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新世界の神に俺はなる!  作者: レイモンド
第二部
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召喚!攻撃無効系女子推参! その10

 


 一つ墓標の前に一人の女が立っていた。年の頃は十代後半と言ったところか。

 彼女の髪はやや薄い黄金色で、肌は褐色だった。

 両手を胸の前で組み、目を瞑って祈りを捧げている。

 黙祷をしばらく続け、開いた瞳は澄んだ緑色をしていた。


 その女性が慈しむように抱いた墓碑には「アミカ」と碑銘が刻まれている。


「貴女が居なくなって一年が経ちました。人間は、何とか生き延びています」


 墓碑を抱きしめていた腕を解き、二歩下がって膝をついて座った。

 そしてその場にいない者に向けてやさしく語りかけ始めた。


「教皇様をはじめ、司祭様達と王国は貴女の死を悼む事もそこそこでしたが、活動の弱まった魔族の封じ込めにかかり、うまくいっています。アミカ様が主要拠点の魔将軍を倒してくださったお陰ですよ。ここが正念場です。悲しんでいる場合ではないですよね!」


 ぐっと脇を締め、両手に力が入る。

 心配はいらないと伝えようとする気持ちが前面に出ていた。


「私も防御系魔法、回復法術の腕がかなり上がったんですよ! 前線に立っている騎士様達、僧兵さん達のお力になって、頑張ってます! アミカ様に守ってもらってばっかりだったあの頃とは全然違うんですから!」


 フンス、と鼻息荒く、努めて明朗に振舞っていたその姿には、先程墓標にすがりついていたような弱弱しさや儚さは感じられなかった。


「この調子でいけば、アミカ様が追い詰め、深手を負った魔王もきっと降伏する事でしょう! そしたら褒めてくださいますか? またぎゅって……」


 突然声が細くなり、膝の上で握る拳に力が入る。そしてその上に大粒のしずくがいくつも垂れた。


「……今日くらいは、ウソをつかなくても良いですよね?」


 しばらく口をつぐんでいたが、ついにそれを破った。


「どうしてみんな、いつも通りなんでしょう。私達が異世界から呼びつけたのに、戸惑っていた貴女に戦わせてようやく攻勢に転じられるようになったというのに。すべて貴女のおかげで今があると言うのに…… それなのにみんな何も無かったかのように戦い続けているんですよ? どうして?」


 胸の内に秘めた思いを吐き出していく。その間も涙はずっと止まらなかった。


「ううん、分かってます。今踏ん張らないと、貴女が残してくれた事が全部無くなってしまう。だから、今だからこそ変わらない姿勢が必要なんだって」


 納得しなくてはいけない。そう自分をだまし続けた女はもうそれが限界近くに来ている事を自覚していた。もう抑えていられないのだ。


「……でも、私は一年経った今も、脱け殻のようなんです。貴女がいない事が、こんなに辛いなんて……」


 もう一度立ち上がり、墓碑にすがりつく。


「アミカ様、今もお慕いしています。愛しております。明るく奔放な貴女に、心から憧れておりました……」


 それはあくまで石碑である。しかし愛おしそうに軽く口づけし、額を押し付けて囁くように聞いた。

 涙はまだ止まっていない。


「アミカ様、一体あの時何があったのですか? あの時魔王はなぜあの様なことを私に言い残したのでしょうか…… ずぶ濡れの貴女を抱えて私の前に現れた魔王は、本当に悪の権化なのでしょうか…… いくら考えても、分からないのです…… 直接対峙した貴女なら何か知っていらっしゃるのではないですか?」


 答えを待つかのように、後ろに下がって墓標を見つめ続けた。

 だがそれに答えられる者はこの世にいない。それが何より彼女の心を絞めつけていた。


「世界は…… ルファラは、どうなっていくのでしょう…… アミカ様……」


 その時、大きな異変が起きた。

 突如目の前の墓標の土が沈んだ。

 ざーっと流れ落ちる音が止むと、今度は出来たくぼ地がもこもこと動き出した。


 ここは一年も前にこの世を去った者の墓である。 


 あまりに非現実な出来事を前に褐色の女は身動き一つ取る事ができず、固唾を呑んでその光景を見つめていただけだった。


 土の中から腕が現れた。続いて頭、体が外に出る。

 頭を押さえながら出てきた者が、ぎこちない様子で周りを見渡した。


「ん…… ここは?」

「え……? きゃあああああ!」


 理解を超えた現実を目にし、しりもちをついていた女の悲鳴が、他に誰も居なかった墓地にこだました。




第二部「攻撃無効化系女子」編 ~完~


犠牲者 :萩本はぎもと 亜弥花あみか

享年  :17歳

特殊能力:魔力無効(生まれつき)

装備  :鋼の剣 鋼の盾 鋼の鎧(all市販の低グレード品)ただし彼女が持つと魔物に対し無類の強さを誇る

性格  :お調子者、貞操観念低い

その他 :高身長でスリムな、見た目クール系女子(黙ってたら)。全然クールじゃない。おバカだが、勘はするどい。

 中学生の頃からけっこうモテていたせいか、男関係がかなり荒れている素行不良女子。万引きなどの警察沙汰の犯罪行為は一切したことはない。

 もともと百合系ではないが、かわいい物には見境なくくいつく悪食女子。

 お酒は飲んだりした事があるが、タバコは人が吸ってるのも大嫌い(においが付くため)

 根っこは素直であっけらかんとしており、反省もする。

 ワルい子ではない。


 どこで踏み誤った……

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