立花君って
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「さて、用も済んだし俺も昼飯を食べるとしよう」
清水と唯を見送ったあと、屋上から教室へと戻り昼食を取ろうと考えていた、のだが。
「……あれ?」
弁当が入っているであろうスクールバックをあさるが、弁当が一向に見当たらない。
しかし、冷蔵庫にあった残り物をひたすら弁当箱に詰めた記憶はある。
……なら、考えられることはひとつしかない。
「はぁ~。 忘れてきたのかよ」
俺はモーレツにテンションがダウンしていた。
家に弁当を忘れてしまったことに気がつき、机に突っ伏す。
□ ■ □ ■
一方、遊の家では。
「おぉ、これはお弁当~!!
まさか、魔王様~。 私がお腹を空かせていることを見越してお弁当を~?
……感激です~!!
これは残さず食べなくちゃ、ですね~!!」
□ ■ □ ■
……今、マヤが俺の貴重な弁当を食べてしまうというなんとも恐ろしいイメージができてしまったんだが。
やめてくれ、これ以上俺を痛めつけるのは。
空腹、屋上でのやりとりでの疲労感、今のイメージでの絶望感。
……なんだよ!? パンツがいけなかったのか!? パンツ見ちゃったからか!? すいませんね!! 一人で美味しいとこ見ちゃって!!
俺は、弁当を諦め机に突っ伏し貴重な昼休みを睡眠時間へと変えることにした、んだが。
「おっす!! たっちばっな君!!」
それさえも遮られた、小さな教師によって。
「なんだ、白石先生か」
俺が椅子に座っているのにも関わらず、程よい感じの目線でしゃべれるその小さな身長と、なんとも愛らしいくらいの子供っぷりが特徴の女教師、白石 江里先生(通称:江里ちゃん)だ。
「なんだとはなんなのですか~。 構って欲しいのです~」
「いや、あんた教師だろ。 子供かよ?」
「教師です」
「解ってるよ!?」
ったく、調子狂うな。
授業とか、HRん時は真面目な先生なんだが、それ以外は子供丸出し。
生徒と遊んでいたりだとか、幼稚園の子でも知っているような<○○っていいな>を鼻歌で唄いながら笑顔でスキップしていたり、休日に公園で砂山を作って遊んでいたなんて噂も……。
とにかく子供らしさが消えない人だ。
まぁ、そこが生徒から人気がある理由なんだろうけど。
「先生、かまってちゃんは別にいいんだが……もっと大人びることはできないのか?」
「立花君? 私のことは江里ちゃん、ってよんで欲しいのですよ」
そういうところが子供っぽいというのに。
「それに、私は大人ですよ?
一人でお料理できますし、一人でお買い物できるし」
……だめだ、この人には何を言っても通じそうにない。
というか、会話成立してんのか? これ。
「まぁ、いいですけど。 俺に何か用ですか?」
「おい、見てみろよアレ」
「あぁ。 江里ちゃんが立花君と話してるな。 あいつ、またなんかしたのか?」
「立花君、意外と問題児だしね。 無能力者なのに」
こそこそと周りで喋り出す、関わりのないクラスメイト達。
無能力者はそう言われても仕方ないが、俺はいつから問題児扱いされてるんだ?
洋介の間違いじゃないのか?
「だって、あの天草陽介といっつも一緒だったじゃない? それは問題視されても当然だよね」
「そうそう。 あの変態とね」
「女子更衣室とか女子トイレだけじゃなく、プールまで覗いてたらしいよ」
「嘘ー? 立花君、かっこいいのに」
「変態の友達は変態なのよ」
嘘付けーー!!
どこだ!? どこでそんな情報を手に入れたんだ!?
あれはあいつが勝手にやったことだ。
なんか、乙女の花園は男が荒らすためにあるんだぜっ☆彡、とか言って勝手に洋介が突っ込んでいっただけだ!?
俺はちゃんと教室にいたぞ!?
「立花君? 聞いてますか?」
「あ? あぁ、すいません。」
どうやら、周りの話が気になって先生を無視していたらしい。
こりゃ、悪いことをしちまったな。
「んで、俺に何か用があるんでしたっけ?」
ニコニコしながら、ただ構って欲しいだけで俺のところには来ないだろう。
……この人ならやりかねないけど。
「ええ、実は」