海へ行くわよ!! 2
「全く、とんだ糞人間よね。
怜香を見習ってもらいたいものよね、美由」
俺を哀れむような目で見ながら、新山に同意を求める風紀委員長。
大体、何をしていれば糞人間ではないという分類に入るかも解らないというのに。
「ふぇ? わ、私でしゅか!?
私はべちゅにしょの……立花君はそのままでいいと思いますよ!!」
いきなり話を振られたからなのか、妙に慌てる新山。
これはいつもどおりなのだが、違うのは珍しく夢の意見と食い違ったこと。
いつもなら夢の言葉に相槌を打つんだが……珍しいな。
「……ですが、限度というものは必要だと思いますよ?」
自ら注いだお茶を優雅にすすりながら夢の言動に同意を促す清水だが、
「ほらね、怜香もそう言ってるじゃない?
……ってか、そんなことどうでもいいのよ!!」
「えぇええええ!? どうでもいいんですか!?」
夢に同意したはずなのに何故かそっちのけにされてしまう。
清水は冷静を保っていられなかったようで、思わず大声をあげてしまう。
「そうだ!! 夢姉!! 海に行こうよ!!」
突然と言っていいほど、唯は元気よく立ち上がる。
そしてかわいい子供のように元気よく両手を上げ、にっこりとその可愛い笑顔を見せる。
一方の夢はというと、その目を輝かせ
「……ふふっ、海へ行くわよ!!」
……ノリノリだった。
俺のこと言えるのか? こいつは。
「……嫌だ」
「なんでよ!?」
いや、なんでって、
「普通に考えてもみろ? いきなり、海に行こうって言って、行けるもんか?」
大体、ここは山奥の学校だぞ? いくらかかると思ってんだ。
「……行けるわよ?」
「……行けますね?」
「……行けますよ?」
「……行けましゅ。」
……とりあえず、新山が噛んで、落ち込んでいることは説明無しで解るはずだ。
「……いや、待て。 行けるって……こっからどれくらいの時間がかかるとお思いですか? お嬢さん達?」
……。
別に難なくいけるよ、みたいな顔の少女たちはお互いの顔を見合わせながらこう答えた。
「1時間くらい?」
「1時間くらいですかね?」
「1時間くらいですね」
「1時間くらいでしゅ」
……新山(-_-;)。
いや、そこを気にしている場合じゃない。
こんな山奥の町から1時間で行けるとしても、だ。
「仮に、そんくらいの時間でいけたとして、どんくらいの金額になると思ってんだ? 俺は金無ぇぞ」
金銭的な問題で俺は何もできないだろう。
海といえば、泳いだり砂浜で遊んだりと大抵はお金が掛からない。
だが、交通費はばかにはならない。 行きだけでもそうとうかかるというのにそれが往復であるし。
普通に考えて、向こうの方が暑いから飲み物や食べ物でもお金を使うんだろうし。
こっちは一人暮らしと一匹飼ってんだ。 遊ぶお金など無いに等しい。
「タダで行けるわ」
「タダで行けますよ」
「タダで行けますね」
「タダでしゅ」
……新山、もうしゃべるな。 お前の言いたいことはわかったから。 ただ、お前が傷つくだけだから。
いや、それにしたって、
「タ、タダだと!? どういう事だ?」
少なくとも電車は使うよな? ……まさか、走っていくなんて言わないよな 直径で言っても、五十㌔はあるぞ!? ……こいつらなら言い出しそうな気がする ……特に、夢辺りが
「? 何よ? 別に走って行くなんて考えてないわよ。 ……馬鹿じゃないの?」
……ちょっと安心した。
「けど、どうやって行くんだ?」
他になんか方法があるとは思えないんだがなぁ。 まさか、運転するわけにもいかないし。
とりあえずすごく短いです。
次が長くなると思います。