階段は痛い
時は進み、昼休み
俺はいつも通り、午前中の授業を全て、睡眠という名の現実逃避でやり過ごし、昼休みを迎えていた。
普段ならばここで屋上に直行なんだが……さっきの新山とのやり取りをどうするか、とりあえず清水の所に行かないとな。
俺が自分以外の学年……というより他クラスに行くことは珍しい。 むしろ、初めてである。
この学校は全4階建て。 俺たち、二年のクラスが四階、三年が一階、一年が二階という構造。
そして俺は朝学校に登校し、一階から四階に行き授業を受ける。そして屋上へ。
屋上→四階→屋上→……という感じを一日に繰り返す。
つまり、一年や三年の階に行くことなどないのだ。
俺はめんどくさくもある長い階段を下りていき、二階へと向かう。
清水のいる階、二階までいくと、周りの一年生から注目をうける。
まぁ、それもそうか。
普段来ないような先輩が来てるんだからな、注目受けるよな、そりゃ。
……それに俺は無能力で有名。
一年生からしてみれば不思議でしょうがないってわけだ。
俺は一年生たちの視線をよそに、考え事を始める。
そういや、清水って何組みだ?
……。
どうしようもねぇじゃねぇかぁ!!??
来てみたはいいものの、クラスが解らねぇ!?
最悪だァ!! 今更、引き返す訳にもいかねぇし。
俺が頭を抱え、激しく悶えていると見知らぬ女の子達がよってくる。
「あの、……立花先輩、ですよね?」
その中の一人の女の子がモジモジしながら話しかけてくる。
……? なんで知ってるんだ?
どっかで会ったっけ?
「あぁ、そうだが?」
いや、無いな。
俺は普段、教室から出ないし、部活だってやってないし、知り合いは少ない。
あまり目立った行動だってしてないはずなんだが?
「えっと、あの、握手、してもらってもいいですか?」
……は?
「いや、あの、いいけど、なんで?
しかも、名前まで」
いきなり、女の子から握手していい?と聞かれればうれしいが、疑問に思うだろ?
だって知らない女の子からだぞ?
「多分、立花先輩のことを知らない人なんていないと思いますよ。 無能力でこの学校の特待生で入って、無能力にも関わらずあの不知火先輩に勝ってしまったんですから」
はいはい、なるほどね。
どうやら、俺のわけわからん噂は有名から、学校で名を知らない者はいないほどになってしまったらしい。
悪意は無いんだろうがこの子、無能力、無能力と連呼されると……意外とへこむものだな。
まぁ、無能力でも無くなったから対して気にはならないが、嘘をついていることに対して、俺の良心は傷つく。……いや、ホントだぞ?
それに、知らぬ間に俺の噂には尾ひれがついているらしいな。
屋上での出来事が噂に加算されただけではなく、誰が言ったかもわからないが 俺は不知火に勝ったことになっている。
大体、あの時のことは勝ち負けなんてあったのかもわからないし、どちらかと言えばあれは俺の負けだ。
だが、まぁ、有名ね。 ……無能力だったことが逆に目立っちまったか。
とりあえず、その女の子と握手しようとすると女の子たちの後ろにいつの間にか、清水が鬼の形相で立っていた。
あれ? 俺、何かまずい?
とりあえずここは軽い感じで。
「よう、清水。 探したぜ」
すると清水は
「ちょっと来て下さい!!」
と言うなり、俺の腕をがしっ、と掴み俺を地面に引きずりながら、屋上へと向かっていく。
「おい、清水!! 痛い!! 痛いよ!? なんで怒ってんの!?
……おいっ!?チョッ!! 階段はまずい!!
階段はまずっごぁが!! がっ!!、ごぉ!!」
……言わずとも、俺は階段でボコボコにされながら、屋上に連行されていった。