妹救出作戦
「……不知火、お前は何やってんだよ」
声の正体は、この凛々しく薙刀を構えている少女、不知火 京子だった。
……ってか、後輩に後ろから切りかかるか?普通。 ……いや、前言撤回。 この学校自体普通じゃなかったな。
「……おや、不知火先輩じゃないですか。 一体、どうされたんですか? 相当、ご機嫌斜めなようですが?」
? 知り合いか?こいつら。 ってか、危ない二人が屋上に揃っちゃったんですが!?
「陽介を助けにいくんでしょ? 私も行くわ」
陽介?
「……私はまだ、何も言っていませんが?」
「立花を誘ったことで、話は全部理解できたわよ。 ……それに、あんたが動く理由がその件についてしかあり得ないし」
「……よろしいのですか? 互いに殺しあうかもしれないのですよ?」
「覚悟なんて、二年前のあの日からできてるわよ。」
?????
「あの~?お二方。 わたくし、まるでお話がわかっていないんですが? とゆうか、二人は知り合いですかぃ?」
「えぇ。まぁ、腐れ縁とゆうやつですね。 ……言い忘れてましたが、私達は暗黒騎士の人間です」
……えっ? ……いや、思い当たる節もあるな。 魔王ってことも知ってたしな。
「……マジか?」
清水は納得出来るが、不知火もか!? ……通りで。
「仲が悪いのは、能力関係でもありましてね。 私は水、不知火先輩は……まぁ、解りますよね?」
……なるほどね。 人間関係にしても、火と水は相容れないってことか。
「……まぁ、無駄話はここまでにして、行きましょうか。 不知火先輩も来てください。」
不知火は仕方ない、というような顔で頷いた。
「ちょっと待て。俺はまだ、手伝うとは言ってない」
「……陽介さんが大変なのですよ?」
少々、怖い顔で反応した。 陽介が、ね……それも、ついていかなくちゃ教えてくれそうにないが……。
「まぁ、そう怒りなさんな。 あんたが風紀委員に入ってさえくれれば手伝うさ。」
……
驚いた顔で俺を見ている。 まぁ、俺だってわかってるさ。だけど、入るか入らないかで、俺の生死が分かれるんだ。
「そんなことですか。 まぁ、いいでしょう。了解です。」
「ちょっと!! 私はまだ、了解してなっむぐっ!!」
俺は、清水の風紀委員入りを否定しようとした不知火の口をふさいだ。
ここで否定されたら、俺の未来は……考えるだけで怖い。
「……あんた、覚えておきなさいよ」
……笑顔が怖いです不知火さん。
……ビルの廃墟
あれからどれほど歩いただろうか? 時刻はまだ二時ほど。 日はまだ落ちる気配さえない。
ようやくついたかと思うと、そこはビルの廃墟。 なかは薄暗く、ガラスだの石だのが散乱している有様だった。
「ここでいいでしょう。」
ビルの廃墟に入った所で、清水は立ち止まった。
「……本題とやらを話してくれ。」
「そう急がなくても大丈夫ですよ。 行動を開始するのは夜ですからね。」
「それじゃ、私達の事から話しましょうか。」
そういって、清水は話を切り出した。
「まず、先程も申した通り、私達は暗黒騎士軍の将軍クラスです。 つまり、貴方の部下にあたると言っても過言ではありませんね。」
……そのわりには、さっき、躊躇いもなく殺されそうになったんだが!?
「まぁ、今のところ貴方は王位についてないので、階級的には私達と同格にあたるのでしょうね。」
……こうやって事実を知るものから話を聞くと、ホントに自分が魔王であることに違和感をかんじなくなってくるな。
「……んで、その将軍様達が何の用なんだ?」
二人が真剣な顔つきになる。
「……では単刀直入に言いましょう。 天草 陽介の妹救出、及び、誘拐犯の抹殺です。」
?????
「えっと、わりぃ。 解らないことだらけで、質問してもいいか?」
「えぇ。どうぞ。」
「陽介に妹なんていたのか?」
高校からの付き合いだが、初めて聞いたぞ。
「えぇ。一歳年下の妹がね。 貴方が知らないのも無理はありません。 彼は極力、自分の情報が漏れることを避けていましたからね。」