこが谷間を駆け回る。

 辺りに続々と同じような狼男が姿を現した。


「我らは一族、皆で力を合わせこの地で命を紡ぐ者。よもや卑怯とは言うまいな」

「もちろん。俺が勝って新しい群れの長になってやるよ。狼もそう言うルールだろう?」

「図に乗るな。我らは一族で竜をも仕留める。出来ぬ事は口にせぬ事だ」


 全頭が散開し俺を取り囲む。

 一頭が飛びかかってきたが、そのタイミングも見え見えのあからさまな牽制だ。苦もなくかわせる。

 周りに広がるやつらは位置を探るように移動を繰り返し、同じように何度も分かりやすいタイミングで襲いかかってきた。本気ではない。

 何かをするチャンスを狙っているのだろう。

 まだ魔法も使ってきていないし油断できない。


 近くの一頭が突然木を叩いた。すると木の根あたりの土が持ち上がり、俺に向かって土の波が押し寄せた。これがこいつらの魔法の一端か!

 それに合わせ俺を中心にして土の波の反対側から一頭が飛び出し、拳を打ってきた。

 後ろからの攻撃にすぐに気付いたので、しゃがんで転がり避ける事ができたが、迫る土壁は一撃で抉られ無くなった。


「よく見えているな。そこそこの手練れと言うところか」

「いや、俺はこう言う肉弾戦は苦手でね。昔聞いたようにしているだけさ。犬に囲まれたらまずよく観ろとな。そもそもこんな馬鹿力をまともに相手するものか」

「貴様…… どこまで我らを愚弄するか!」


 安い挑発に乗ってるようじゃ子供と同レベルだな。さてそろそろ、俺を警戒してはいるが地の利、種の特性を過信している駄犬の群れをしつけてみようか。

 幸い周りには雪が豊富に残っている。

 得意の風系魔法で一気に巻き上げ狼男達の視界を奪った。


「むう! 小賢しい、目くらましか!」

「この山では我らから逃げる術は無いぞ!」


 めいめいに叫んでいるが的外れだ。

 どうせお前達は嗅覚も優れているんだろ? 逃げても隠れても見つかるだろう。それならすぐに試して勝負を着けた方がずっとリスクは低い。


 俺は即席の吹雪に隠すように大きな氷の塊をたくさん作った。

 その数、確認した狼男の倍。

 それぞれの居た辺りをメインに配置し、他にも散らばらせた。そして俺の目の前に一つ、最も巨大な氷塊を用意した。

 そこで俺は風を止めた。吹雪が治まり視界が回復した狼男達は一様に驚いている。

 奴らの目の前に俺がいるから当然だ。

 もちろんそれは氷塊のレンズを通して映る俺の姿。

 全員が突き出した右手の延長線上にある俺の目を見ている。直後びくんと背筋を伸ばすような反応があり、動きが止まった。

 捉えた。一気に掌握してやろう。


「跪け」


 一言で全員が俺を中心に集まり、膝をつく。


 屈強で危険な戦士達をも容易く支配するこの能力に、俺は気持ちの昂りを抑えきれず笑い声をこぼしていた。





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