いつかの出来事。
→ ↓ ← ↑
なんとか、買い物を済ませた俺達は、帰路についていた。
デパートを出たあとも新山さんのご機嫌はまだ良いようで、今もウキウキしながら、俺の前でステップしている。
「…ちゃんと前見ろよ? こけるぞ?」
なんか、子供のおもりをしてるみたいだな
…ふふっ、全く、いつになっても、美由は変わんねぇよなぁ。
……? なんだ? いまのは?
「大丈夫、だいじょー……きゃあ!」
いわんこっちゃない。 新山は道の曲がり角で、誰かに覆いかぶさって…?
どうやら、転んだのではなく、ぶつかったらしい。
「あいたたた。 んー? なに? この柔らかい感触」
「ふぇ? あっ」
新山とぶつかった少女?は新山の大きくて、豊満な胸を揉んでいた。
スカートを履いた女子高校生同士での交わり合い……。
…って、なにいってんだ!?俺は。
「ん? って、あぁ」
どうやら、その少女は今の状況を理解したらしい。
…これ以上は見ていられん。 助けるか。
………。
「あの、本当にゴメンナサイ! ちょっとぼんやりと歩いていたものだから」
少女は、礼儀正しくお辞儀して謝る。
かなり小振りな子だ。 髪の毛は黒くショートヘアー、なんとも男らしい印象が否めない。
身長も平均的なんだが、女子にしては胸やらお尻やらのふくらみが物足りない。
まぁ、唯や白石先生に比べれば大きいほうだが……だから何を言ってるの!? 俺は。
「い、いえ、こちらこそ、前を見てなくて……ゴメンナサイ!」
それにつられるように、新山も謝る。
さすがに男じゃなければ、初対面でも噛むことはないんだな。
「そう言ってもらえると助かるわ。 ……胸が大きいから、悪党かと思ってわざとぶつかったから……」
「えっ?」
「いやいやいや、なんでもない」
まぁ、何はともあれ少女たちは仲良くなったようだ。
そこで、俺はあることに気がつく。
「…ん? その制服…俺らと同じ」
そう、新山より胸や身長は小さいものの、俺らの制服と同じ紺色の、AD高校の制服と同じものを着ていた。
「ん? あぁ、本当、同じね。
言い忘れたけど、私は二年の服部 夢です。 明日から入学予定よ」
喋り方から想像できるのは、イメージ通りの男の子みたいな少女。
けど…。
「そうなんですか。 私は新山 美由、こちらは立花 遊君。 どちらも二年で、同じクラスなんですよ」
けど、おかしくないか? この子。
「一つ、聞いても良いか? なんで、制服着てんだ? 明日からなんだろ?」
なら、今日は制服を着る必要はないはずだ。
「あぁ、それは、今日学校に呼ばれてたんですよ。 事前指導みたいなものですかね。」
なるほど。
そして、その時、初めて彼女と眼を合わせる。
「!? 貴方は」
どうやら、俺を見てビックリして…!?
「ぐっ!!」
急に頭が痛みだす。
なんだ!? この痛みは!? 俺は知っている。 この痛みを……。
違う! 知らない! なんだ、この鎖がちぎれる音は! 誰なんだ、俺に鎖を巻いたのは!
……また、逃げ出すのか? 目の前の現実から。 彼女との約束から。
「立花君!?」
新山が慌てて近寄って来る。心配してくれているのだろう、その声から気持ちが汲み取れたし、何より涙を流しそうなほど潤目だ。
俺は立っていられず、その場に膝をつく。
……ダメだ、俺みたいな奴に涙なんか流さないでくれ。
「ちょっと!? 大丈夫?」
その男の子っぽい少女も見かねて近寄って心配してくれる。
「……いや。……大丈夫だ」
駄目、だ。 この二人を心配させては。
あの時と……何も変わっちゃいないじゃないか!
何が……連れ去ってやる、だ!
何が……護ってやる、だ!
前も見れないのに……大層なこと言うなよ!
……。
俺は、無言で立ち上がる。
「だっ、大丈夫なんでしゅか 立花君?」
・・・俺は誓ったのに・・・。
「心配すんな。 美由。 もう、過ちは繰り返さない……約束は必ず、果たしてみせるさ」
「えっ!?」
……何を言っているんだ? 俺は。 自分でもわからない。
「貴方……」
服部も不思議そうな、でも泣きそうな目をしていた。
……この金色の瞳も、夢も泣く時があるんだね。
「ごめんね、夢。 君には心配をかける」
……だから、何を言っている? 俺なのか?
「やっぱり…でも…」
服部は何かを悟ったように、頷いていたが、どこか納得できていないようだ。
「…新山、わりぃが、ハンバーグの件は、また今度でいいか?」
美由は頷く。あんなに楽しみにしていたのに ……よほど、俺の事を心配してくれたんだな。
「わりぃな」
美由から、食材を受け取る。
…もうひとり、話をしなくてはな。
「夢」
「えっ あぁ、はい」
……今度はしっかりと言える。
「……また、明日な。」
そして俺は一人、食材の詰まったビニール袋を持ち、自宅へと帰っていった。
→ ↓ ← ↑
その日の出来事は、あまり覚えていない。
どうやって帰ったのか? 痛みはどうしたのか? ……。
マヤにも話してみたんだが、
「……解りませんねぇ~」
という、解答が返ってきた。
……。
□ ■ 新山 美由 □ ■
「ユウ君、……やっぱり貴方だったんですね」
私の見立ては間違ってなかったんだ。
遊君が……。
「それに、約束も果たすって言ってくれた。
……なら、私は待っててもいいんですよね? 出来ますよね? なんたって遊君は……」
「それなら私、待ってます。 いつまでも。 たとえ、どんなことになっても。
私は未来を描きながら……貴方が護りに来てくれるのを、いつまでも」
□ ■ 服部 夢 □ ■
「あいつが……勇」
まさか、こっちにきていきなり会うとはね。
でも明らかに……違う。
「でも、あの時の言葉は」
そう、よね。
そのものだったし、それに……また明日って……。
「でもでも……あぁぁああ!! なんなのよ、もおぉお!!」
→ ↓ 翌日 ← ↑
「大丈夫なんでしゅか 立花君」
朝、教室にいくと、早々に新山は心配そうのに声をかけてくれる。
「あぁ。もう大丈夫だ。 悪いな、昨日は」
「いえっ しょうがないでしゅよ。 また、こんじょ、やりましょう。」
俺の都合で、キャンセルみたいなことになったからな。 今度、埋め合わせをしなくてはな。
………。
「では、立花君の隣の席ですね」
昨日、言ったとおり、服部は編入してきた。 ……しかも、俺のクラスに。
その服部は、前の陽介の席、つまり俺の隣の席に。 新山は、不知火の席、またも俺の隣の席になった。
……俺にはなにかの陰謀としか思えないんだが。
「……よろしくね、勇」
……はぁ また、厄介事が増えそうだな。
それに、
「……なんか勘違いしてるみたいだが、俺は遊だ。 遊ぶって書いて、遊」
「そうなの? それじゃ、私のことも名前でよんで、勇」
……聞いちゃいねぇな。
これから面倒なことが起こると、その時でも解っていたことだ。
でも、俺の予想をはるかに超える展開が待ち受けていようとしていた。
ここで夢が転校して来なかったら、俺が前を向くことも、物語が進むことも、死ぬこともなかったんじゃないかと……なんども考えたことがある。
でも、良かったんだ、これで。
きっと夢がこなくても、いつかは……動き出していたんだから。
ということで、新キャラ登場ですけれどもね!!
いやー、ここまで来ましたか、ついに(*´∀`*)
嬉しい限りです。
次回を書いた時点でついに……外伝が書けますよ~!!
やっとか!? ……外伝で時間を稼いで、本編の内容を進めてやるぜ。 ぐへへへへっ……嘘です(;´Д`)
本編の内容もそうですが、外伝の出来はかなりいいと思います。
……いや、ハードルを上げてるわけでも、自信があるわけでもないんだからねッ!!
まぁ、自分が読んでて、面白いな程度です。
なにはともあれ、これからストーリーは急展開を迎えていきます。
後に必要な人物であったり、遊自身のこと、これ以上はあまり言えないですけど、この「~知編~」ではその名のとおり色々なことが明らかになっていきます。
まぁ、今まであやふやだった世界情勢やらなんやらも明らかになるのではないかと。
そんなわけで、これからもこの作品を楽しんでいただければなと思います。
それではまた、お会いいたしましょう!!