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Eternal wish   作者: キッド
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始まりの予感



                    ・・・・・・


夢が編入してから、一ヶ月程がたった。

この一ヶ月、まるで夢だったかのような平穏な日々を俺は過ごしていた。

新学期から続けられていた能力者たちによる俺の命を狙う犯罪行為もなく、学校では騒ぎの中心となっていたドS少女がいなくなったためか俺の休みの時間も大幅に増えたし、まさに理想の一ヶ月だった。

……まぁ、ただ普通の生活に戻っただけなんだけどな。


だが、俺の周りではそういうわけにもいかないようで革命軍でも、学校でも大きな変化は見られた。

学校では、まず……覚えているか? 俺が風紀委員候補を見つけてこなければ、地獄の指導を受けさせられるという脅迫を。


その話とも直結するのだが、どうやら白石先生はその候補を夢に絞ったらしく、編入早々、早速風紀委員の話を持ちかけたらしい。

夢のほうも、

「風紀委員をやらせてもらえるんですか ぜひ」

と、やる気満々だった。

そして、風紀委員長のポストが空いているということで

「私が今日から風紀委員長よ、みんなよろしく」

風紀委員長、服部 夢が誕生したわけだ。


つまりは俺の救い手になった訳だな、感謝しないと。

そういう意味で贔屓するわけじゃないが、あいつが委員長でよかったと思っている。

夢は自分でなんでもやりたがるし、校内で能力による喧嘩や事件が起こればすぐさま夢のやつが駆けつけ解決するし、書類整理や会計も全てあいつがやってしまう。

手伝いや補助の仕事を清水や新山、唯達がしなくもないんだが、大抵のことは夢一人で事足りてしまう。


……解っただろう? 俺が珍しく人を適材適所と認めるのは、俺の安息が約束されているからだ。

あいつが委員長であれば、俺は委員会で仕事をしなくてもいい、つまり寝ていられるということだ。

ふふ、あいつには感謝しないとな、この一ヶ月の平和も夢なしでは成り立たなかっただろうしな。

……だが、不思議な点が一つ。


夢は能力者を相手にするとき、能力を出そうとしない、オーラさえも使わない。

相手が女だろうが男だろうが素手と蹴りで相手を伸してしまう。

前にも授業で習ったとおりだとするなら、オーラの無いパンチや蹴りでオーラを纏った相手に食らわしたところで、痛みどころか何をされているか認識できないはずなんだが、ちゃんと相手は痛みを感じている動作をしているし、気絶してしまう奴もいた。


……オーラや能力の謎なのか、それとも夢の能力なのか……。

まっ、俺には関係ないか。


学校はこんなもんだな。

本当に何もない一ヶ月だったんだ、学校ではな。


もう一つ動きがあったのは革命軍の方だ。

学校の変化とさほど変わりはないんだろうが、俺からしてみればかなりの驚きだ。


ある日、俺はいつも通り家に帰ってきて郵便受けに入っているビラを手に取った。

すると、ビラの中から何やら怪しげな茶封筒を見つけた。

茶封筒の表面には


立花 遊様宛


革命軍本部より♥


と書いており裡面には、


機密事項伝達文書


と書かれていた。

……もうこの時点でゴミ箱直行便にしたいくらい怪しいものなのだが、俺は仕方なく封を切って中身を確認する。

すると中から折りたたまれた紙が一枚出てきてこう書かれていた。


〔   1 我ら革命軍総司令は天草 鮮に決まった。 これよりは総司令の命令は絶対服従のものとし、忠誠を誓え。


    2 これより間もなく作戦が決行されます。 いつ集合がかかってもおかしくないよう準備のほどを。


    3 尚、この機密文書は爆発しますよ♥





……。

もうどこからツッコミを入れていいのやら。

明らかに1~3までの項目を書いた人、それぞれ別人だろうし、3を書いた人はどうせ表面の文字を書いた人だろうし、爆発しねーし、爆発するのにハートなんか書かれるとイラッっとするし、爆発するどころか文字を読むと、今まで読んだ文字が消えていくっていう親切設計だし……突っ込みどころ満載だ。


それは置いていてだ。

……まさかあの子が総司令官になるとはな。

順当にいって陽介がなるものと思ったんだが……。


それに総司令というのは人の上に立ち、総ての責任を自ら負うということだ。

あの優しげで、温和で、人見知りで、可愛くて、清楚で……って何言ってんだよ!

とにかく、あの子が総司令に立つなど驚き以外のなにものでもない。


何かあったのであろうか?

……まぁ、人は変わっていくものだからな。

何かを決意したんだろう。

せっかく決意したあの子に俺がとやかく言う権利はない。


そして、ついに戦争が始まるのか……いや内戦……革命か。

いずれにせよ、革命を起こすということは人が死ぬ。

今更止めることなんてできない、想いが募ってしまったんだから。

国を変えたいという、想いが。


それに、人が死なずに国を変えるなんて理想論でしかない。

どんな方法をとったところで人は死ぬ。

……本当に今更、か。

あいつらはそうなることを何年も前から承知の上だったんだろうし、総司令になった妹さんだってそれを理解した上での今回の出来事だ。


俺も……人殺しになっちまうんだろうかな?

言葉が違うことは解ってる。 意味の無い人殺しじゃないことも解ってる。

あいつらが人殺しじゃないことも解ってる。


解ってるんだ。

けど……何か引っかかる。



                 ・・・・・・・・。



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