やり残したこと
「あぁ、すまない。」
「とりあえず、俺が空間を歪めたら、そこから中に入れ。 そうすりゃ、一気に館の外……つまり、不知火を助けに行ける。」
俺はオーラを集中させ、空間を歪める。
外には不知火が一人で戦っているのだ。 早く助けにいかなければな。 ただでさえ、陽介は婚約者なのだからな。
「解りました。」
「はい。」
清水、鮮、共に頷き空間の中へとはいっていく。
「……陽介、早くしろ。」
陽介は未だ俺の作りだしたブラックホール?のようなものには入らず、俺のことを心配そうに見つめている。
「遊。お前は?」
「……まだ、ここでやることがあってな」
「やること?」
「あぁ、重要なことだ。 お前は早く不知火を助けに行け。 ……大切な人、なんだろ?」
未だ躊躇し、下を向く陽介。 全く、どこまでも優しいやつだな。
「大丈夫だ。 必ず戻るからよ。」
ようやく上を向いた陽介は、
「あぁ、お前を信じる。 近くの公園で待ってるから、必ず戻ってこいよ」
歪んだ空間へと走り出す。
このままいけば、ハッピーエンドというやつだろう。だが、現実はそうはいかない。
「……早く出てこいよ。隠れてんのはわかってんだからよ」
俺がそういうと、ぞろぞろと能力者たちが姿を現す。
そう、外で戦っている能力者達が。
「どういうことだ?」
不知火が……まさか、遅かったのか!?
「外ではちゃんと戦ってるぜ。 俺達の幻影がな。」
……驚かしやがって。能力か。
かなりの数の能力者達が集結していた。
……ざっと百ほどか。
「さすがは魔王の子、といったところか。 この人数を前にまるでひるんでないとはな」
首謀者と思われるその男が口を開く。
……マンガでいう、まさに悪役の顔立ちだ。