黒い龍と青い龍。
…屋上…
そのまま清水に屋上まで引っ張られた。
もちろん、引きずられたまま連れてこられた俺は、心身、服共にズタボロの状態だ。
……珍しく他クラスへ行ってみたら、これだ。
やはり、学校をウロチョロ動き回るべきではない。
「全く、貴方は何をしているんですか!? 珍しいなと思えば、ナンパですか!? 貴方の方が変態じゃないですか!!」
……ただいま僕は、屋上で正座させられている上に、清水の説教を喰らっている状態。
その横では、唯が楽しそうにしている。
この状況で楽しそうって、どんだけサディストなんですか!? 唯さん!!
唯はどうやら清水と同じクラスだったらしく、清水の様子を見て俺たちについてきたようだ。
……ってか俺、なんか悪い事したか? ただ、一年の教室の前を歩いてただけなんだが。
「……なんで私がこんな男に……」
清水が小さな声で何かをつぶやいた。
「ん?」
「なっ、何でもないです!! それよりも、あんな所で何をしていたんですか?」
どうやら説教も終わったようで、
早速、本題にうつる。 清水に相談する予定だったが、まぁ、唯にも聞いてみるか。
「いや、二人を探してたんだがな? そしたら、一年生に捕まっちまって」
少し言い訳くさいか? つーか、本当のことだから言い訳云々とか言ってもしゃあなしなんだけど。
「私は、遊兄さんを信じてましたよ。 ナンパなんてする人じゃないですよね」
とりあえず、唯は信用してくれたみたいだな。 だが、清水はプルプルと震え出し、
「……唯には、……兄さんと呼ばせるなんて……」
そういって、清水は鬼のような形相で俺を睨みつけ、刀を取り出す。 ・・・おい、まてまて? まさかこいつ、また勘違いしてないか? しかも刀まで……まさか!?
俺の予想通り、清水は居合の構えにはいり、
「まてまてまて!? 話せば解るぞ!!
……だから、とりあえず、な?」
「うるさい! 問題無用です! 水龍閃!!」
「だぁ~~~!? ただの居合切りで、なんで水龍がでてくんだよ!?
水をどっから出した? 水をーー!?」
「オーラです」
「なんでもありかー!?」
清水が刀を抜くと、剣先から水龍がゴォーーーという唸り声を上げながら、俺目掛けて向かってくる。
俺は必死に水龍から逃げようと、全力で逃げ回る。
コイツ、本気で俺を殺しに来てるんだけどーー!?
そうだ! 唯にどうにかしてもらえば。
「唯ーー!! なんとか清水を執り成しーー」
「あはははは、面白い! ふふふふ、お、お腹、お腹痛いよ(*´∀`*)」
「おいーー!! あんたのツボはなんなんですか~!? 普通の人のツボを半回転させちゃってるんですか~~!?」
俺が必死になって、逃げ回っているというのに、唯はお腹を抑え、地面を転がりながら大爆笑していた。
「おい!! 清水!! マジで死ぬ! ヤバイから、本当に!!」
「そのまま、罪を償いなさい!!」
なんの罪なの!? さっぱりだよ!
水龍はどこまでもついてくる。 俺は縦横無尽に逃げ回っていたが、所詮は屋上。 追い詰められるのは時間の問題だった。
しゃあねぇ。 確か、構えは……こう、だったな。
俺は急停止し、後ろから追ってくる水龍と相対する。
そして、異空間より不知火と戦ったときに使用した剣で清水とおなじ、居合の構えをする。
「黒龍閃!!」
清水とまるで同じ構え、振り方でやってみると、同じ黒い龍が姿を現し、青い龍を打ち消した。 (ちなみに、名前は俺のオーラが黒いため、そこだけをアレンジした。)
「私の水龍閃が」
とりあえず、一命を取り留めた俺だったが、再び清水は、居合の構えに入る どうやら、技を打ち消したことがまずかったみたいだ。
「おい。 ちょっ!? まて!!」
俺は、急いで止めようとしたが、清水は止まる気はなく、再び水龍閃を放つ。
おいおい、また追いかけっこか?
勘弁して欲しいぞ?
「水龍閃!!」
仕方ねぇ、相殺を続けるしか。
俺はもう一度、構えに入ろうとしたが、
「遊兄さん、私に任せてください」
笑い転げていた唯はいつの間にか俺と水龍の間に割って入っていて、水龍と対峙する。
「∴∞£#&%§℃」
日本語でも外国語でもないような言葉を、唯はつぶやくと、唯を守るかのような盾が現れ、水龍を吸収した。
そして唯は笑顔で清水の方を見つめ、
「……怜香ちゃん?……人の話は、ちゃんと聞くものだよ?」
そういうと、唯から禍禍しいオーラが。
「!?」
唯がしゃべると、清水は我に返り、ぶるぶると震え出した。 まるで、唯に怯えているかのように。
「怜香ちゃん、返事は?」
唯は笑顔で、清水に問い掛け、
「あっ、はっ、はい」
と、清水は怯えたまま、受け答えをした。
……やはり、女の子は怖いな。 特に、唯を怒らせるのには気をつけておこう。
というか、助けるならもっと早くしてくれ。
死ぬとこだったぞ。
「それで、何かお話があったんじゃないんですか?」
ようやく、通常通りの唯に戻り、話の続きを再開する。
「あ、あぁ」
唯と清水に、今日の朝の事(本題)を話してみる。