表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新世界の神に俺はなる!  作者: レイモンド
第三部
33/102

憑依!S系教育男子出陣! その13

「コウスケ様、良かったですー……。私、上手く出来てたかどうかずっと不安で……」

「ああ、エシャリは本当によくやってくれた。な、ちゃんと段取りを進めていけば問題なかっただろう?」

「はい! コウスケ様、こう言う事に慣れていらっしゃるんですね?」

「いや、ここまでの事は初めてだ。まあ、地球でも仕事上地味な事はやってたがな」


 エシャリを俺が拠点として借りている部屋に連れてきた。

 寝泊りするくらいにしか使っていないので散らかってもおらず、急な事でも問題は無かった。

 当のエシャリも特に気にしていないようだった。

 それにしても彼女は色々と警戒心が弱いようにも思える。


「あ…… そう言えばアミカ様は地球ではJKをしてたって言ってましたね。コウスケ様は何をされてたんですか?」

「俺か? 俺は教師だ。それからJKって言うのは女子学生の事だ。品が無い言い方として浸透してる。多用するのはあまり関心しないな。言葉使いから品性の乱れが始まる事も多いからな。しかもあの写真を見る限り、相当だらしない生活をしてた可能性がある」

「そ、そうだったんですか……」


 にわかにエシャリの顔が曇った。

 いかん、アミカ下げをし過ぎたか?


「アミカが実際どう言う女生徒だったのかは知らない。それに一面だけを見て判断するのは間違っているからこれ以上は言及するのはタブーだ。

 ただ、……エシャリが惚れ込んだくらいだから根は悪い生徒では無かったと思う」


 そう言うと、少し暗い顔をしかけていた彼女は、そうですよね! と突然表情を明るくして嬉しそうに振る舞い始めた。

 やはりこの娘にはフォローがとても大切だ。

 だがここまでアミカ、アミカとされるのは正直面白くない。


「そうだ、コウスケ様。司教様にも粗相はしないようにと注意をされましたけど、何かお手伝いできることはありませんか? 一通り何でもやれる自信はありますよ!」

「ん…… とりたてて用事はないな。……何だ? 気負いすぎてないか?」

「そ、そんなことないですよ。それじゃあ、また明日からですね! 何でも言ってくださいっ お仕事の事でも、私にできることでしたら何でもやっていきますから!」


 相変わらず、フンスと鼻息荒く両手に力を込めて主張する。

 素直で従順、性格も可愛らしくさらに容姿も優れると言う稀に見る物件だ。

 期待に応える能力も持ち合わせ、申し分ない。


 力になりたいと言ったが、今欲しいのは情報だ。明日以降の俺の行動の参考にするため、エシャリ、つまり教会側の人間から見た、今の世界の情勢を詳しく聞いた。


「はい……。今現在、魔界の軍勢と私達は何とか均衡を保っています。各地に展開する魔王軍はそれぞれランクSと見られる上級魔族が指揮を執っています。ランクSを超える敵将を一人でも倒せるような騎士様は現在いませんので、どうしても物量で押し切るしか手が無く、私達の方が消耗が激しく旗色は正直よくありません。

 もしもこれまで参画していなかった超上級魔族が加勢してくるような事になれば一気に話が変わってしまうと思われます。

 その前に魔王を倒してしまわないと……」

「そうか。それで今日俺に会いに来たわけだな」


 おそらく、いや間違いなくルファラ教会は俺の力目的で接触してきた。推測は確信に変わった。

 強靭で凶暴な魔物を人間に牙剥かせず戦力に加えられたら人的被害も少なくて済む。

 俺の魔物使いの能力が本物であれば喉から手が出る程欲しいはずだ。


「エシャリは次の依頼について何か聞いてるか?」


 なんとしても俺の力が欲しいだろうが、だからこそ次の依頼の内容は必ず俺の能力を査定するための厳しいものになってくるだろう。あらかじめ対策を立てておけば危険が少なくて済む。


「私は昨日”勇者アミカ”に似た人物に会いに行くと聞いて、無理やりコラン司教にお願いして同行させてもらったので今日うかがった内容以上の事は……。

 すみません、私のような一修道女では知ることができないんです。アミカ様のお付きをしていた時はアミカ様が私を同席させないとイヤだって言って、一緒に詳しくお話をうかがう事ができたのですが……」

「いや、いい。大方想像はつく。多少リスクはあるが問題は無いだろう。エシャリは支援魔法が得意だったな? もし危ないと思う様だったら助けてくれ」

「は、はい! よろこんで!」


「あと、あの時言っていない事がある。お前にだけ教えておこうと思うんだが」


 一瞬エシャリの眉が上がった。

 やっぱりこう言う共通の秘密に興味を示すのは古今東西地球異世界を問わずに女達の大好物のようだ。

 

「実は俺が仲間にした魔物はベースの能力が底上げされる。同種の魔物の群れだったら間違いなく俺の仲間の方が強力だ。魔王の軍だろうと同じ魔物なら絶対に勝てる。明日にでもその例を見に行こうか」


 エシャリは緑の瞳を丸くして呆気にとられている。


「そ、そうなんですか?! すごいです! アミカ様もそうでしたが、地球からいらっしゃった人はルファラ様が遣わしてくださる救世主なのかもしれません!」

「ははは。そんな大それた者じゃないと思うぞ。だいたいルファラと名乗った老人は”よいセカンドライフを”と言って俺を送り出したんだ。信じてもらえないかもしれないが。俺は十分楽しませてもらえれば構わんな」


 さて、明日は特に継続の任務依頼も、急ぎの用事もない。

 貯えも十分あるし司教の依頼があるまでは仲間の魔物達の様子を見まわるくらいでいいだろう。

 それなら準備も支度も必要ないからもう寝てしまおう。

 その時ようやく気が付いた。


「……すまん。寝具一式が一人分しかない。替えシーツがあるだけだな……」

「あ…… い、良いですよ! お気になさらず! つ、机や椅子を除ければシーツを敷いてそこで横になりますからっ」


 そう言う訳にもいかない。

 

「今日はエシャリがベッドを使え。俺が下でいい」

「でも、悪いです!」

「いいから使え!」


 俺がきつく命令すると途端にしゅんとしてしまい、それ以上物を言わずに俺に背を向けて横になってしまった。

 だが謝ってはいけない。俺は彼女が苦痛や不自由をしないための選択をした。

 エシャリは絶対、他者のために自分が苦境を歩む道を選ぶ。修道女のかがみだ。

 だがそうしてばかりでは身が持たない。強制的にでも気を抜かせる必要がある。

 俺の性格もいけないのだろうが、これでも俺は彼女を大切にしたくてたまらないのだ。

 

 この世界で広く使われている夜光石ランプのシェードを下し、部屋を暗くした。

 夜光石は直射日光を日中に十分当てておけば、こぶし大の大きさの物であれば蛍光灯くらいの明るさを一晩発する事が出来るアイテムだ。値段はそこそこするが、油のランプのように燃料を必要としないので一般家庭で重宝されている。


 上着と靴を脱ぎ、床に敷いた替えシーツに横になって少しすると、ベッドの方から衣擦れの音がした。


「あの…… コウスケ様、構いませんのでお入りください……」


 少し震えたようなエシャリの声が、闇の中にか細く響いた。

 恥じらいを堪えて声をかけてきたのだろう。

 精一杯の勇気を振り絞ったに違いない。

 お互い物音ひとつ立てないまま様子を探り合っている。

 俺自身も胸の高鳴りを落ち着かせるのに時間がかかった。

 やっと気持ちを静め、立ち上がる。そしてそのまま彼女が横になる俺のベッドへと上がった。



 若い肉体はやはり強壮だった。持久力も衰えず、いつの間にか朝日が射していることに気が付いた。

 エシャリはくたっとして起き上がれないまま、気を失うようにして眠りについてしまった。

 シーツについた血混じりの汚れが乾きかけて少し固くなりつつある。

 このように素晴らしい女と夜を共にできるとはこの上ない喜びだ。


 あの時司教に言った台詞は間違っていない。

 俺はこの娘を手放したくない。

 だがエシャリはどう思っているだろう。

 彼女の言葉の端々に出てくる、余り聞きたくない名前。

 おそらく俺をそいつの代わりに感じているのではないか。

 俺の体は「アミカ」を男性に変えたものだ。

 叶わなかった想いを吐き出せる対象と見ていやしないか。





 俺はそれが我慢ならない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ