作戦決行
「……正確に言えば、今回はあまり、あなたの父親は関係ありません。」
?
「陽介は、軍での位が最高。 それを羨む者は多くいるということ。 つまり、たった十いくつの少年がその位についているということに納得する人間は多くないってことよ。」
「……大体理解できてきた。陽介は妹を人質のされて動けない。むしろ、誘拐側に操られている。 だから、魔王は、将軍クラスのお前らにこの一件を任せたって訳か?」
……。
沈黙の間が続く。 何故?
「いいえ。これは私達、独断の行動です。」
……なんだと?
「何故だ? 普通なら、魔王が問題解決の為にうごくものだろ?」
「だがら……普通じゃないのよ。」
「逆に魔王様は、「私の側近は、より強ければより良い。むしろ、この戦いに打ち勝った者こそ最高司令官に相応しいだろう」とおっしゃられておりました」
……それほどまでにか。
いまだ、俺の実父とは認めていないが……もしそうなら、こっちから願い下げだな。
普通じゃないどころか、王としてはまるで最悪だな。
まるで戦いのことにしか頭にない。 そんな感じだ。
「さて、そろそろ作戦の話を進めましょう。」
「あぁ、頼む。」
「まず、決行は8時。この時間に私達は、館に乗り込みます。」
……どうやら、監禁場所はどこかの館らしい。
「館内には、多くの兵士が見回っているはずです。 なので……不知火先輩には、大規模な戦闘をお願いしたいのですが……。」
「・・・いいわ。その方が単純で解りやすいしね。」
「その間に、私と遊さんで救出です。……大丈夫ですか?」
……まぁ、確かにシンプルな作戦だな。 しかし。
「了解した。 が、最後に一つだけ質問していいか?」
まだ、ひっかかることがある。
「何ですか?」
「見回っていると言ったな? それは何故だ?」
さっき聞いたが、陽介は館内にいるらしい。 だが、それなら見回ることなどせず、見張るだけでいいはずだ。
「……実は、あらかじめ不知火先輩が今日、館に乗り込むという情報を流しておきました。 つまり、警備は厳重ということです。」
……成る程な。シンプル過ぎる程にシンプルだな。
「了解。」
「……では、作戦開始と行きましょうか。」
……館前……
現在七時五十八分。 あたりは真っ暗だ。
……立派な館だ。 これ、忍び込むのは骨が折れそうだな。
清水が不知火に合図を送ると、不知火は館に飛び込み、館前の大きな庭で立ち往生した。
「いたぞ!! 不知火だ!!」
「さぁ、行きましょう。 遊さん。」
不知火が注意を引いているうちに館内に入る。 とりあえず、第一関門突破だな。
→↓←↑
……館前……
敵は百人程だが、所詮は兵士。 といえど、全員能力者ではある。
「お前も倒せば、将軍になれるってわけだ。」
兵士は殺気立つ。
だが、不知火は微動だにしない。
「いいでしょう。 来なさい。 炎槍グランオルグの錆にしてあげる。」
……館内……
「このホールを下に行けば、牢獄です。」
……何かおかしい。 館内がやけに静かだ。 いくら、外で敵の目を引いているとはいえ、この静けさはおかしい。
そう思って、ホールに足を踏み入れると、
「……来ちまったか。」
一人、立ち尽くす青年がいた。
「……陽介。」
陽介は黒い服、黒いマントを羽織い、手には大鎌をもち、黒いオーラを放っていた。
「お前、ホントに暗黒騎士だったんだな。」
「……あぁ。 きいちまったんだな。 あまり、知られたくはなかったんだがな。」
妹のことも、暗黒騎士のことも、革命のことも、……全部本当みたいだな。