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Eternal wish   作者: キッド
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勇とは

  ■ □ 服部 夢 □ ■


皆が宿でゆったりと体を休めている中、私一人、考え事をするため海を歩いていた。

時刻は大体8時になろうといったところだろうか。

昼間と違い、あたりは暗く、ただ波が砂浜に押し寄せる音だけがあたりには響いていた。


夜の砂浜。 薄暗く、海水さえも黒く見え月明かりだけが光を照らし続ける。

女が一人で歩くにはとても危ないが、リスクが高い分、考え事もしやすいというリターンもある。

今の私にとっては好条件であった。


「全く、あいつのために、海に誘ったのに。

本人がこないなんて、意味ないじゃないのよ!!

……って、別にあいつのためなんかじゃ」


とはいっても、誘ったのは、遊のため。

……いや、詳しくは『勇』のため。


あいつと会ったのは1ヶ月前になるのだろうか。

TMA2区画にやってきたその日にあった。

別に何か心当たりがあったわけじゃない。 何か似ている部分があったわけじゃない。

ただの直感だった、この人ではないかと。


だからこそ、私は近くで観察していた、この1ヶ月間ずっと。

でも、それらしいところはなくて何度も何度も勘違いではないかと、そう思った。


でも、他に私には情報がない。 あいつについて。

AD高校に来たのだって、単なる私の勘。

能力者だから、TMA2区画にいるとそう考えただけだった。


一番手っ取り早い方法としてはあいつに直接聞くか、あいつがいまだ隠しているオーラや能力を使わせることだ。

私がにらんでいる男、立花遊は能力者高校であるAD高校の生徒であるにもかかわらず、無能力者であり、自身のオーラも保有していないらしい。


……何か裏があるとしか私には思えない、それもやつが「勇」ではないかとにらんでいる理由の一つでもある。

だが、それを本人にいうわけにも、勝負を挑むわけにもいかない。

直接たずねたところで、いつものように


「俺は遊ぶって書いて遊だ。 そんなやつじゃない」


って流されるに決まっているし、戦いを挑んだところであいつはいつもどおりオーラも能力も使おうとせずに、めんどくさがって逃げ回るだけだろう。

それでは意味がない、何の解決にもならない。

あいつを死ぬ間際まで追い込めば、あるいはできるのかもしれないけど。


……私ではそれができない。 ただのケンカ(・・・)になってしまう

つまり、成す術がないというわけだ。


「全く、普段からめんどくさいとか言ってるくせに、自分が一番めんどくさい性格してんでしょうが!!

……でも、あいつが勇だとしたら……どういうこと?

容姿も性格もしゃべり方も、根本が違いすぎる」


やはり、私の思い違い?

でも、あの時の言葉、


『すまない、夢。 君には心配をかけた』


初対面だった相手にもかかわらず、だ。

……明らかに、わたしのことを知っていた。

何より忘れられないのがあの眼と、表情。


優しく、常に何かを守るという意思表示と相手を見透かす眼と、自分の心を隠すようなやわらかい笑顔。

あれは似ているというより、『勇』そのもの。

……でもだからといって、あいつが『勇』であるということにはならない。

ただ似ているだけ、ということかもしれないし……。


考えれば、考えるほどわからなくなる。

……遊なのか、勇なのか。

それとも、前に言っていた……。


             □ ■ 立花 遊 ■ □ 


ダッシュで宿をでて、夢を探そうと思った矢先、夢はすぐに見つかった。

もう、店まで行ってるのではないかと心配していたのだが、夢は浜辺をフラフラと歩いていた。

……何か、考え事をしているようにもみえるが。

此処は一つ、からかってみるとしますかねぇ。


「へっへっへっへ、お譲ちゃん。 こんな暗闇で女の子一人とは、誘っ――」


「うるさい、ゴミくず。 私に話しかけるな!!」


……うん、すばやくて的確に相手のメンタルを崩壊させる突込みをありがとう。

……こっちから仕掛けといてなんだが、あんまりじゃないか?

振り向くどころか、セリフさえ最後まで言わせてくれなかったぞ!?

俺のメンタルはボロボロだよ、もう折れそうだよ。


「ゴミむしってのはあんまりじゃないか?

まぁ、それはおいといて……買い物に行くんじゃなかったのか?」


「……なんだ、あんただったの。

こんな暗闇で後ろから声をかけられるほうの身にもなってみなさいよ。

美由だったら、転んでるところよ」


今の時刻は8時程度。 辺りは静かで、月明かりが照らしているだけだった。

確かに、こんな暗い場所で、後ろから声をかけられれば、誰だってビックリするだろうな。

それが今みたいなナンパ野郎ならなおさらだ。

……こいつの場合は違うみたいで、平常心を保っていて、むしろ相手をノックダウさせかねないほどの言葉を返してきやがった。

……全く、どんな神経してやがんだ。


でも……確かに新山ならありえなくもない。

ただでさえ天然で驚きがちなあいつがこの暗闇で、その上男にナンパと来たものだ。



「ふふっ。確かに、あいつなら驚きすぎて海にダイブしちまいそうだね」



「ふふっ、あんたも解ってんじゃないの。……けど」


夢はいきなり不機嫌そうな声になる。

あれ? 俺なんか言ったか?


「あんた、来るの遅すぎなのよ!!

まだ、怜香は解るわ。 大変だったろうし、仕方の無いことよ。

でも、あんたの寝坊ってやつは仕方の無いことなのかしら!?

それに携帯も持ってないって……どれだけ原始人なのよ!!」


そんなに携帯持ってないのっておかしいのか? というより、携帯持ってない=原始人はおかしいだろ?

んなこといったら携帯ができる以前の時代の人総てが原始人になるんですが!?

まぁ、しかし……夢さんは大変、御立腹のようです。 こりゃ、死ぬかも。


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