海へ行くわよ!! 1
■ □ 風紀委員室 □ ■
今日もまた平和な一日が続いていた。
季節も春から夏へとちょうど移り変わるということもあり、太陽、気温共にのんびりするにはちょうど良く、風紀委員室にはのどかな時間が流れていた。
俺は当然、昼寝にもってこいの環境に対して感謝の意を込め、パイプ椅子に座り、背もたれをうまく利用し睡眠。
唯と新山は通常のテンションが高いということもあるのか話があっているようで、世に言うガールズトークで盛り上がっていた。
いつもと変わらぬ落ち着いている清水は、風紀委員室に常備されているポットでお茶を入れてみんなに配っているところ。
そして風紀委員長である夢は一人、窓から校庭を眺めているようだった。
これが俺の通うAD高校風紀委員会のメンバーだ。
このメンバーになってから約1ヶ月、俺は毎日にようにこの面々と顔を合わせるようになっていた。
同じクラスである夢は、まるで不知火の生まれ変われであるかのごとく、俺のことをちょろちょろ付き回しているし、席が隣であることもあってちょくちょく喋りかけてきたりと四六時中、夢とは顔を合わせているし。
新山もまた同じクラスでいて夢と同じ隣の席である。
彼女は天然の少女のため、教科書を貸してやることはもちろんのこと、彼女の転び事前対応や噛み予防対策と彼女の世話係であるかのごとく新山とは顔を合わせているし。
それに何といっても昼飯だ。
1か月前の昼休み以来、なぜか俺と新山は一緒に昼食を取ることになっていた。
まぁ、教室で机と机をくっつけて向かい合って食べたり、屋上で横に並んで食べたりとそういった意味では色々と自由だったがな。 いわずもがな、その度新山はいつも通りの顔を真っ赤にしないことはなかったがな。
そこにまた目を付けたのは夢さん。
どうやら、俺が新山と一緒にいると新山がおかしくなっちゃうから、二人にはしておけないらしい。
……どういうことなんだよ、一体。
平日はだいたいこの二人と毎日のように顔を合わせている。
放課後は風紀委員会で、全員と顔を合わせてはいるんだが……まぁ、平日はこの二人とで間違いはないだろう。
ということはだ。
平日はこの二人……ということは休日は?
……となった時だ。
当然、唯と清水となる訳だ。
この二人とは休日によく会う……というか俺が駆り出される。
理由は簡単、革命軍の仕事であるからだ。
仕事とはいえ、やることはそう多くはない。
革命軍の新たな戦力を探しに町を散策したり、清水の訓練の相手をしたりする。
まぁ、他にも買い物だったりやることはあったが主にこの二つだ。
ひどいときは土曜と日曜、両方潰してまで仕事をしなくてはならない日があって俺は泣きそうになった。
学校での安息の時間が増えたとはいえ、休日の時間が潰れてしまっては今までと変わらないどころマイナスにしかならない。
……まぁ、話を戻すとだ。
顔をよく合わせるので、新しいとはいえ互いに壁のようなものはなかった。
そして今、仕事にない俺たちは過ごしやすい空間の中、のんびりと時間を過ごしていた。
だが、ある人物の一言によって優雅な時間は終わりを告げていった。
「退屈ね~、何か楽しいことはないのかしら」
窓の外の光景に飽きてしまった夢は、退屈そうな足取りで自分のパイプ椅子に座り全員が会議位置に座っている状態となった。
俺も夢の一言で目を覚ましたんだが……この時からだ、俺が何やら嫌な予感がしたのは。
「夢姉がじっとしてるのなんて珍しいもんね」
唯は夢のことを夢姉と呼ぶ。
……唯自体、小さくて子供みたいだから違和感はないけどな。
「そうなのよね、普段は仕事があって、やることあるから暇じゃないんだけど。
今日みたいに仕事がないとどうも落ち着かないのよね。
……勇、あんたよくこんな時間を何時間も過ごせるものね」
「ん? あぁ。 なんかするのはめんどくさいだろ?
せっかく時間が空いてるんだからさ、仕事とかするよりはなんにもしなかったり寝てる方がマシなんだよな」
俺は別に嫌いじゃないんだけどな、こういう時間は。
むしろ歓迎なんだが……そこは人それぞれだろう。
「立花先輩、それではまるで駄目人間の発言ですよ」
「怜香、的確なツッコミをありがとうね。
勇、これを機にあんたは先ず私生活から見直しなさい」
清水の冷静なツッコミに便乗し、俺を蔑むドSな夢さん。
「ふわあぁぁぁ。 まっ、考え方は人それぞれだし。
この時間を退屈と思うか、そう思わないかは人の自由なんだし、少なくとも俺は考えを変える気はねぇよ」