変わり果てた遊!!
勝ったかのように思えた闘い。
だったが、その瞬間、遊はかわりはて。
その男は魔王といった。
確かに、遊とは比べものにもならないオーラの禍禍しさ。 言動の荒さ。 どれをとっても魔王に近い。
「くくっ。 やっぱり、遊は優し過ぎるなぁ。 傷一つつけてねぇし、ましてや、あの負荷システムすら破壊して無いのか。」
「……何故この力の名を知っている!? それに奴は傷をつけていないのではない。 つけられなか」
「ハァ 馬鹿か!?テメェ。 そんなもんの名前くらい誰だって解るもんなんだよ。 それにそんなもんを破ることなんか、俺や遊、ましてや一般兵にだって出来るぜぃ? まぁ、遊は優しいからなぁ。 大体、あいつ自体本気をだしてないからなぁ。」
「なん……だと?」
「まだ信じられ無いみたいだなぁ。 まぁ、これからそれを証明してやらぁよ。 アァ。あと、俺は遊みたいに、やさしかねぇからなアァ!!」
いきなり、魔王は空気砲みたいなものを飛ばした。
「馬鹿めそんなもので。」
だが、バリアに当たった瞬間、バリアは弾けた。
「なっ!?」
「だからいったじゃねぇかぁよぉ。 そんなんバリアですらねぇんだよ。 ランクでは1.5位だしよぉ。 まぁ、それを壊せなけりゃ、兵士じゃねえしなぁ。」
「だが、これまでは!!」
「これまで? アァ。それは兵士見習い以下の奴の攻撃だったか、あるいは神側の奴の攻撃だったんだろぉ。 魔側は能力自体のパワーがでけぇからなぁ。 それに対して、神側はスピードが速ぇ。 が、パワーはねぇ。 そんなもん、ガキでも解るぜぇ?」
暗殺者は唖然としていた。
「まぁ、死ぬ前にお前御自慢の能力について語ってやらぁよ。 まず、ウィンドカッター。 特質は風、威力は範囲により変化。 広けりゃ低、狭けりゃ高、って感じに比例してる。 んで、その範囲を決めてんのは腕の振り方って訳だなぁ。」
「くっ。」
「だが、スピードは速ぇよなぁ。ディバインレリックで避けらんねぇスピードだしなぁ。」
「では何故、奴は避けた」
「まだわかんねえかぁ? 範囲をきめんのはテメェの腕だぞぉ? つまり、腕さえ見れば攻撃は予測可能って訳だなぁ。 ついでに、何故、首や心臓といった、命を奪える器官ではなく、右腕を狙ったかというとだ。」
魔王は続ける。
「反撃されないためだろ? アサシンってのは、一発で仕留めるより、確実に殺すことが目的だからなぁ。 それが癖として、出ちまったわけだ。」
男は震えている。 ……図星、といったところだろうか。
「まっ、遊の腕切り落としたことは評価しといてやらぁよ。 次は負荷システムについてかぁ?」
「貴様、何故そこまで……」
「そりぁ、お前のしるところじゃねぇやぁ。 これでも譲歩してっからなぁ。 だから、テメェは黙って聞いてりゃいいんだよ!!!」
……ユウの威圧感に暗殺者は、何もいうことが出来なかった。
「負荷システム。その名の通りだがなぁ。 周りからの能力攻撃に対して発動し、能力を打ち消す。 自動システムであり、一瞬だけ発動するから、ディバインレリックでは追いきれないんだろぉなぁ。」
そこまでは解る。 が、何故奴は攻撃によって打ち消すことができたんだ?
「何故?ってかぁ? んじゃ逆に質問だぁ。 そのシステムの原理は何だぁ? 攻撃をどうして打ち消す?」
それは……わからない。
「まぁ、知らないのが普通だろうなぁ。 教えてやるよ、気分いいしなぁ。
さっきもいったが、その名の通りだゃ。 負荷だよ。 攻撃をプラスと考えるなら、システムはマイナスだ。 確かに、数直線上ではどちらも数値は同じ。 だが、物事のマイナスには限界があらぁよって話やなぁ。」