爆誕!ステ極振り魔法少女いっきまーすミ☆ その50
”なんだ?!どこからの攻撃だ?!”
”くそ、人間軍の接近は認められなかったぞ!?敵の数は?!二人?この威力でそんな馬鹿な事があるか!戦略用高火力遠距離術式を組んでいる敵陣を探せ!”
はぁーい、探し物はここですよー。手を振って愛嬌をふりまきながら身を晒す。
”な、なんだと!こんな子供を囮に?!くっ、人間はどこまで腐っている!”
むかっ
”早く敵の主力隊を補足しろ!こんな非道をゆる・・・うぐぉおおおおおっ!!!”
いいぞベイベー! あたしを見て逃げるヤツはモンスターだ! 向かってきて倒されるヤツはよく訓練されたモンスターだ!
ホント戦場は地獄だぜぇー! フゥハハハーハァー!
ほれほれ、どんどん来い! このままだとあっという間に全滅だぞー。
見た目であたしをなめてると後悔する前におっちぬぞー。
ばんばん魔法を打ち込んでいく。
地水火風雷なんでもござれ! まるっと一つの城塞を落とさないといけないから、なるべくMP消費の少ない非チャージ版で攻めまくる。隙も少なく連射が効くし、レベルキャップまであと8の今だったら普通に一撃必殺の威力がある。ぼっこんぼっこん壁や地面に穴をこさえながら、防壁なんてまるで無意味と言わんばかりに前進していく。
辺り一面は瓦礫の山と火の海原。畏れ控えよー!
突然あたしの左側に地面から壁が現れた。ドン! と大きな音が立つと崩れ落ち、あたしは壁が現れた方向にむけてとりあえずファイアーボールを撃ち込んだ。
”ぐぁああああ!”
おし、命中。今の壁はあたしの魔法。オートで発動する、物理攻撃まで防ぐ土系防御魔法ウォルバンド。キャンセルや相殺とは関係ないからダメージは与えられない。
だけどただでさえ高防御力の”夜紡ぎ蚕の羽衣”で属性魔法の威力まで大幅に減弱してるから、ホントによほどのことがない限り魔法でも物理でも防御を抜かれることはない。ノーダメのまま敵陣を突っ走れてる。
おっとそしてさらにこのタイミングでレベルアップ。MPも全快。地獄は継続中だぜ!
あたし無敵、ムテキング(←何かはよく知らない)!
”おのれ!数で押し切れ!防壁も無限のはずがない!”
おっと(汗)さすがに多方向からの圧倒的物量作戦で来られるとちょっとね。頼みます!
光の筋がヒュヒュっと走るとあたしに向かってきていた魔法は全部弾かれて、さらに迫りくるモンスターの大きな体躯がバッサバッサと斬り飛ばされていく。さっすがヒース! 目にも止まらぬ早業!
”なんだあの剣は!?魔法がかき消される?!”
”馬鹿な!ゴリーティアの鋼の表皮が?!”
驚く暇はございません!一挙殲滅グランキャノン!
閃光とともに真正面にきれいに道が出来上がる。壁を貫通して瓦礫の一切も残っていない。チャージせずともこの威力! レベルキャップでチャージしたなら巨大な隕石だって一撃粉砕よ!
さっきみたいな一斉攻撃だってあたしを中心にした範囲魔法で押し返せるけど、ヒース巻き込んじゃうからね。用心用心。
さー、あとどのくらいでこの砦のボスかな? さすがに手ごたえなさすぎでしょ。雰囲気では今のヤツらが隊長格っぽかったけど、こんな大きな城塞都市を守ってるモンスターが今の程度って事はなかろう。
キョロキョロ見渡しているとふっと頭上を影が走って前方に降り立った。
”狼藉者よ、罰を与えてやろう”
”貴方達の命運はここでお・し・ま・い。さ、おやすみなさい”
言ってるそばから真打ち登場かっ!
おお、こいつぁかなり迫力があるな。
二体ともヒースよりも大きい。一体は鎧をまとった四本腕。前の腕を組んで肩をいからせ、後ろの腕でバカでかいメイスを持っている。もう一体は超セクシーな格好して空中に足を組んで座った状態で、リングみたいな物を四つ体の周りに浮かせてる。
こう言う巨大すぎない系のボスって、たいてい小回りが効いてかなり厄介だ。一発の重さや攻撃範囲はたいてい巨大ボスの方が上。だけどあたしのHPは相変わらずどんな相手だろうとワンパン上等だから、ボスの大きさとかあんま関係ない。むしろこっちの中型ボスの方が危険だ。
羽衣にタイガーパレオと高性能防具重ね着してるけど、それを上回る一発を相手が持ってないはずがない!
物理攻撃遮断やノックバック率の高い質量系の魔法をメインに、防御魔法が切れないよう意識して戦わないと。
長年の極振り生活で危機意識危機管理は十二分に育てられておりますよ!
”さ、死になさい”
四つのリングを持った女型がそのリングを飛ばしてくる。結構速い! けどこの程度軽く撃墜っ! ライトニングチェーン!
ヒー【危ない!】
ヒースがあたしの体をかっさらう。さっきまで立ってたところに雷が降り注いだ。うおおおおっ! 何だ今の! リフレクト(※1)?! あっぶねー! 今のあたしのマインドだと多分羽衣の防御も貫通してくる!
”あら残念。あなたみたいな無頼漢には因果応報がお似合いなのに”
”では正義の鉄槌を下そう”
鎧の男型が高く跳躍してメイスを振り下ろす。ゴガッ!と音が立ち、打ち付けられた地面にクレーターが出来上がった。
おおお! あたしの魔法並に威力が半端ない! 用心してた通り一発、かすりでもしたら死んじゃいかねない。再びヒースがあたしを抱えたまま移動してくれたのでダメージなし。
”やるな。しかしいつまでもかわしきれると思うな”
こっちを睨む大男がメイスを構えなおす隙にファイアーボールを撃ちこむ。だけど鎧の腕の一本が叩き落とした。非チャージで最速の一発に反応するとか! ZF(※2)の人型形態でも出来なかったのに!
うーん、そうなると動きを少し鈍らせないとダメだな。それじゃあ素早さ、命中力を落とす補助魔法、”アーレス”!
鎧男の周りにジリリッと静電気みたいな放電が走る。
さて、吉と出るか凶と出るか。運営によれば相手の反応速度を落とす効果はルファラでは低くなってるらしいけど、これがあいつらの弱点環境だったらそれ以上の影響が期待できるはず。逆だったらどうしよう(汗)
久しく使ってなかった補助魔法を解禁したのは雪山でのバルバロファング討伐戦。実際は補助魔法を使うまでもなくあそこまで来れたってだけなんだけど。あの時、ルファラでの補助魔法の真価に気が付いた。
戦闘後半でバルバロファングの様子がおかしくなった。
息の仕方がすごく速くなってた。人間が運動して呼吸が速くなるのと全然違う。犬が舌出してハッハとしてるのによく似てた。
確かあれは、夏とか暑い時に体温を下げるためにやるやつだ。……ってテレビで言ってたと思う。
って事はあの時のバルバロファング達の体温はすごく上がってたって事だろう。
なんで急にそんな事が起こったのかと考えると、思い当たったのは攻撃力低下魔法の”ナーダ”(火属性)の影響だ。
あんな雪山に生息してるのはもともと暑さに弱いってのがあったんだろう。おそらくインフォメーションジェムが言ってた”モンスターが苦手な環境”ってこの事だ。
たまたまバルバロファングの高攻撃力を警戒して使ったナーダだけど、思いも寄らない所で効果を発揮した。
フレアボムで一掃されなかったからバルバロファングが火に弱いって訳でもない。苦手な環境が弱点属性に一致してない事もあるんだろう。生態系って難しいな。
とにかく、あの大男の周囲の環境は今、絶えず微弱に電気が走ってる。
これがあいつに不利に働くことを期待して一気に攻撃だ!
~あとがき注釈 ―こう言う単語を聞くと無性にゲームがしたくなる用語編― ~
※1リフレクト:魔法を反射する効果。日本のゲームにもそのものズバリな名前の魔法も存在するとかしないとか。
※2ZF(ゼローム・ファガス):PF(プラネットオブファンタジー)シリーズのラスボス。シルフィーさんがプレイ中のPFOU NX(プラネットオブファンタジーオンラインユニバース ネクストジェネレーション)では超巨大な本体と、人間よりやや大きいくらいの化身の2パターンが存在する。
化身の方はプレイヤー拠点の都市に突然大量の眷属とともに現れたりとやりたい放題。
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