遅刻組
■ □ ■ □
……世界にはどうしようもないことがたくさんある。
自分でも自覚はある。 意識はしている。 だが、生きてきたもの、培ってきたものというのは一朝一夕ではどうにもならないものである。
だからこそこの現状は仕方ないのだ……とは言うものの、かなりやばい。 時間的にも、状況的にも。
今は、11時40分位。 海に行くという計画の約束時間は10時。
……そして、待たせている相手は夢や風紀委員の能力者の方々。
なんの仕打ちもないのは考えられない ……はぁ、朝からついていないな。
俺は、朝に弱い。 平日は学校があるため、早起きをし、時間通りに登校できるんだが、如何せん、休日になると気が抜けてしまい、遅いときは午後の3時とかに起きてしまう。
さっきも言ったが、これはどうしようもないもの。
体に染み付いてしまっているものだし、逆に無理をしてしまえば体調を壊しかねない。
「んじゃ、行ってくるぞ」
それでも俺はいち早く集合場所に向かうべく、速攻で準備を終わらせ、靴を履き家を飛び出そうとした。
「あっ、待ってください~、魔王様~。 刻印が暴走したときのために、もう一つ、腕輪を持って行ってください~。」
だが、パタパタと羽を羽ばたかせるマヤに止められる。
現在、俺が腕につけているのは白石先生にもらった、取り外し可能なゼロ・ブレス。
通常のものは取り外しできないようになっているんもんだが、これは俺専用で取り外し可能らしい。
白石先生……あの人もなぞが多いが。
まぁ、今はそんなことを言っている場合じゃない。
俺は急いで、腕輪を受け取り、家を出た。
「……下手すりゃ殺されるかもしれん」
朝からいやな汗をかかせられる日だった。
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ちょうど商店街あたりまで来たところだ。 俺は、必死に走っていたが、そこにいるべきではない人を見て、立ち止まった。
「……何やってんだ? 清水」
商店街のデパート前を歩いていた、清水を発見した。
「えっ?
……あぁ、貴方でしたか。」
清水は素っ気なく受け答えをした。
何か想いふけっているような……悩んでいるようにも見える。
「何かあったのか? ってか、集合時間とっくに過ぎてんだが」
集合時間は10時で、今が12時 ……今更、間に合いそうもないがな。
「いえ、実は、ここまでに来る途中、歩道を渡るお婆さんの荷物を持ってあげたり、落とした指輪を探してあげ
たりしていたら……」
……こんな時間になっちまったわけだ。
こいつも中々面倒くさそうな人生送ってんな。 ……ちょっと同情したくなる。
「……まぁいい。 早いとこ学校に行こうぜ。 じゃないと夢に何をされるか、わかったもんじゃない」
そういうと、清水は、
「それには及びません」
という。
「どういうことだ? ……まさか、清水、お前」
清水は首をかしげる。
「なんですか?」
「……実は、真性のドMだったのか!?
夢に鞭で叩かれたり、〇〇〇に〇〇〇挿されたりされて、嬉しがる奴だったとでもいうのか!? ……信じられん」
「な!? なにを馬鹿なことを!! そんなこと、あるわけないじゃないですか!!」
清水は、顔を真っ赤にして、俺に抗議する。 普段ならば、ここで刀を振り下ろされる所なのだが、それができない。
学校の校則の……第何条かは忘れたが どうやら、学校の生徒は学校を中心に、半径三千㍍以外の場所での能力の使用を禁じられているらしい。 そのため、能力者は、その範囲外に出る場合、学校に許可をとり、能力を使えなくする腕輪を腕にはめなくてはならない。
放課後も同じで、範囲内しか移動できない。 住む場所も範囲内なら。それ以外なら、学校の寮に住む規則である。
ちなみに俺は、ぎりぎり、範囲内である
「……まぁ、清水が、Mかどうかはさておき、だ。」
「いや、重要ですよ!! 私はMじゃありませんからね!?」
かなりの大声で言ったため、周りの人達がこちらに視線を向ける。
「……清水、とりあえず公共の場なんだから、羞恥プレイはいかがなものかと思うぞ?」
清水は顔を真っ赤にし、
「違いますよ!!!!」
と、羞恥プレイを続けていった。