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Eternal wish   作者: キッド
序章:始まりのようで、終わりのようで<始>
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最低な男

学校の帰り道。  裏道で助けた女の子(梶原 唯)は聖騎士側の人間だった。


だが、話によると、聖騎士側の人間、だった、らしく……。

「正確には、能力覚醒実験、とでもいいましょうか。 この実験に機械は使いません。 まぁ、その名の通り能力を覚醒させるためのものです。」


機械を使わない、か……なら、説明はつくのだろうが、イマイチ納得は出来ないだろう。


「もちろん、私も目を疑いました。 ですが、調べているうちにどんどん確信に変わってくるのです。

歴史の情報操作。 能力開発。 そのどれもが私の信じてきた事と異なっていた」


……。 人に、いや、信じてきた国に裏切れる事の辛さを、唯は物語っていた。 ・・・そのつらさを俺は少しわかる気がしていた。 ……なぜだろう?


「そして私は聞いてしまったんです。 神の力の真相を……」


神の力……そんなもの、存在するのか?

恐怖で体を震わせている少女。 ……。


「……神の力、か……興味ないな。話を進めてくれ」


少女のことを気遣ったこともあり、話をスルーしようとする。

だが、それが一番の理由ではない。俺は信じない。 神。 運命。 定め。 そんなもの、人間がつくった幻想に過ぎない。 今までそう考えて生きてきたからな。


「……ありがとう。それじゃ、 話をつづけましょう」


丁寧に頭を下げる少女。  


「真実を知った私は、天使側にこれ以上いることができず、中立側の、この日本に来てしまったということです。」


……まぁ、適切であるといえばそうだろう。

中立側ではなく、暗黒騎士側に行ったとしても、話を信じてもらえず、死んでしまう可能性が高いからな。


「そしてこの一年間、私は貴方について調べていた。」


「……? 話が合わないんだが。 何故俺について調べていたんだ?」


「私は、暗黒騎士側につくことにしたんです。 私が信じていた国は聖騎士側ではなく、暗黒騎士側であったからだと気づいてしまったんです。」


……それで、魔王である俺のことを、か。 となると、さっき追っていた連中は聖騎士か。


「……君のことは解った。 でも、俺のことなんか調べてどうするつもりなんだ? ゆっとくが、俺は正義だの悪だの、ましてや国の理想なんかに興味はないぞ」


そう。そんな面倒なものに興味はない、いや、かかわりたくない。  それに、実際に王位に就いているかさえ、わからない状態だ。


「そう……ですか。 わかりました」


少々、悲しい顔をしている少女。  ……ひどいことを言ってしまったか?  だが事実だしな。

席を立つ少女。


「すみませんが、用事を思い出しました。 私は先に帰りますが、気にせずゆっくりしていってください。」


「えっ? あ、おい?」


涙を浮かべた少女は、席を立つと勢いよく、店を飛び出して行ってしまった。

……最低だな、俺は。


だが、めんどくさい事には関わりたくない。  普段もそうじゃないか。 これが普通なんだ。


でも、なぜだろう? 女の子が困っていると助けたくなってしまう。めんどくさいはずなのに。 なぜだ? 昔、何かあったのか?


ズキッ!!


「っ!?」


考えていると、突然頭痛が走った。 ……思い出そうとするとこれか……。



「あの、ご注文がまだなんですが……」


店員のバイトさんらしき人が、俺に注文を聞きにくる。


……。


「悪いな、バイトさん。  注文は、無しだ!」


そう言って、俺も急いで店を飛び出す。


               →↓←↑


「……覚悟を決めたか? 梶原」


「ええ」


誰もいない、真っ暗な裏道。  狭くはなく、広くもないといった感じだろうか。

そんな裏道で、唯は昼間の男と向き合っていた。


「梶原。 なぜ、我等を裏切った? 君ほどの能力を持ちながらなぜ悪に荷担する?」


男は白いスーツで、普通の体格。  金髪でツンツンな頭をしていた。


「悪?なら聞きますけど、暗黒騎士達は何故悪だと呼ばれているのですか? 史実では、彼等が暴挙の道に走ったことはないはずです。 それなのに、あなたたちは多くの人間を騙して」


「…情報操作について、知っているのか」


だが、男は驚きを見せない。  むしろ、頷いていた。

上からの情報と照らし合わせているの?


「だが、大丈夫だ。  今、戻れば、あのお方も許してくださる」


「お断りよ!!  ……あなたも昔は、そんな人ではなかった。  周りからは英雄と称され、仲間や民からも信頼されていた!!  なのに、今はどう!?  周りからは暗殺者アサシンと呼ばれ、怖がられて、誰一人としてあなたに近づこうとしない。  ……人体実験が、あいつが、あなたを変えてしまった!!」


「なっ!?」


一瞬、動揺したかのような反応を見せる、白いスーツの男だったが、


「まさか……実験まで知られていたとはな。  秘密を知った以上……死んでもらう!!」


男は、唯の心臓を、手刀で貫こうとする。

その時、唯は目をつぶった。 闘う力はあったのに。 ……それは無論、自分の信じてきた国と闘う意志が固まっていなかったからだろう。  いや、最初から、死を覚悟していたのかもしれない。


「(私もここまでか。 ……約束を果たせなくてゴメンね。ユウ兄さん)」


唯は覚悟していた。 が、いつまでたっても相手の手が自分の心臓を貫くことはなかった。

目を開けた。すると、そこには想定していなかった人間が立っていた。


「死んでもらうって……どっかの時代劇かよ?……全く。 世話を焼かせる」


「先輩!?何故、追って来たんですか!? ゆっくりしていってって言ったのに……」







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