人助けなんてやってもろくなことになりゃしない
勝負に負けた遊は、教室へと足を向けていた。
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教室に戻ると、授業は終わっており、クラスメイト達は下校を開始していた。……まぁ、チャイムが鳴ってたからな。
俺も、それに従い、下校の準備を始める。
「遊。一緒に帰らねぇか?」
と、陽介に誘われたが、俺は、夕飯を買いに行く、と言って断った。
そして、帰る準備の整った俺は、鞄を持ち、一人、商店街へと向かった。
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「……商店街に来ても、思い出せないな。」
時刻は四時を回ったというところだろうか。 いまだ、空は明るい。
事故のあった場所に来てみて自分が記憶障害であることを、初めて実感した。 何も覚えてないのに、周りが騒ぐからな。 嫌でも実感してしまう。
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時刻は六時前後。 ようやく日も落ちてきて、空の色も青から、オレンジ色へと、姿を変えていた。
買い物を終えて、近道をしようと、裏道から帰ろうとする。、と小さな女の子が一人の男に迫られていた。
……何だ?このアニメみたいな展開は? うちの制服きた女の子が、白いスーツをきた男に迫られている。
「……はぁ、面倒だな。」
ただでさえ疲れているのに。 最近の事故、事件のエンカウント率が高すぎる ……しばらく様子をみるか。
「ここまでだよ。 君の力を使ったとしても、私から逃れられない。 ……死んでもらう。」
……どうやら、時間がないらしい。
「しゃーねぇーな。」
俺は夕飯の材料をもったまま駆け出す。
「!? なんだ?」
男の横をすり抜け、女の子の手を掴んだ。
「・・・こっちだ。」
女の子は抵抗することなくついて来た。 制服や状況を見て判断したのだろう。
俺達は裏道を抜け、何とか男を撒いた。
「……」
「あの、ありがとう。助かった。」
小さな女の子はそういって俺に頭を下げた。
「……別に。たまたま通りかかっただけだ。」
素っ気なく振舞いつつ、買い物袋の中身を確認する。
……卵だの、米だの、魚だのがすべて混ざり合い、カオスな世界になっていた。
「……。」
流石の俺も涙目である。
「あの、よかったら夕食一緒にどうですか? 私、美味しいところ知ってるんです。」
「本当か!? ……あっ、いや、しかし……」
家にはマヤがいるんだった。 あいつの食べ物も作ってやらなきゃいけないしなぁ……
「……ちょっと家に寄りたいんだが……大丈夫か?」
……なんか、周りの人が聞いたら、って思うとヤバメの発言だな。
「別に私は構いません。 大丈夫です。」
……まぁ大丈夫か。
「私も一ついいですか?」
今度は少女の方から質問された。
「私が聖騎士側だと言っても……驚きませんか?」
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それから俺の住む学生寮へと向かった。 少女には、外で待ってもらい、俺はマヤに事情を説明する。
「
私は何でも食べれます~。そのぐちゃぐちゃのご飯でいいですので~、魔王様は楽しんで来てください~。」
「いや、でも」
「いいですから。こういう時は空気を読むべきですよ?魔王様。」
語尾を伸ばさずにしゃべるマヤ。
……? 何を言っているのかさっぱりわからなかったが、俺は少女と二人で食べることにした。
そして着いたのは小さな定食屋。少々汚く、古い。 だけど、こういう小さい店ほど美味しいんだよな。 ……この子、よくわかってるなぁ。
中に入ると、俺達は四人席に座った。
「そういえば、俺金をほとんどもってないんだが。」
「大丈夫ですよ。ここ、私の友達が働いてるのでお金いらないんですよ。」
先ほどとは違い、にこやかな表情で話す少女。
……いいのか?払わなくて。 そういうのって結局、働いてる子が負担するんじゃないか?
しかも、男として、かなり情けない気もするんだが……
「申し遅れました。 私は梶原 唯と申します。 見ての通り貴方と同じ高校の一年ですよ。 立花先輩。」
少女の名は、梶原 唯。 うちの高校の一年で、俺の後輩らしい。 身長は……白石先生よりも低く、130cmくらいか? 金髪でショートカット。 陽介に言わせれば、萌え~~~、とかいうくらいの幼女。 ……身長も、顔も。 性格はきっと明るいのだろう。 さっきの笑顔で解る。
だが、不自然な点を感じた。
「……何で名前を知ってんだ?」
この子とは初対面のはずだ。 なのに、おれの名前を知っている?
「まぁ、順を追って話していきましょう。 まず、私は聖騎士側の人間でした。」
さっきも言っていたな。
でも、でした? ……過去形か。
「ですが、一年前、ある実験を見てしまったため、私は聖騎士側から離脱しました。」
唯は下を向く。
「実験?」
「えぇ。 それは……人体実験。」
……。 俺は耳を疑った。 俺の聞いた話によれば、三勢力の中で医療、機械系技術が一番発展しているのは人間。その人間でさえ行えない人体実験を聖騎士達が行えるはずがない。