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長雨

作者: 雨空 雪乃
掲載日:2012/07/19


昔々のお話です。ある池のほとりの、小さい小屋に暮らす一人の河童がおりました。この河童は人間が大好きで時々人間の村に出掛けますが、何せ妖怪ですから、怖れられ嫌われる存在でした。


この河童には、たった一人だけ、怖がりもせず一緒に遊んでくれる人間の少女の友達がいました。

その少女は、河童の事が大好きです。河童も、彼女の事が大好きで、毎日楽しく遊んでいました。

両親は、少女が河童と遊んでいるとは知りません。毎日遊びに行くのは、人間の友達だろうと思っているのです。

ある日、河童はいつも通り少女と会う場所で待っています、少女は現れますが、いつもの笑顔ではなく暗い顔をしています。

心配になったので、河童は少女に尋ねます


「どうしたんだい?何かあったの…?」


少女は黙ったままで、地面を見つめています。

やがて、少女は意を決したように顔をあげ河童に告げます


「もう…私はあなたと遊べない」


河童にはわけが分かりません、どうして…何で…楽しくなかったの…? 彼女は答えず、走って帰ってしまいました。

きっと悲しい事があったんだ…明日にはまた会える、そう思った河童は彼女を追わず、家に帰りました。

その日から、河童は少女に一度も会わないで、数日が経ちました。

数日後のある日、河童へ一通の郵便が届きます。差出人は、あの少女…河童は急いで封を開けます。

手紙には、少女の綺麗な文字で、あの日何も言わず帰ってしまった事へのお詫びの言葉。そして、今まで遊んでくれた事への感謝の言葉が書いてありました。

もう一枚、手紙がありました。少女とは違う人間の文字で書かれたものでした。

そこには、彼女が病気であった事、数日前に急変し、倒れてしまった事。そして…そのまま息を引き取ってしまった事…。最後に「今まで遊んでくれてありがとうね」の文字…。



河童は泣きました。大きな声で、叫ぶように…。河童は、封筒の中にもう一枚紙が入っていることに気付きます。そこには少女の字で

「今まで言えなかったけど、ずっと好きだったよ。次に会えたら、ちゃんと言うね」

そう書いてありました。


河童はより一層声をあげて泣きました。すると、今まで明るかった空に段々と雲がかかり、ついには雨も降り出しました。まるで河童の悲しみに呼応するように…。河童の悲しみを、包み込むように。


その雨は、二週間近く、降り続けたと言います。


今でも、河童は少女が亡くなった時期になると、一人静かに涙を流しているようです。



少女が旅立った、ちょうど梅雨の時期に。



この物語は、私が通う学校の文芸部に載せた「梅雨」と言うテーマから作ったものです

当時、これを読んでくれた友人には「ありきたり」などと言われていました

今になって読み返してみると、私自身もありきたりだと思えてしまいます

この様な内容でも、楽しんで頂けたら幸いです

それでは、またお会いしましょう

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― 新着の感想 ―
[良い点] 哀しくも素敵なお話でした。優しさって自分より誰かこのことを思いやることなのかもしれませんね。気持ちが伝わるお話でした。
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