転生!物理最強勇者誕生! その1
むしゃくしゃして書いた。
今は反省している
俺は桐谷 竜一。十八歳の高校三年生だ。
「おい蛇イチゴ、じゃんけんしようぜ」
「じゃんけんで負けた奴が購買のパン買ってくるんだ、お前も強制参加な!」
ちっ、どうせ俺が勝っても難癖つけて俺が負けるまで続けるんだろうが! もうその手は飽き飽きなんだよ。そう言うのは一回やったら別の手を考える方が良いに決まってるだろ、常識的に考えて。
……なんて面と向かって言えたらどれだけ楽か。
言いなりになってへらへらと笑って席を立つと結局いつものメンバーに取り囲まれた。
「うわ、きもっ」
「何で笑ってんだよ、何かむかつくな」
「おいデブ! 言いたいことがあるなら言えよ」
「……そ、そんな。な、なんでもない、よ……」
「あー? うっぜ! 何でもないなら笑ってんじゃねえよ、この!」
ぼかっ
くそ、一体俺が何をしたって言うんだ。一体何回目だ、こうやって意味もなく殴られるのって。
「ホントにきもいな、さすが蛇イチゴ!」
「生まれ直してこいよ! ばーか!」
くそっくそっくそっくそっ
死ぬのはお前等だ! お前等が死ねばいいんだ!
何だって俺ばかりがこんな目に遭わなくちゃいけないんだ!
くやしい、くやしい。くやしすぎてもう他に何も考えらえない。
結局今日は俺の財布を勝手に取って、俺の残り少ない小遣いで好き勝手にパンやジュースを買っていきやがった。
くそ! 折角今日は楽しみにしてたコミックやラノベを買いに行こうと思っていたのに!
こんな理不尽な世の中を忘れる事が出来る、俺の唯一と言っても良いくらいの楽しみを奪う権利がお前等にあるって言うのか!
俺は脳髄が焼ききれるかと思うほどの怒りに全身を震わせた。
……だけど、その怒りを連中に向かって吐き出す事は出来なかった。
六限の授業も終わって、俺は帰宅の道に着いた。当然俺一人だ。他にも同じ方向に帰る学生は大勢いる。男子も女子も半々くらいか。
学校には可愛い女の子達もたくさんいる。彼氏と一緒に帰る子もいれば、部活に勤しむ活発な子もいる。俺もこんなナリだけど、憧れる子がいた。
峰岸 はるか。
可愛いのは当然だけど、蛇イチゴと蔑まれる俺に対しても別に嫌悪感を覚える様子もなく普通に接してくれる、普通の心を持った女子だ。
もしもこんな俺でも女子とつき合う事が出来るのなら、彼女とが良い。そう断言できる唯一の子だった。
だけど、とてもじゃないが告白なんてできるはずもない。
俺に勇気が足りないだけじゃない。
告白なんてしようものなら、今まで以上にバカ共に嘲笑され、最悪彼女にまで害が及ぶ。
俺は俺の素直な心にまで蓋をし続けなくてはいけないのか……!
こんな世界…… こんな世界間違っている!
再び怒りにわななかせていると、突如クラクションが鳴り響いた。
頭を上げると前方から赤いスポーツカーが走ってくる。俺を避けるようにハンドルを切り、反対車線を走っていった。
なんだ? いったいどうしたって言うんだ?
クラクションはまだ鳴り止まない。
後ろを振り返ると、そこには目を疑うような物があった。
バンパー。
銀色で弩デカい。それが高速で迫っている
黒い塗装をしたトラックの物だと気付いたのは一瞬遅れてからだった。
やばい! よけないと!
無理
死
何もかもがスローモーションに見えた。
迫りくるトラックは、トラックと俺との間に走るガードレールをガグシャッと言う激しい音を立てて突き破り、そして俺の肉体をガードレールの一部と一緒に車体の前面に張り付けてそのまま走っていく。
べき、ぼきと全身からきしみ、砕ける音が発生するのを確かに聞いた。
続けてぶちゅ、ぐちゅ、めしゃ、とハンバーグをこねる時のように肉をミックスするような音が楽しそうに響く。
そして、ぶつっと、モニターの電源を切ったかのように俺の目の前は真っ暗になった。