お風呂場
■ □ お風呂場 大浴場にてガールズトーク □ ■
遊と夢が雨の中飛び出していった後、宿に残された3人の女の子たちはお風呂に入ろうという話になり……。
女の子だけのお風呂……色々な意味で期待のできる甘い時間が予想できるものの、それは期待できるのだろうか?
昨日の出来事からペンダントをじっと見つめる小さな聖少女・唯。
何かを胸のうちに秘める暗黒騎士軍剣士・冷香。
何かに縛られていて過去から動くことのできない天然巨乳ドジっ娘・美由。
表には出さずにしている彼女たち3人は果たして素が出るといわれるお風呂場でどんな話をするのか?
「うわー!! これが日本の温泉というものですか!? 凄いですー!!」
「昨日も入ったではないですか……。 こら、唯!? 走ると危ないですよ?」
「大丈夫大丈夫。うりゃーーーー!!」
「飛び込むな!?」
「本当は夢ちゃんも一緒だとよかったんですけど」
「仕方ありませんよ、美由先輩。 部屋におっしゃらなかったのですから、いずこかにお出かけになられていたのでしょう」
「それもそうですね。 それにしても……ふふっ、元気ですね、唯ちゃんも、冷香ちゃんも」
「~はぁ~。 この状況で落ち着いていられる美由先輩が私はうらやましいですよ」
「え? 何がですか?」
「いえ、解らなければいいのです。 たいした話ではないので」
「?」
「それよりもお体をお流しいたしましょうか?
私の家の家訓では年上の相手の背中を流すのは常識として教えられてきたもので」
「あっ、いいですね。 流し合いっこしちゃいましょうか
私も冷香ちゃんとたくさんお話がしたかったんです」
「え?あ、いえ、私は自分で洗いますので」
「さぁ、早く早く♪ そんなに恥ずかしがることなんてないですよ♪」
「あぁ、いや、ちょっ! 誰か私の話を聞いて!!」
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「あ、あの、美由先輩」
「ん?どうしたの、冷香ちゃん
」
「もう二人で身体を流し合いするのは諦めました、諦めましたが……これはおかしくないですか?」
「? 何がですか?」
「あの、なんといいますか、背中を流しますよね?」
「えぇ、そうですよ?」
「なら、この恰好はおかしいですよね?
間違ってますよね?」
「いえ、正しいですよ? ベストですよ?」
「どこがベストなんですか!? 背中流すのになんで向き合ったまま!? ベストどころかワーストですよ!!」
「え? ……でも私の家じゃ普通ですよ?」
「普通じゃない、絶対おかしい。
これじゃ背中を洗えない上に、自分で洗える前を洗わせてしまう、むしろ無意味!」
「だって向き合ってる方が顔を見れていいじゃないですか。
お喋りしながら洗うんだったら、相手のお顔が見れる状態じゃないと」
「背中はどうやって洗うんですか!! 前なんて自分で洗えるじゃないですか!!」
「えーと、……抱き着いて背中に手を伸ばして」
「抱き着っ!?」
「冗談ですよ、その時は仕方なくくるりと回って、です」
「もう……いいです、私の常識なんか。
どうせ誰も私の話なんか聞いてはくれないんだ。
なんでこう、あの人の周りにはまともな人がいないんだ!?」
「まぁまぁ、冷香ちゃん、そう落ち込まないで。
……あ!! 冷香ちゃん!!」
「何です!? ようやく解っていただけましたか!?」
「うん。冷香ちゃんの肌、綺麗で柔らかいんだね」
「は?……。はあああぁぁ!!!???
ちょっ!! 先輩どこ触ってるんですか!?」
「え? 手とか胸とかお腹とか。
冷香ちゃんの身体は引き締まっているけど、興味本位で色々触ってたら凄いってことに」
「嘘を……言わないでください。 美由先輩も知っての通り、私は暗黒騎士の兵士として今まで生きてきた人間。 私のような武士みたいな女が」
「ううん、そんなことないよ? 確かに冷香ちゃんはクールで武士みたいに凛々しくてカッコイイけど、一人の女の子なんだよ? 可愛いし、肌だってスベスベして柔らかいし」
「かわ、いい? 私が、ですか?」
「うん。 言われたこと無かった?」
「……いえ、以前に一度だけ」
「ほらね? 私の勘違いじゃないでしょ?」
「でもその時は相手もふざけていたような口調でしたし、何より」
「何より?」
「……いえ、なんでも、ないです」
「? なんにせよ、冷香ちゃんはもっと自分に自信をもっと持っていいんだよ」
「……」
「えっ? なんでそんな口を開けてびっくりしてるの?」
「いえ、まさか美由先輩にそれを言われるとは思ってもいませんでしたので。
私よりも先に、美由先輩の方が自分に自信を持つべきなのではないかと」
「わっ、私でしゅか!? でも私なんか可愛くもないですし、かっこよくもないし、ひ弱だし、胸がただ大きいだけで」「私にはよく解りませんが、胸が大きく、ひ弱な女の子であるほうが良いのでは? そういった話を耳にはしますが」
「とっ、とにかく、冷香ちゃんは自信を持つべきなのです!! そんないい素材を持ちながら自分を謙遜するなんて、私たちのプライドがずたずたになってしまいます」
「は、はぁ」
「まったくもう」
「……美由先輩、話が変わるのですが」
「はい、なんですか?」
「美由先輩は……どこまで知っているのですか」
「なにをです?」
「……この世界のことも、今の現状も、……立花先輩、いえ、〔とよばれる人物〕についても」
「なにを、言っているのですか? 世界は平和ですよ、今もこうして……。 それに立花君も」
「立花君とあなたの間にある秘密を私が知っているといっても、同じことが言えますか?」
「!? 冷香ちゃん、あなたは……」
「知らないはずはないはずなんです。 なにせ貴女は」
「二人でなに話してるの?」
「えっ? あぁ、唯」
「なに? 大事なお話だった?」
「いえ、特には。
ただの、私の興味本位ですよ」
「ふーん」
「……冷香ちゃん、私は」
「……わたしも詳しいことまでは解りませんし、今も言った通り、私の興味本位です。 別にどうこうしようというわけではないのです。 ただ」
「ただ?」
「……私と貴女は似ている、かもしれないということです」
「私と、冷香ちゃんが?」
「……特に深い意味はありませんよ、直感のようなものです」
「アハハハハ、冷香、美由先輩と冷香が似ているわけないでしょ? 誰に聞いたってそう答えるって」
「そうですね」
「……」
「まぁ、身体洗えたみたいだから皆でお風呂入ろうよ」
「唯、貴女はまだ身体を洗ってないみたいなのですが」
「……え~、洗ったよ?」
「完璧に棒読みにしか聞こえないのですが!?」
「まぁまぁ、固いことは気にせず。 ほら、美由先輩も」
「仕方ありませんね、この話はまた今度にしましょう。
美由先輩、行きましょう。
このままでは風邪を引いてしまいますよ」
「えっ? あぁ、はい」
「いっっやっっほぉぉぉお!!」
「だから飛び込むな!?」