本当の真意
□ ■ ロック □ ■
「すみません、私としたことが」
「ははっ、いいさ。 それにまだチャンスは残っているんだろう? そのときにでもやってくれればいい。
それにしても……ふふ、任務遂行率100%、夢幻の{夢幻}たるロックが失敗するとはね、やはり魔王とは凄いものなんだね」
「……好きでそう呼ばれているわけではありませんよ、必死でやってきたらそういうあだ名がついただけです。
それにその名はばれてしまうので、あまり呼ばれたくないのですが。
……そんなことよりも」
「あぁ、そうだったね。
……此処からは通信機の対防御システムをONにしてくれよ? まぁ、いまさらだけどね」
「えぇ」
「さて、と。
まずは……オーラが全く皆無であった魔王に、ロックの攻撃が全く当たらないどころか、攻撃をいとも簡単に受け止められたってことか?」
「はい、私も戦闘用能力ではないのですが……加速・強化したわたしの力をいとも簡単に」
「ふぅむ、普通なら消し飛んでもおかしくないほどの威力なんだが」
「いくら私が補助専門とはいえ、くやしさがありますよ」
「ふふっ、なるほどな。 とはいえ、ロックは俺の片腕だからな、俺もかなりショックを受けてるが。
……まぁ、そこはいい。 もうひとつ気になることがある、その男は魔王じゃないと、かたくなに否定していたんだな?」
「えぇ、自分は魔王ではないと。 主様のターゲットではないと。
そして、次のチャンスにその魔王をつれてくると……おっしゃっていました」
「ふぅむ……どういうことだ? ノーマルの立花遊という男はそういった能力ではないはず。
勇もそういった能力ではない。 ……ならばユウという魔王が?
……いや、そもそもそういったことを隠すやつではないはず……私の知らない人格が存在するとでも?」
「……あの主様、この任務について私とマサムネは疑問を抱えているのですが。
この時期にわざわざ危険を冒してまで、私たちが表舞台に顔を出してまで魔王を殺すメリットはあるのですか?
……当面の敵ではないと思われるのですが」
「……ははっ、まぁそうだな。 何も今回殺そうとは思ってはない、任務としては殺してくれといったが、狙いはそこじゃないんだ」
「ならば何故? 一体、何を考えておられるのですか?」
「……ロック、君は親友がどんな状況下に置かれているかわからないとき、黙っていられるか?」
「は?」
「少々確認がしたくてね、それともう一つ。
……僕は勇者と魔王、どんなにお互いを理解していようが、道が同じになることなんて絶対ないと思うんだ」
□ ■ 主様と呼ばれた男 □ ■
「お兄様、お電話をしていたのですか?」
「あぁ未雷、ロックから連絡があってね。 失敗したらしいんだ」
「お兄様、上体を起こしては。 しっかりとベッドで寝ていなくては」
「あぁ、すまないな未雷。 久しぶりに興奮しててさ……ロックが軽くあしらわれる相手なんて」
「だめですよ、お兄様。 今は動ける体ではないのですから」
「ははっ、そうだったな。 車椅子で戦うには厳しいしな」
「……すみません、私が薬を見つけられていれば」
「いや、お前が謝ることはないだろ。 こいつは俺のせいなんだからよ。
……それに存在しないのかもな、伝説の薬なんか。
おとぎ話なのかもしれな」
「そんなこと、言わないでください。 ……私たちが必ず見つけて見せます、お兄様とこの国のために」
「……すまないが頼む、おそらく俺が動けるようにならないと、この国は変えられないどころか、その前の戦いにすら勝てないからな」
「えぇ、解りました。
……ロックのほうはどうするのですか?」
「……いざとなればマサムネを呼ぶしかないな、ロックを失うわけには行かない、状況によっては、な」