長雨
昔々のお話です。ある池のほとりの、小さい小屋に暮らす一人の河童がおりました。この河童は人間が大好きで時々人間の村に出掛けますが、何せ妖怪ですから、怖れられ嫌われる存在でした。
この河童には、たった一人だけ、怖がりもせず一緒に遊んでくれる人間の少女の友達がいました。
その少女は、河童の事が大好きです。河童も、彼女の事が大好きで、毎日楽しく遊んでいました。
両親は、少女が河童と遊んでいるとは知りません。毎日遊びに行くのは、人間の友達だろうと思っているのです。
ある日、河童はいつも通り少女と会う場所で待っています、少女は現れますが、いつもの笑顔ではなく暗い顔をしています。
心配になったので、河童は少女に尋ねます
「どうしたんだい?何かあったの…?」
少女は黙ったままで、地面を見つめています。
やがて、少女は意を決したように顔をあげ河童に告げます
「もう…私はあなたと遊べない」
河童にはわけが分かりません、どうして…何で…楽しくなかったの…? 彼女は答えず、走って帰ってしまいました。
きっと悲しい事があったんだ…明日にはまた会える、そう思った河童は彼女を追わず、家に帰りました。
その日から、河童は少女に一度も会わないで、数日が経ちました。
数日後のある日、河童へ一通の郵便が届きます。差出人は、あの少女…河童は急いで封を開けます。
手紙には、少女の綺麗な文字で、あの日何も言わず帰ってしまった事へのお詫びの言葉。そして、今まで遊んでくれた事への感謝の言葉が書いてありました。
もう一枚、手紙がありました。少女とは違う人間の文字で書かれたものでした。
そこには、彼女が病気であった事、数日前に急変し、倒れてしまった事。そして…そのまま息を引き取ってしまった事…。最後に「今まで遊んでくれてありがとうね」の文字…。
河童は泣きました。大きな声で、叫ぶように…。河童は、封筒の中にもう一枚紙が入っていることに気付きます。そこには少女の字で
「今まで言えなかったけど、ずっと好きだったよ。次に会えたら、ちゃんと言うね」
そう書いてありました。
河童はより一層声をあげて泣きました。すると、今まで明るかった空に段々と雲がかかり、ついには雨も降り出しました。まるで河童の悲しみに呼応するように…。河童の悲しみを、包み込むように。
その雨は、二週間近く、降り続けたと言います。
今でも、河童は少女が亡くなった時期になると、一人静かに涙を流しているようです。
少女が旅立った、ちょうど梅雨の時期に。
この物語は、私が通う学校の文芸部に載せた「梅雨」と言うテーマから作ったものです
当時、これを読んでくれた友人には「ありきたり」などと言われていました
今になって読み返してみると、私自身もありきたりだと思えてしまいます
この様な内容でも、楽しんで頂けたら幸いです
それでは、またお会いしましょう




