じゅんび
一週間経ってないけどかけてたので落とす
Tips:この小説の世界観
魔法あり、科学ありのとんでもワールド。近未来的な機械もあれば魔物なんかもはび
こる何でもありな世界。
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いつものように、蛍光灯の明かりで目覚めた。少し起きるのが遅かったのか、そばに
はすでに食べ物が置かれていた。他には何も変わっていない。いつもの研究室、冷たい
ガラスの箱の中。目覚めて数日ずっとこれが繰り返されていた。そう、あの人が来るま
では。
もそもそと食べ物を口にしていた時、研究員さんとあの人がやってきた。ぼくと同じ
か、ちょっと背の高いぐらいの少年体型で黒髪。研究員さんとは違って仮面をつけては
いなかった。
「やぁ。元気にしているかい?」
質問に対して小さく頷く。
「あまり元気そうには見えないけど。…緊張してるのかな?いやまぁ、こうやって話す
のも初めてだからなぁ」
…少しの沈黙。どう返せばいいかわからずただ見つめていた。
「あ、君の声は聞こえるから、普通に喋ってもらって構わないよ?」
「・・・あ…えと…あなたは…だれ?」
かすれた声になりながらの久しぶりの発声。今まで声を出しても聞いてもらえず、ほと
んど意味がなかったから、声を出すことを忘れていた気がする。
「あー、そっか自己紹介もまだだったか、ごめんごめん。僕はこの研究所のリーダーっ
て所かな。呼び名は…まぁ、マスターでいっか」
あの人…マスターは少し照れくさそうな様子で自己紹介をしてくれた。もっと怖い人
かと思っていたけれど、そうでもなかったので少し安心。でも、ぼくの事を知ってたっ
てことは、たぶん機械を通して僕を見ていたってことなんだろうけど…なんでわざわざ
ここに?
「…不思議そうな顔をしているね。そんなに僕がここに来たことが疑問かい?」
…読まれた。マスターはガラスの箱を見上げる形でこちらに話しかけている。ぼくはそ
れを見下ろす形でうなずいた。
「君にはこれから本格的な実験が始められる。だからそれが始まる前に、一度今の君に
あって色々話しておこうと思ってね…」マスターはぼくの今までのことや、これからど
うするかを説明してくれた。
外の世界には至る所に魔晶石というものがあって、それらが魔物や魔力を放出してい
る。この研究所の地下にもその魔晶石、しかもかなり大きい物が埋まっていて、この研
究所ではそれから発生される魔力を利用した研究を行っているのだそうだ。ぼく自身も
その研究のひとつとして生み出された人工の魔物らしい。
ぼくは元々スライムのような、ぶよぶよした体の中心に核がひとつ浮かんでいるだけ
、みたいな姿だったらしい。マスターはそこからぼくの姿をできる限り、人間のそれに
近いものにする研究を行っていた。人型にしたり、眼や口をつけたり。そして最期に、
身体と核を分離させる実験を行ったんだ。これが一番難しかったんだって。確かに人間
から心臓を抜き取って生きているか、みたいな話だから。
ぼく以外にも何体かその実験まで行ってたらしいんだけど、みんなダメになったんだ
って。ぼくもかなり危険だったらしいけど、身体から不安定になる原因とかを取り除く
ことで、なんとか核と離れても生き続けられる体になったんだ。今ぼくの核はここより
も下層で厳重に管理されている。その核が何らかの形で崩壊しない限り、ぼくは死なな
い体になった。
そして今までは、その離れた状態でも安定できるようにする実験が行われていた。核
は研究所側で栄養や魔力供給をしているから、あとの身体が自力で栄養、魔力を補給す
るために。目が覚めて物を食べても平気だから、実験は成功、安定しているんだって。
そしてこれからはこの体をマスターの望む、より良い形にするための実験を行う予定。
今までよりもかなり過酷なものになるから、そのことを今話すためにきているというこ
となのだそうだ。
「実験の内容は明確に決まってはいない。決まっても教えられないと思うけど。…実験
、受けてくれるよね?」
「…はい。がんばります」
その言葉にぼくは少し疑問を感じたが、全てはぼくの身体のためだと思い受け入れるこ
とにした。
「フフ…物分かりがよくて嬉しいよ」
マスターはぼくに微笑みかけ、研究室を後にする。
ぼくはなにかよくわからないものを感じながら、マスターの後ろ姿を見送った。
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研究室を後にし、彼のことを考えながら、ふとつぶやく。
「ゲンリ…君は実にいい素体だよ…今度はどこまで耐えてくれるかな……?」
次から結構趣味溢れるかも