表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eternal wish   作者: キッド
42/83

あんたは誰?


「実は、立花君に風紀委員を連れてきてもらいたいのです」


へへん、と腰に手を当て満足げに言い放つ白石先生。

いや、そんなに威張って言われても。


「立花君も既に解っているでしょうが、不知火さんが抜けてしまい風紀委員長がいない状態+人数が足りていない状況なのです。

だから、立花君に」


「ちょい待ち、先生。

俺だって状況は解っちゃいるぜ? そりゃ、風紀委員が人数不足で機能しなくなりゃ大問題だ。

学校での風紀が乱れ始めて、生徒たちが好き勝手やり始めかねない。

風紀委員長がいなけりゃ、尚のことだろうしな」


風紀委員とは、学校の風紀を取り締まる、まぁ、簡単に言やぁ学校で好き勝手やってる能力者を取り締まり(ボコボコにし)改心させる(拷問する)、ということだ。

今までは不知火が


私に全部(私が全員)任せなさい(ボコるわ)


とか言って、やってくれていたんだがいなくなったとなれば……まぁ、普通に考えれば俺たちが仕事を開始し始めるといういたって普通なんだがめんどくさいので、まずい。

しかしだ。


「俺だって、委員長が居りゃいいと思うさ。

けど…」


「けど?」


「俺は既に二人も連れて来させられたんだぜ!?

しかも、俺自身この委員会に入るつもりもなかった!!

どんだけ人使い荒いんだ!?  ここは(風紀・高校両方)

しかも、俺だけに対して!!」


勘弁してくれ。 

ってか、その<連れてこい>って言葉で俺は今まで二回も命を落としかけたんだぜ!?

これ以上はゴメンだぜ。


「そう…ですか」


先生は肩を落とし、今にも泣きそうな顔をしている。


「これだけお願いしても……ダメ?」


泣きそうな目での上目遣い。

この破壊力はかなりのものだが。


「ダメだ。

大体、演技だろそれは」


「バレちゃいました? 

陽介君はこれで落ちたし、押しきれる自身はあったのですが」


おいーー!? 陽介ーー!!

お前は何をやってるんだよ!?

先生でも容赦なく手をだしてたのかー!?


「大体、学校側はなんて言ってるんですか?

生徒の自主性を尊重する、じゃないんですか?」


学校でのお決まりその1、生徒の自主性を尊重。

そりゃ、まぁいい言葉さ。 生徒の意見を一番に、ってことだし、なにより、生徒を信じているって事だしな。 だが、俺にはただの投げやりの言葉にしか聴こえない。

それに、都合が悪くなるとそんなこと関係なくなるしな。

……まぁ、だからどうした?って話しなんだが。


「私に一任するとのことです。 …ですが、立花君がやってくれないとなると、やはり羽鳥先生に指導を頼むしか有りませんかねぇ」


「…それは軽く脅迫と言わないか? 先生」


だが、奴が出てくるとなるとまずい。 命をかけるよりも。

これだけは何としても避けなければならない。

羽鳥 熱死(はとり あつし)。 この高校の教師であり、個別指導科。

……まぁ、名前を見てもらう通りの熱血教師である。


別に熱血なのはいい。 俺にどうこう言う権利はないしな? ただ、避けなければならないのは、奴の<指導>だ。


奴は指導をすることが大好きであり、一度、指導をはじめると、それが一ヶ月は続く。

掃除、運動、勉強はもちろんのこと、ありとあらゆることをさせ、挙句の果てには、昼食まで一緒に食べるという、別名<ストーカー教師>なのだ。

……しかも、本人に自覚が無いところがまた、質が悪い。 普通の指導とでも思っているのだろうか?

もしそうなら、かなりの狂人だ。

…やるしかないか。


「…わかったよ、わかりましたよ、やればいいんでしょう?」


「えへへ、素直な立花君は、私好きですよぉ」


頭を、いい子いい子、と撫でてくる先生。


「子供が高校生を子供扱いをすな」


と軽くつっこみを入れておく。


「だから、子供じゃないのです」


まぁ、それはさておきだ 

……この人、完璧に脅してきやがった。

最終手段とも呼ばれる方法、<熱死の始動>(地獄の業火)をちらつかせてくるとは。

しかも、笑うときに「うふふ」ではなく、「えへへ」と笑うことがまた子供らしい。 ……全く、純粋なのか、腹黒なのか、まるで解らない人だ。



「そんな素直な立花君には、これをあげます」


相変わらず、無邪気な笑顔の白石先生は、背中にしょっていたうさぎのリュックから何かを取り出し、俺に手渡した。



「これは…メロンパンだよな?」


形は、普通のメロンパンのようだが…色が紫色なんだが!?

どんな科学変化を使ったんだ!?

しかも、パッケージを見る限りでは製品化されてるものなんだけど!?


「ピーナッツチョコクリームイチゴメロンパンなのですよ。 スッゴく甘くて、美味しいんですよ」


・・・考えるまでも無く、ただの純粋な子供のような先生だ。

ピーナッツチョコクリームパンとか、イチゴメロンパンならまだ、製品化してるからわかるが、それを組み合わせるとは…。

だって、どっちもそれだけでも十分なほど甘いんだぞ? あれか!? 美味しいものと美味しいものをあわせると、もっとおいしくなるっていう、子供の考えか!? …よくよく考えると、それを好む先生も先生だが、それを作る工場側も工場側だよな


ぐぅ~~~。

…あまり食べたくないが、俺の腹も限界のようだ。


「…んじゃ、有り難く頂きますよ。」


「それじゃ、よろしくねぇ~~~」

ニコニコと去っていく白石先生。

…と思ったんだが、


「あぁ、そうそう」


何かを言い忘れたかのように戻ってくる先生。


「なんですか? 委員ならちゃんと揃えときますよ」


「いえ、別のお話よ」


「…なんですか?」


…急に先生の雰囲気が変わったな。

なんかこう、真面目というか空気が変わったというか。


「立花君、あまり能力を学校で使わない方がいいわよ」


!?

まさか、屋上のやつで見られたか!?

いや、今はそれよりも。


「バッ、先生!!  ここで言ったら」


周りに生徒がいるんだぞ!?

もし、バレたりしたら。


「大丈夫よ、周りには結界を張っているから

私たちは普通に会話しているように見られているわ」


結界、だと?

…確かに周りの生徒は、俺が大声を出したにもかかわらず平然としてやがる。

さっきの空気が変わった感じは結界のせいか。


「…だが、あんたはなぜ俺のことを?

まさか、聖騎士」


「ふふっ、私のことが気になる?

先生、嬉しい。 ここまで立花君が興味をもってくれるのは私が初めてなんじゃない?」


「ふざけるな」


「ごめんなさいね、ふふ。

でもね、立花君。 今のあなたに私のことを話したところで、物語にはなんの変化もないわ。

…いずれあなたは知ることになる。

私のことも、自分のことも、世界のこともね」


……こいつ、何を言ってやがるんだ?

物語? 世界のこと?


「おまえ、何を言って」


「ほら、これ」


そう言って、先生は俺に腕輪のようなモノを手渡す。


「…これは?」


「それはゼロ・ブレス。 あなたも聞いたことはあるでしょう?」


「…確か、能力を使えなくする腕輪だとか」


「その改良型がそれ。 普通は自力で外すことのできない代物だけど、君専用に外せるようにしておいたわ」


俺は貰ったゼロ・ブレスを腕につけてみた。

…確かに、オーラを一切感じないし久しぶりに普通の人間に戻った感覚だ。

俺にとっては嬉しいが。


「あんたになんの特があるんだ? 俺の知りたいこと、欲しいもんはこんなもんじゃない。

もっと単純なこと、あんたのことだ」


「あら、ナンパしているのですか? 立花君も大胆ですね」


「だからふざけるなと」


だが、そこで白石先生は体を反転させ、教室をあとにしようとしながら


「言ったでしょう? いずれ解ると。

ことを焦っちゃいけませんよ。  あなたはこの物語の主人公。 貴方も世界も物語も貴方自身によって決まる。

…頑張ってね、ユウ君」


…。

さっぱり訳が解らなかった。

オレが主人公? 冗談は勘弁してくれ。

魔王だのなんだの言われちゃいるが、俺は高校生だぜ?

しかも、何日か前まで俺は無能力者だったんだ。

神だの魔王だのいるこの世界を、俺が動かすだって?


俺に何ができるって言うんだ?

もしそうだとしても、俺は静かにひっそりと暮らしたいんだ。 そんなのはゴメンだぜ。

…まぁいい、そんなことより腹が減った。

俺は早速、パンの封をきる。


「…」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ