兄に似つかない妹
館近くの公園
遊を待つ陽介たちは公園から動けずにいた。
「今、館から凄い爆発音が。 行かなくていいんですか 兄さん」
館方面から聞こえた、巨大な音に反応する鮮
「……。大丈夫だろう。 遊が今まで、約束を破ったことはない。 それに……」
冷静な口調で答える陽介。 その言動には確かな自信さえ感じられた。
「それに?」
「あの腕」
「? 腕?」
「……いや、なんでもない。」
何かをつぶやいた陽介だが、はっきりとは話そうとはしなかった。
「しかし、このままここにいても埒が明かないのでは?」
鮮を後押しするかのように清水は言う。
「怜香。 そうですよ、このままじゃ埒が明きませんよ」
「だけど、今うごいても、立花の邪魔になるでしょうね。」
だが不知火は、否定を示す。
「そんな、京子さんまで……」
「私だって立花が心配ないわけじゃない。 けれど、だからといって立花を助けに行く?
仮に立花を助けに行ったとして、立花を助けたとしましょう。
だけど、あなたが捕まったとしたら? 可能性はゼロじゃないでしょ?
あくまでも私たちの目的は鮮、および陽介の救出、護衛。
私の言いたいこと、鮮……解るわよね?」
鮮は不知火の言葉を理解したのか、自分の無力さを感じ、うつむいてしまう。
「(確かに、鮮や怜香の考えはもっともだ。 俺だって当然、遊が心配だ。 だが、今は遊を信じるしかない。 もし、今助けにいって、もう一度、鮮が捕まりでもしたら、それこそ最悪の状況だしな。
それに今の俺はリーダーなんだ。あのときの俺とは違う。迅速に、的確に、判断しなきゃいけないんだ! ……たとえそれがどんな未来を招こうとも)」
鮮に続き陽介まで下を向いてしまい、しばらくの沈黙が続く。
……。
「仕方ない、助けに」
「その必要はねぇぞ。」
陽介が切り出したとき、公園の入口から聞き慣れた声がした。
「遊!!」
■ □ ■ □
陽介は、館から戻った俺に抱き着こうとするが、
「おれにその気はねぇ。」
と、華麗に避け、陽介はそのまま道の壁に突っ込んだ。 壁に頭が食い込んでしまった陽介は、一人で、ウゴゴゴっ、と唸っていた。
「(すごいなあいつ。頭からコンクリの壁にモロに突っ込んだのに、まだ意識があるのか)」
俺は、陽介の耐久力に感心しつつ、清水達に向き合った。
「……全員、無事か?」
「えぇ。あなたのおかげでね。」
よかった。 全員無事で。 不知火も、オーラがへってるが、大きな怪我はしてないみたいだしな。
「遊さん、ホントにありがとうございました。 」
茶髪ロングで清楚さ抜群の少女が俺にぺこっ、と一礼してくる。
この娘が陽介の妹か。
……似てねぇ、見れば見るほど似てねぇよ。 どうすれば兄貴と妹でここまで違いが浮き彫りになっちまうんだ!?
だってこの娘の兄貴は、あそこで壁に頭突っ込んで、足をじたばたさせて、下ネタ連発して、二次元の話ばっかして女子に引かれてるダメ兄貴なんだぜ!?
……ってか、陽介。 妹の前でアホ丸出しじゃねぇか。
対して妹さんと言えば、茶髪でサラサラの髪の毛を靡かせて、顔もコンパクトで、スタイル抜群で、胸だって……不知火や清水に劣らないくらいだし。
「あの……遊さん。そんなに見つめられると、私……」
どうやら、妹さんの体を観察していたのがばれてしまったようだ。
……ってか、何やってんだ? 俺は。 変態じゃねぇか。
「あぁ、わるい。別にそんなつもりはなか」
「……立花先輩?」
「……立花?」
いつの間にか、俺の後ろには相性最悪の不知火と清水が立っていて、俺の首の左右に刀とグランオルグが突きたてられていた。
「すいませんほんとにごめんなさいその気はなかったんですほんとです信じてください冤罪です。
ってか、二人とも笑顔が怖いんだけど!? 笑ってないよね!? 心が笑ってないよね!?」
やばい殺される。
もうすでに首の皮切れてるんだけど!?
全身から冷汗があふれ出てくる。
「「ちっ」」
二人はそれぞれの武器をしまい、揃えて舌打ちする。
かなり息合ってるんだが。相性悪いの嘘だよな?
しかも舌打ちって。 なんなの?
「……遊さんになら……見られてもいいのに……」
「ん?」
「いえいえ!! 何でもないです!!」
顔を真っ赤にし、あわてて答える妹さん。
? 声が小さくてよく聞こえなかったんだが。
なんて言ったんだろうな。
「それより遊さん。 前に私とお会いしたことありませんよね?」
不意にそんなことを質問される。
妹さんと? 俺が?
……。
「いや、初対面のはずだが?」
「そう……ですよね」
何かが気にかかっている妹さん。
んー、かといって、妹さんとは初めて会うはずだしな。 こんなに可愛い子なんだ。 忘れるわけはない。
「「ん?」」
……こえぇよ、あの二人。
俺の心でも読めるって言うのか?
未だに冷汗が引かない遊だった。
フラグビンビンの遊。
うらやましい!! おれにもよこせぇっ!!
……空しくなってくるので、この辺でやめときます(ToT)/~~~
さて、今回のお話ですが……何と重大発表が!!
実は鮮が……
サブキャラからメインへ!!
おめでとう(●^o^●)
いや、本当ならこのお話だけしか登場しない鮮でしたが、
こんな可愛い子を使わずしてどうする!!
ということで、これからも活躍していただこうかと。
……まぁ、活躍と言っても、後半の方ですが。
ではこの辺で(^-^)
追記
遊が館で鮮と会っているのに、この場面で「この娘が」というのは、間違いではありません。
仕様です。