閑話 スケジュール決め
顔合わせを終えたリゼルは、『王女の図書室』と後にして訓練場へと戻る。そこには近衛騎士団長であるヘンリーと、先輩であり数時間前に仲間となったハルシが微笑んでいた。
「よぉ、リゼル! どうだった」
「リゼル。王女殿下との顔合わせ、大丈夫だった?」
「大丈夫だったって………」
そんな、心配するような言葉に嬉しく思いながら、リゼルは気になった部分を問い掛ける。大丈夫だったとは、何でだろう。
「え? だって——」
「なぁリゼル。殿下の近衛騎士が今まで居なかった理由、分かるか?」
ハルシが言葉を紡ごうとすれば、ヘンリーが急に真剣になって問い掛けてきた。シウィアの近衛騎士が居なかった理由。多分という仮説程度だが、ある程度の予想はできた。本当に、そんなのじゃないように祈るしかない。
「———断ってきたからだよ。近衛騎士の皆が」
「……………そう、か。うん、想定内だな」
数分前、王女の図書室にてシウィアに聞かされた。『私は嫌われているんです』、敬語を自分という騎士ごときに使うなど、間違っていると思っていた。だが、多分シウィアは皆にこれ以上嫌われないようにという配慮のようなものだったのだろう。そう考えると、それが当たってる気がして、胸が痛んだ。
「ごめんな。わざわざお前に聞かせることじゃなかったんだろうが」
「ううん。良いよ、大丈夫」
二人も断ったんだなという言葉は、喉から出そうになったところを頑張って止めた。
〜〜*〜〜*〜〜
その晩のこと。
リゼルはスケジュールを考えていた。休日は家族のところに戻るから良いとして、姫の護衛が自分一人ならどんなスケジュールで行けば良いだろうか、と。
新しい自室の、まだこの豪奢な雰囲気には慣れない。だが、ふかふかのベッドだからか小屋にいた時よりも良く眠れた。因みに、リゼルはどこでも寝れる。
リゼルは、机に向かい合い手帳を広げていた。
『スケジュール。
9:10 就寝。
5:50 起床→着替えを済ませ食堂へ』
こう言う感じで、羽ペンで手帳にツラツラ書いてゆく。
『6:20 食堂を後にし、訓練場(ハルシと鍛錬する)
7:00 姫様起床。七時より後に出て、着替えを済ませた状態の姫を迎えに行く。
7:20 〜夜の8:50、姫様護衛。
9:00 姫様を部屋まで送り届け、自室に戻り寝る』
これで良いだろうと、リゼルは手帳を閉じた。
明日からは姫、シウィアの護衛だ。このスケジュールを気を付けながら行こう。
(国民を想う姫への敬愛は、多分途切れることはないのだろうな)
だが大丈夫。これは騎士が主に感じる、敬愛なのだから。




