爆誕!ステ極振り魔法少女いっきまーすミ☆ その48
シル【え、何?ヒースって魔界の人・・・魔族だった、の・・・?これまでさんざんモンスターと戦ってきた、けど・・・。でもそう言えばアグリードワーフの事とかもよく知ってるみたいなこと言って・・・?え、あれ?】
もう何がなんだか分からない。
モンスターの仲間だって事なら一体どうしてあたしと一緒に旅をしてくれてるの?
ヒー【ははは、人間は人間だよ。父も母も。僕の生まれが魔界なだけでね。僕を身ごもっていた母が魔界に連れて来られて、魔界にある人間の里で僕を生んでくれたんだ。僕は魔界で生まれて魔界で育ち、先生と一緒に人間界へ出てきた。僕の里がこの先にあるんだ】
シル【そう・・・なんだ・・・?え、でもそんな事ってよくあるの?魔界って人間と敵対してるから危険なんじゃ・・・】
ヒー【数少ないケースだそうだよ。それゆえ人間界には魔界に人間の里があるなんて話、眉唾物のおとぎ話と同列になってるみたいだね】
シル【でも周りがモンスターだらけで危ないんじゃ・・・】
ヒー【確かに人間界よりも心配な事も多いけど、保護区に指定されているから知性の高い魔物魔族が襲ってくる事はないんだ。迫害されて追いやられているわけでもないから、生活するのに困難な土地でもない】
シル【でも・・・】
ヒー【大丈夫。もしも僕が魔族だったとしても、シルフィーの味方だって事には変わりがないよ】
そう言って彼はあたしのおでこにキスしていった。
そう…… そうだね。ヒースを信じなかったらあたしはこの世界の何を信じたらいいの?
ヒースがこっち、って言うならそっちに行くだけさ!
人間界でもらった地図をもう一度手に取る。確かにこれには古くから知られている魔王城やその途中にあるモンスターが作った要塞の位置は記されている。だけど奥地に行くほど、そして魔王城までのルートを外れれてしまえば詳細は全く不明だ。まさに暗黒大陸。
ヒースが言う、この先にある人間の村落なんて当然載っていない。
一方あたしのマップには河川や森林、平原、山地と言った地形も載っている。確かにこの先には開かれた場所があって建物のマークがある。すごいぞ。
でも、このマップって一体何なんだ? まるで星を見渡す神の視点みたいだ。
考えたって分かるわけがない。とりあえず魔王を倒してクリアすれば”運営”からのインフォメーションンジェムが出るはず。まずは大ボスの魔王を倒さなくっちゃ!
この辺りの地理は大体把握しているって言うしあたしのマップはヒースには見えないから、あたしが地図も持って二つを照らし合わせて行く事にした。でも良いのかな。あたしの指示で不安にならないの?
ヒー【平気だよ。僕に見えないだけで、シルフィーには見えてるんだよね。僕はそれを信じてるから】
もー! この男ったら! べしべし!
イチャつきながら先を目指す。特に地形的に難所がある様子もないし、ここはすでに魔界だと言うのにのんびりとした旅が続いている。
時々動く物の姿を見かけるけど、こっちに襲いかかってくる事もない。
人間が暮らす里があって保護区になっていると言うだけあって、獰猛なモンスターは生息していないようだ。
途中馬車で一晩を過ごし、翌日の朝、ヒースが言っていた通り集落に到着した。
確かにヒースはここの出身で、すぐに気付いた里の人から歓迎を受けていた。
人口は少なそうだけど、出会う人出会う人みんな穏やかで殺伐とした感じはない。
挨拶もそこそこに、ヒースはあたしを連れてあるところに向かった。
いくつも同じような石碑が並び立っている。その石碑の一つの前に来ると、彼は片膝をついて穏やかにほほ笑んだ。
ヒー【ただいま、母さん。大事な人を連れて戻ってきたよ。母さんに、会わせてあげたかった・・・】
そっか……。若い身空で旅をしていたから訳があると思っていたけど、お父さんだけじゃなくてお母さんも亡くしてたんだ。五年以上ぶりにお墓参りに来たんだね。
石碑に刻まれた文字は読めないけど、注視してたらポップが出てきた。”ファルケ”って言うんだね。二十六歳で亡くなってる。あたしよりも年下でこんなしっかりした息子さんを育てたのか。女として尊敬しちゃうな……。
ヒー【シルフィー。君に秘密にしていた事、今教えるよ。母さんの名前は”ファルケ キルヤハル”。光の勇者”ヒューイ キルヤハル”の妻なんだ】
え、ええーーー?!
ヒースって勇者の血筋ってこと?! 確かにかなり強いと思ってたけど!
ヒー【母さんが教えてくれたよ。魔王と戦い、敗れた父さんの最後の願いは、母さんの幸せを守る事。
これから世界のどこでも戦乱が起きる可能性があったから、魔王が母さんを探し出して、危険の少ないこの魔界の里に保護したんだ。それが光の勇者との約束だって魔王が言っていたらしい。
母さんは連れてこられたこの里で僕を一人で育ててくれた。里の人達も魔王の頼みもあって、いっぱい助けてくれた。それでも母さんは、父さんを殺した魔王を最期まで許す事ができなかった。魔王を討つ事を望んでいたけどその運命を僕に背負わせたがらなかった。だけど・・・】
なんて複雑で悲しく重い運命を背負った一家なんだろう……。
にしても魔王も漢気があるな。魔界のトップなだけはある。敵対者の望みを叶えてあげるなんて、支配欲に駆られているだけの存在じゃない。
こう言う手合いは本当に強敵だ。
ZFみたいな破壊衝動の権化は一撃一撃の重さは洒落にならないけど、必ず凌げる隙がある。
でもルファラの魔王はきっとそれだけじゃない。
初見で勝てるだろうか……?
ヒー【・・・母さん、僕は魔王と戦ってくるよ。父さんの敵討ちって事じゃない。父さんはやっぱり勇者だったと知らしめたいからでもない。ただ、愛する人の力になるために】
そうだ。あたしはソロで戦ってるんじゃない。
ビビっていたら始まらない。
誰よりも大切な人と、その人の背負っている運命に決着を着けるために力を合わせ、勝ちに行く!
あけましておめでとうございます。
新年早々投稿できましたが、現在も不定期更新中です。
ご迷惑おかけしております・・・