覚醒と半覚醒
遊によって跡形もなく消された館の廃墟で何かを探すかのように歩き回る、黒い男の姿があった。
前にも同じようなことがあったはずだ。
ならば、前と同じ男なのだろうか?
私たちには、未だ解らない。
男は黒いマントの懐から通信器のようなものを取り出し、誰かと話し始める。
「{……結果は解ったのか}」
若い青年のような声が通信器を通じ、男に問いかけてくる。
「えぇ。 奴の推薦した男達ですが……順を追って報告しても?」
「{あぁ}」
「天草家の次女を誘拐し、長男を下につけ、ターゲットをおびき寄せることに成功。
長男とターゲットを戦わせ、止めをさすところまで追い詰めましたが、敢無く失敗。
伝令通り、ターゲット以外を逃がし、自らがターゲットにあたろうとしましたが、半覚醒状態のターゲットに何もできず、消されました」
「{……半覚醒? 覚醒したわけではないのか?}」
「はい。 意識の残っている状態であの力を発動させた、と」
「{意識が残っている状態で力を扱えただと!?
馬鹿な!? まだその域には達していないはずだ!!}」
「そのことについて、気になることが」
「{……なんだ?}」
「はい。 どうやら、その時のターゲットの様子がおかしかったと」
「{おかしい? 覚醒状態になったわけではないのか?}」
「それが、言動がコロコロ変化したり、オーラが不安定だったり、ある言葉で膝をついたり」
「{ある言葉?}」
「はい。 分析によれば[バケモノ]という言葉で」
「{……いや、待て?……ふふっ、なるほどな}」
「いかがなされました?」
「{いや、よい。なるほどな、半覚醒か。
まさにそのとおりだな、ふふっ。}」
「どういうことです?」
「{いや、自らの呪縛は解かれつつあり、さだめの時はそう長くはないということだ}」
「……? はぁ」
「{くっく、よいのだ、こちらの話だ。
……あやつは良い働きをした、丁重に弔ってやれ}」
こうして謎に包まれた会話は、おわりを告げてゆく。
久しぶりの更新です(-^〇^-)
なぜ遅れていたのか?
それにつきましては活動報告の方でグー(^-^)g""