意思を託したもの、托されたもの 3
「兄さん、お話の続きですが」
俺たち天草兄妹は、リリーの元へ向かうべく街道を外れ森の奥深くを歩いていた。
さすがに事件直後ということもあり、本部に鮮を一人残すということはできずこうして俺と鮮の二人でリリーの元へと向かっているわけだ。
本部に京子ちゃんと鮮を残してくれば一番良かったのだが、頑なに鮮が行きたいというので俺は仕方なく連れてくることにしていた。
「はいよ、どうしたの鮮?」
「こんな昼間にお伺いしてよろしかったのでしょうか? こういった内容のお話は、夜にひっそりと赴くものでは?
というより、かの有名な英雄リリー・アブル・フェイス姫が本当に生きておられるのですか?」
鮮は頭に?マークを浮かべ、不思議そうな目で質問する。
本部を出たときもそうだったみたいだが、鮮はリリーに対してかなりの興味を示している。
確かに昔、リリーが出たニュースを食い入るように見ていた記憶があるが。
……そういえば、あの場に鮮はいなかったな。 だから、鮮はリリーのその後を知らないのだろう。
「いっぺんに聞かれると困るんだけど……とりあえず生きてるよ」
と言って、俺は話し始める。
「まず、歴史的出来事でリリーの最期のことは知ってるか?」
「えぇ、それはもちろんです。
勇敢にも魔王に戦いを挑み、最期まで自分の信念を貫き通したゼブラ王国最期の姫、リリー・アブル・フェイス。
ですが、彼女はその戦争に敗れた五年前、国と一緒に魔王によって消された、と」
自信満々の様子で問いに答える鮮。
我が妹ながらよく知ってるな。
京子ちゃんが教えた……ってわけでも無さそうだな。
生存のことは知らなかったみたいだし。
「そう、一般的にはそう言われてるし、学校の教科書にも国と消されたとされ彼女は死んだ、とされてる」
「そうではないんですか? 実際に戦地へ赴いたこともありますが、あそこには湖しかありませんでしたよ」
「確かに国が消されたのは事実だ。
鮮が言ったように魔王の力によって国一つ消滅して今じゃでっかい湖ができてやがる」
「なら」
「が、話はここからだ。
消滅はさせたさ、魔王がな。 でもそれはいつだ?」
「ええっと、魔王軍とゼブラ軍が戦った後、ですか?」
「そう、そういうことだ」
「??」
未だ何が言いたいのか理解できていない鮮。
まぁ、仕方ないよな、説明が足りなさすぎる。
「んー、んじゃ観点を変えてみてくれ。
湖の大きさを見て魔王の能力の規模は解っただろ? 国一つ消し飛ぶ位だ。
なら戦闘中に能力を使うと思えるか?」
「いえ、自軍の兵士もいますしさすがに戦闘中は」
「だろ? なら、魔王は近くで能力は発動させられたか?」
「それも無理でしょう。 自分も消し飛んでしまいますから」
「なら、姫が死んだかどうか確認できないだろ? これで姫が死んだかどうかは解らなくなったぜ?」
そう、魔王はといういうより魔王軍はリリーの姿も見ずに勝手に死んだと、嘘偽りを国民に教えているのだ。
とはいえ、これだけではまだリリーが生きているということにはならない。
姿を見なかっただけで、リリーが国と一緒に消えたということもありえるからな。
「でも姫の姿を見なかっただけで、一緒にということもあるんじゃないんですか?」
「まぁな。 そこで、もう二つヒントだ。
いいか? 魔王軍は敗北したゼブラ軍、っていっているんだぞ?
更に、俺は戦地で戦っていた。 もちろん京子ちゃんも怜香もな」
「え、えぇ」
またも疑問が浮かび上がってきて、頭が混乱している我が妹。
そもそも目的地に着いてさえしまえば、こんな説明もしなくてはいいのではないのかと思ってしまう。
我が妹を苦しめるこの解りにくい説明、我ながら恨めしい。
説明が下手くそですみません゜(゜´Д`゜)゜
文章力がupするよう努力します。