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Eternal wish   作者: キッド
序章:始まりのようで、終わりのようで<始>
2/83

小さな悪魔の女の子

「……ん?」


気がつけば、ベッドの上だった。

知らない場所、知らない景色、白く広い空間に、俺は一人ベッドで仰向けになって寝かされていた。

どうやら此処は病院の病室。

しかも折れ一人しか部屋にいないということは、かなり特別な病室。

いわゆる隔離ってやつか?


いろいろと考えていると病室についている自動ドアが開く音がして誰かが入ってきた。



「おや? 気がついたようだね」


白い白衣の男……つまりこの人は医者?


「……」


状況がまるで理解できない。 さっきまで街中を歩いていた気がするんだが?



                 →↓←↑



今、俺は家へと帰宅中だ。


「(まだ、実感がないな。)」


一言で言えば記憶喪失らしい。 どうやら女の子が横断歩道が赤でもあるのにもかかわらず歩道に飛び込むというところに俺は直面していたらしく、何を思ったのか反対側の歩道に居合わせた俺は女の子を助けるべく、俺も飛び込んだ。

走ってきたトラックに気づかない女の子を俺は飛び込んで女の子を抱え込み、なんとかトラックをは回避できたものの、とび込んだ勢いで頭を地面に強打し、記憶障害となったらしい。


ただ、俺の記憶喪失は軽度のものらしい。記憶喪失には大きくわけて三つあり、一つは思い出を全てなくすもの。

一つは知識とおもいで両方をなくすもの。

そして最後は俺のうけた症状……衝撃を受けた前後の記憶と一番大切な記憶をなくすことである。


だから、俺は事件前後の記憶がない。思い出せたとしても不知火が俺の後ろをつけていたことぐらい。

それはいい。でも、『大切な記憶』とは何だ?

大切な記憶というのは解らない。あったのかさえも。

何故、大切な記憶がなくなるというのかというと、大切=常に忘れることはない+常にそのことを考えている。ということらしい(医学的に)。


例を挙げると、大切なものほど身近にあり、大切でないほど身近にない。身近にあれば思い出しやすいが、それと同時に傷つき易いということだ。


外殻=大切 内殻=大切でない とかんがえたとき、外からの衝撃を一番受けやすいのは外殻である。つまり大切なものほど思い出しやすいが、衝撃もうけやすいということだ。

しかし、さっきもいったが俺に大切な思い出があったのかさえわからない。

ちなみに俺が起きた時には事件から一日経っていた。


                 → ↓ ← ↑


「(もういい。考えるだけ無駄だ。)」


帰宅途中、無駄なことを考えているうちに、家についていた。

俺の家は、中々のアパートで、学校から借りた、いわば学生寮というやつだ。 学生寮は、二階建てで、そこまで大きくない。  とはいっても、全ての部屋がうまっているわけでもない。

むしろ空き部屋が多い。  なぜなら、自宅に住んだり、一人暮らしをしている学生の方が多いらしいからだそうだ。  ……まぁ、いいけど。


オンボロともいえる領内に入り、階段を上って二階の突き当りを左へ行ってすぐに見えるのは俺の部屋、つまり205号室のドアを開けると信じられない光景を目の当たりにした。


「お帰りなさいませ。魔王様」


……なんか三寸ぐらいの小っちゃい人型の生物が羽をパタパタと羽ばたかせ、家の中から飛んできた。


「……すいません。家、まちがえました」


……俺の家じゃないよな、うん。  他の家の人がペットでも飼ってるんだろ。

変な生物が宙に浮いているのを受け入れられるほど、俺の心はファンタジックじゃないんだ。

だが、ドアにはナンバープレート、部屋番号である「205」と書いてある。

……どう考えても俺の部屋、だよな?


「魔王様~!!  部屋はここであってますよ~!」


小さい生物は俺が閉めた扉を開け、俺を引き止めてきた。

ってか、このちっこい形でどうやってドアを開けやがったんだ!?


「うそつけーー!!。むしろ夢か?これは夢なのか? だから記憶喪失だの魔王だの、訳のわからないことになってるのか?」


できればそうであってほしい。 もう、この世界は訳がわからない。

お願いします、夢であってください。 正直、こんな状況は俺の人生ではありません。


「残念ですが、現実なのです~。記憶喪失も、ご主人様が魔王であることも」


「そうだよな、早々うまくいかないよな。 だから俺が記憶喪失って事実も、魔王って事実も……あ?」


……今なんと言った?

ご主人様が魔王?

ご主人様って言うのは俺じゃねぇよな?

でも此処には俺しか……。


「一応聞いておくが、ご主人様ってのは」


「なにいってるのですか~?貴方しかいないじゃありませんか~」


目の前に浮かぶ小さな女の子?は清々しく笑っていた。


「いや、ほら幻覚が見えてたりとか、人違いじゃ」


「だから貴方ですって」


……。

俺が魔王ねぇ。 


「俺が魔王?……冗談なら他を当たってくれ」


「冗談じゃありませんよ~。正統な王位継承者です~」


「……」


俺が魔王ねぇ……どう考えたって冗談にしか聞こえない、てかありえないよな。

でもこうして人外の生物、小悪魔的な生き物がこうして空中に浮いている。

魔王がいるかいないか、そこで言えばいるのかもしれない……いや、実際にはいたんだろうな。


歴史の時間でだって魔王やら神やらが何百年か前に存在してたって話しだし、なによりオーラだの能力だのわけの解らない力だって存在するんだ、いまさら魔王だの神だのが存在すると言われても驚く要素が少なすぎる。


だからといって俺が魔王であることにはならないだろう、何せ俺は無能力者。

そんな力のない魔王が何処に存在するって言うんだよ。 ゲームだって漫画だって何らかの力は持ってるもんだぞ?  魔王だろ?

けどまぁ、嘘をつくような性格にはみえないんだよな……話を聞く程度ならいいか。


「わかった。とりあえず最初から解りやすく教えてくれ」


「わかりました~。」


とりあえず、部屋の中に入り、俺はベッドに腰を下ろし、その前に小さな女の子が飛んでいるという、何とも不思議な光景が広がる。


「とりあえず世界情勢を話しておきましょう。世界には三つの勢力が存在します~」


「いきなりだな……天使と悪魔と人間か?しかしあれは百年くらい前の話だと習ったんだが?」


「やはり魔王様は勉強も出来るみたいですね~。そうです。人間の間では」


間では?


「戦争が終わったのは確かに百年前です。ですが、それからも三つの勢力は平和条約を結び、いまにいたっているのです~。」


「天使と悪魔は滅んだと聞いているんだが……滅んで戦争が終わったんじゃなく、平和条約を結んだから戦争が起きなくなった、それが正史か?」


「えぇ。聖騎士と暗黒騎士の間ではそうなっています。」


「さっき、人間の間ではと言ったな? そして歴史が食い違ってるということは……どちらかが情報操作しているということか?」


「さすが魔王様です~。その通りです。天使側が情報を操っています~。何年も前から。人間の歴史全てを」


「全て?」


なにを言ってるんだ?……いや、違うな。そんなこと出来るのか?


「えぇ。まぁ、そうですね~。何か歴史の出来事を教えてくれませんか~?」


「……極悪非道な暗黒騎士軍が聖騎士の本拠に攻め込んだが、聖騎士は神の力をかり、暗黒騎士を退

けた……とかか?」


「えぇ。それも偽情報ですね~。元々攻めてきたのは聖騎士で、神の力なんてものは存在しません。」


……やはりか。押し付けがましい暗黒騎士側の意見だと思うが……


「情報操作しているのは、聖騎士側だと言うのは理解した。俺も神なんか信じたこと無かったしな。だが、一向に見えて来ない問題がある。そんなことをして、聖騎士側になんの得がある?」


そう。問題はそこだ。そんなことをしたところでなんの意味があるのか?


「魔王様は理解がよくて、助かります~。 うーん、そうですね~、・・・魔王様はなんでだとおもいます?」


……情報操作の理由?

俺が聖騎士側なら……


「ちなみに私達から先に動いたことは一度だってありません。」


? 何か関係があるのか? 人間に偽情報を流す理由……。先に動かなければならなかった理由……。……? そういうことか。


「先に聞いて起きたいんだが、情報を流した時、戦力的には五分五分か、聖騎士側が不利であったと推測しているんだが?」


「正解です~。」


……やはりな。なら、一つしかない。


「偽情報を流したのは、人間を戦力にしたかったから。 自分達を正義のように見せておけば、自然と聖騎士側の味方するようになるからな。 先に動かなければならなかった理由は、暗黒騎士側の意見を通さないため。 後から、違うだのなんだの言われても、人間は信じられない生き物からな。」


「……さすがですね。その通りです。実際もその作戦は成功しました。」


……語尾を伸ばさなくなった。どうやら切羽つまってきたみたいだな。


「だが、それなら暗黒騎士は……。」


「ただ、人間の意外性が私達を救いました。 正義を信じるものもいれば、悪に共感するものもいる。……まぁ、そんな策略を見抜いていた人間が、一人いたんですがね。」


見抜いていた? 情報を操作されたにも関わらず?


「それは?」


「それが魔王様のお母様ですよ~」


「……。」


「あまり驚かれないんですね~。」


「今更、その程度じゃおどろかないさ。」


今更、母さんだの父さんだの言われても……?

俺の母さんや父さん? どんな顔をしていた? どんな声だった? どこで一緒に暮らしていた? むしろ一緒に暮らしていたのか? わからない。 いや、それより、……俺は子供の時、どんな感じだったんだ?


「事件前後と大切な記憶を失ったはずだ。」


……いま、理解した。 どうやら大切な記憶とは、子供の時の記憶らしい。

俺が覚えているのは中学までで、それ以前の記憶がまるでない。 いや、思い出せないといったほうが正確か。


「……記憶喪失ですか~。なら、私からはお話しないほうがよろしそうですね~。無理に記憶を呼び戻すと、脳にダメージを与えると言われてますからね~。」


「……そうだな。それには今後、ふれないでおいてくれ。」


そう。失ったものは自分で取り戻すしかない。……めんどくさいが……。


「んで、俺は魔王なんだよな?けど、俺は無能力者だぜ?」


「大丈夫です~。むしろ普通といったほうがいいでしょうか?」


「普通?」


「えぇ。人間と我等は少し違うのですよ~。」


「?」


「あまり口では説明しにくいので、まぁ、そのうちわかりますよ~。ただ、人間は人間の能力。天使には天使の能力みたいに、それぞれの能力はそれぞれの種族にしかつかえません。」


「……。」


「ですが~、魔王様は特別です~。全ての能力を使うことができるんですよ~。」


「?」


何故だ?


「先代様、つまり、魔王様のお父様が暗黒騎士と聖騎士のハーフで、それに人間であるお母様の血もはいっているので。」


「なるほどね。」


「悪魔と人間のハーフなんて、歴史上二人しかいませんからね~。そこに天使の血も入ってるとなると……魔王様は歴代最強です~。」


「ハーフなんて、そうそう生まれるものじゃないんですよ~?」


「なんでだ?」


「根本的に数が少ないんですよ。 聖騎士勢力も暗黒騎士勢力も、大半が人間で、悪魔や天使は10人ほどですから。」


……あまり興味はない。


「んで、魔王っていっても、何したらいいか全くわかんないぞ?」


「いいえ、むしろ何もしないでください。」


「?それでいいのか?」


「先ほども言いましたが、いま、世界は均衡しています。むしろこちらが手を出してしまったら、再び争乱の世となってしまいますからね~。」


確かに。

こちらから動けば、それこそ戦争の幕開けとなりかねない。


「だが、わからない。 お前は、俺が人間の能力を使えないことが普通といった。だが、俺は三種類の血をもち、全ての能力が使えるのだろう? 矛盾していないか?」


「だから、昨日まで能力が使えなかったことが普通なのです~。」


昨日まで?


「そもそも、私はいつから魔王様の家にいたかわかりますか?」


……?


「俺は今日、初めてみたが?」


「……実は中学の時から貴方の横にいたんですよ。」


……大体理解した。


「つまり、今まではただの無能力者としての人間だった。ただ、昨日、何かがあって、俺は能力者として目覚めたと?」


こくり。と生物は頷いた。


「ただ、何が原因でタガがはずれたかは私にもわかりません。 一つだけいえるとすれば、今まで能力がつかえなかった理由は、貴方自身です。 幼少の時に、自ら封印してしまったようですね。 理由はわかりませんが。」


「……」


信じ難い話だった。

だが、生物が見えるようになったところや、話のつじつまがあっているため、信じるしかなかった。


「口で説明するより、実際にやってもらったほうが理解できそうですね~」


「まずは、自分の全てをさらけ出すみたいな感じにしてみてくれませんか~?」


俺は言う通りにしてみた。すると、身体から湯気のようなものが身体の周りに纏わり付いている。


「それがオーラです~。オーラは能力を使うときに必要だったり、物理攻撃時のパワー、スピードに比例します。ですから、オーラは多ければ、多いほどよいということですね~。」


「なるほどな。オーラを体内に納めることも可能なのか。」


「さすがは魔王様。覚えも早いですね~。ではこちらをみてください。」


生物は鏡に俺の顔を映し出した。

俺の瞳がが※を四十五度回転したような感じになっていた。


「それは、ディバインレリック。選ばれた者だけが使うことを許される眼。その眼でみるだけで、能力の起源がわかります。」


……魔王とはそんなに恐ろしい力を持っていても、勢力を一つにまとめることができないのか。


「私がお話出来るのはここまでです~。」


ようやく説明がおわり、俺はオーラとディバインレリックを元の人間の状態に戻した。 宙に浮く妖精?のような生物もつかれて、床に座った。


「そういえば自己紹介がまだだったな。俺は立花 遊。 遊ってよんでくれ。」


「私はマヤです~。魔王様」


……その魔王様というのはあまりいい感じではないが……まぁいいか。マヤは三十㌢ほどの体格しかなく、一般的な小さい悪魔みたいな女の子だった。


「さっきも聞いたが、俺はなにもしなくていいんだな?」


「えぇ。今まで通りの生活をしてください。 能力をやたらと使わなければ、問題はないですね~。」


それをきいて安心した。 面倒なことさえなければ、俺はなんだっていい。

今日はつかれた。 早く寝てしまおう。


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