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Eternal wish   作者: キッド
49/83

クロノ

       ……………………


暗い、暗い大きな部屋で一人。

暗さは心の心情を表しているのか。 部屋の大きさは世界の広さを表すのか。

人数は……過去の出来事を表すのか。

ただ一人、部屋の暗さに溶け込む少年は嘆いていた。

特別なのか、異常なのか解らないが少年の瞳には全て映っていた、全て見えていた。

だからこそ嘆くことができる、何も知らない、何も理解していない人々の嘆きとは違う。

未来(さき)まで見える、本質が見える彼の嘆きは、総ての真相真実を表していた。


「……ふふっ、今まで何年待ち続けてきたことか。

事を起こし、全てに耐え、退屈だったこの時間。 この私が苦痛に耐えてきたのだ、虫けら共から。

だが、無駄ではない。 世界は動き、私の見ていたものとは微妙な変化を起こし、そして彼も動き出した。

…だが、まだ退屈だ。 微妙な変化が映ったとはいえ、所詮大局に何ら変わりはない。

このままでは本当に滅亡してしまうぞ? クククっ」


やがて、部屋に僅かな光が入り込む。

誰かがこの部屋のドアを開けて入ってきたのだ。

唯一、この部屋の主に目通しが出来る3人組が扉を開けて入ってきたのだろう。


「長旅、ご苦労だったな三人とも。

どうしたのだ? 私は招集などかけてはいないぞ、クレイ、コーイ、イア」


主の問いに対して、隊長格であろう落ち着きのありそうな黒い長髪の男、クレイが答える。


「はっ。 ……どうやら世界に大きな動きがあることをつかんできました故、我ら戻ってきた所存でございます」


「ふふふっ、ようやく動くのか彼は。 かなり前からの企てにしては動くのが遅かったな」


「……知っておられていたのですか?」


「知っていた、というよりは気づいていたというべきかな。

魔王が戦争を起こす、という報告だろう?

……初めて会ったときから、彼は僕に対して敵対心を抱いていたからね」


「……やはりかないませぬ、クロノ様には」


そう、暗い部屋の主はクロノ。 神にして、聖騎士のリーダー。

リーダーというイメージからはかけ離れていて、齢18位の童顔で白い髪、身長も百六〇程度と低め、体もほっそりとしている。


「クレイ、本題はそれじゃないんだろ? こうなることくらい予想できたはずだ。

ここに来た意味は、僕からどんな命令をもらうかだろ?」


「はっ。 それともう一つ」


「あれ? まだあるのかい?」


「魔王側で動いている革命軍、当初は天草 陽介がリーダーを名乗っていましたが。

……その妹、天草 鮮が指導者となった模様です」


「……ハッはっはっはっ! 実に面白い! 彼は僕の予想を超えることをしてくれるよ、全く。

ユウの周りの人間というものは実に予想できない、これだから彼らは殺せないな」


「ですが、一体何があったのでしょうか?」


「さぁね。 まぁ、一つ見当がつくとするなら……」


「?」


「まぁ、いいや。 いずれ解るよ。 むしろ知らなくてもいい。 どうせ死んだ人間の話だ。

それよりもクレイ。 君は魔王を殺したいのかな?」


「……私も朱雀様と同じ意見です。

我らの配下となったにもかかわらずの裏切り行為と数々の失態、何よりもあの態度、殺しておくべきかと」


「なるほどね。  ……君はどう思う? イア?」


「おなか、すいた」


「こっ、こら! イア。 クロノ様はそういうことを聞いているのではなくて」


いつも通りのイアとコーイのやりとりが展開される。

イアはオレンジ髪で大食らいの小さい女の子、コーイは銀髪で長身のしっかりものの女性。

ある意味でバランスが取れている三人組。


「ふふふっ、いや、いいよコーイ。 イアがいつもどおりで安心した。

後で大食堂にでも寄っていくといい、私からコックの方に話しておく」


「うん。 ありがとう、クロノ。 大好き」


うまく感情表現ができず、真顔なままのイア。

彼女の言葉は気持ちを表していて、嘘偽りなど存在しない


「……しかし、クロノ様? 本当にどうされるのですか?」


「実は適役がいてね、彼に任せようかと思っているんだ。

そろそろ入ってきたらどうかな?」


またも暗い部屋に差し込む僅かな光。

主に目通り出来るのがこの三人だけ、というのにだ。


「まさか、バレていたとはネェ。 いやいや、さすがダヨ」


「誰だ!! 貴様は!」


一瞬にして、その場の空気が殺伐とし三人は戦闘態勢になる。

部屋には、三人のオーラが渦巻いていた。

だが、その入ってきた男は動揺せず、ただ笑っているだけだ。


「別に俺が居たって不思議じゃねぇダロ? あんたらが道案内してくれたんだからヨ」


「私たちの後をつけてきたというの?」


「……やめろ、三人とも。 僕がその男を呼んだと言ってもいいくらいなんだ」


「ですが!」


「クレイ?」


「……申し訳ありません、下がります」


クロノの威圧に折れた三人は部屋を出ていこうとする。


「……クロノに何かあったら、殺す」


「はっ、女の子にしては怖いネェ」


すれ違い際、イアはその男にそう言い放った。

そして完全に三人は席を外す。


「……こうして会うのは初めてになるのかな? 人外の魔術師(ネクロマンサー)


「その呼び方、懐かしいネェ。 自分では気に入ってるんダケド、他人に呼ばれると、コロシタクナッチャウンダヨネェ」


「なら、私も殺してみるかい?」


「……ハハハ、そういうところが好きダヨあんたは。

それで? 何年ぶりに僕を呼んでオイテ、なんのようなのカナ?

僕は忙しいんだけどネェ」


「君に、魔王軍側のこと、全て一任しようかと思ってね。 まぁ、今までも一任していたようなものだが。

……でも君ならできるだろう? 魔王軍とも、革命軍とも接触した君なら」


「……どこまで知っているって言うんダイ?」


「全てになるのかな? ……あの子を殺したことも知ってるよ」


「……君の場合、嘘を考える必要がなくて助かるヨ。

皮肉だけれどもネ」


「まぁ、なんにせよ君に任せるよ。

それと、彼らを呼んできてくれるかい? 命令を出すのを忘れていてね」


「一つ、質問してもいいカイ?

君のターゲット、お気に入りの玩具を壊してもいいのカナ?」


「……お前にできるならな、十中八九、返り討ちに合うと思うが?」


「三人全てに、カナ?」


「いや、一人に、だ」







 



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