俺はいても……。
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その後、無理矢理携帯を買わされた俺は陽介の通帳から引き落とされるという、なんだか犯罪的な契約をさせられた。
……というか、いいのか?ほんとに。
こういう契約には本人の同意とか印鑑とか必要なんじゃねぇのか?
それにあいつのお金を使うってことは、革命軍の貯蓄を俺が使っちまうってことになるんじゃねぇのかな?
俺のそんな疑問は清水から言ってしまえば、考えすぎ、ということだった。
メンバーが携帯を持っていなくては作戦やら何やらに支障が出てしまうし、少しでも革命軍のためになるのであればお金を使う甲斐もあるというもの、ということらしい。
……まぁ、そうなんだろうけど。
そういう問題ではない気がする。
もっと、人間的な面で不安になるだろ? 普通。
そんなことをぐだぐだと考えているうちに、俺たちはバスに乗り海に向かっていた。
本当ならば、俺たちの専用のバス?なのかは解らないが、直通でいける乗り物で行くはずだった。
というより、少なくとも夢や新山、唯はその乗り物で直接行っているはずだ。
だが、俺たちの乗るバスは一般的に走っているもの。
海まで直通ではないし、一般客だって乗ってくる。
かなり時間だってかかるし、めんどくさい。
……向こうについたときは、何時になっていることやら。
「(ふふっ。 立花先輩とメアドを交換してやったわ! しかも、一番初めて? ……まって 考えたら)」
みるみるうちに、清水の頬は紅くなっていく。
なにやらさっきからニヤニヤしたり、ガッツポーズをとったりと挙動不審だけど。
……どうかしたのか?
「どうした、清水? 顔、紅いぞ?」
「なっ、なんでもないです
いえっ、でもなんでもあるというか……とにかくっ、なんでもないんです!!」
「はい? どっちだよ?」
「とにかくなんでもないんです!! ちょっと黙っててください!!」
……なんか、心配したらめっちゃ怒られたんだが。
まったくなんなのか、さっぱり解らない。
なんでもないと言えば、なんでもあると言い出すし……しかも最終的にはなんでもないのかよ!?
「(よくよく考えたら、さっきなんて、大胆に腕なんて組んじゃったし。……いやいやいや! なんでそもそも私が立花先輩のこと好きみたいになってるんですか!? ありえな……くもないですけど!!
それ以前の問題というか……けど私は……あぁあっ、もう!)」
「うるさぁあぁあい!!!!」
「!? お客さん!? 大丈夫ですかぁ!?」
「すいません!! 運転手さん、落ち着いて運転に集中してください
この娘のことは気にしないでください。
ただ叫びたかっただけなんです!! そういう年頃なんです!!」
「そ、そうかい。 ……ま、まぁ、そういうときもあるよね」
清水はなぜかいきなり怒鳴りだし、それにびっくりした運転手さんが反応し、俺がその場を収集するというなんだかよくわからない状態になっていた。
おそらく、うるさいってのは俺のことだよな?……しかも、何も言ってないのに、うるさいって言われるし。 ……嫌われてんだろうな。
ふぅっとため息をつく。
「? どうしたんですか、立花先輩?」
「いや、あんたには嫌われてんだなとおもってさ」
「なっ!? 何でそうなるんですか(むしろ、逆なのに。)」
ん? 肯定されると思ってたんだが……意外だな。
「だって、俺は敵の大将の息子なんだろ? なら嫌われんのも当然だと思ったんだが……」
敵の大将。 つまり、魔王。 その息子にあたるのが俺というわけだ。
嫌われるのは当然、というより必然、道理だろう。
そもそも嫌われているとかそうでないとか以前に、俺は革命軍にいてもいいのだろうか?
今も言ったとおり、俺は魔王の息子。
もしかすれば、俺が魔王とグルだってことも有り得る。
そうであるなら、情報が筒抜けになるし、戦力としてだって考えられない。
自覚はねぇけど、魔王と俺は 血がつながっているんだ。
そんなやつが革命軍にいたっていいことなんてひとつもない。
「だからといって、嫌いになる理由にはならないでしょう」